威圧感がある上司は文句を言われにくい分、みんなの不満を察しなければいけない。
上司が何も手伝ってくれない(涙)
私の勤め先の食品スーパーでは店長の異動が頻繁にあります。そこで、何人もの店長の下で働いてきてつくづく感じるのは店長の個性の違いが店に与える影響の大きさです。
今回は特に印象に残っている、「何もしてくれない」と周囲から不満を持たれていた店長の話です。
町の小さなスーパーは店長が動かなくても機能するのか?
食品スーパーでの日常業務である商品の補充、荷捌き、レジ業務。これらをほとんどやってくれない店長でした。
全ての業務をほとんど丸投げにするタイプです。
「これやって」「あれやって」と指示だけ出して自分は動かないのです。大きなショッピングモールの支配人のような立場なら指示をだすだけでいいかもしれませんが、町の小さなスーパーです。
限られた人件費の中、店長は動きながら指示をだすという、プレイヤーとマネージャーの両方の面を高いレベルで求められます。
しかし、店長が動かないということで、完全に仕事の手が回らなくなり、私たちは毎日大残業をするようになりました。
私は我慢できなくなり、「手が回っていないです」と言ったことがあります。すると店長は・・・
「えっ!なに⁉俺に『手伝え』って言ってるの?」
店長の、「えっ!なに!俺に手伝えって言ってるの?」と言う言葉に若干ひるみましたが、「このままでは終らないからその方がいいいかと思うのですが」と遠慮がちに返しました。
結局、しぶしぶ違う人の仕事を手伝いだした店長ですが私に意見を言われたことに腹を立てたのか?私がそばに近づいた時に・・・・
「熊さんの所は完璧にしといてくれよ?」と言ってきました。
店長の言葉に心の中で、「え?完璧って?全然手が回っていない状況なのに(涙)」と思いましたが、上司からの指示ということもあり
「ハイ」と気持ち良く返事しました。
すると店長は・・・
「あっ今『ハイ』って言ったよな。じゃあ言葉通りしてくれよ」と言いました。
私は戸惑いました。上司からの指示に、「無理です」の反論や、「やれるところまで頑張ります」の中途半端な返事をするのもどうかと思ったから「ハイ」と言っただけです。
しかし、その「ハイ」の言葉に責任が生じるのと、完璧を求めて家に帰れなくなる恐れがあるため・・・
「出来る限りで頑張ります」に訂正しました。
周囲につべこべ言わさない威圧感
店長は私たち社員だけでなくアルバイトにも、「あれして」「これして」と、とうてい時間内では終わらない仕事をふっていました。
時間がきても帰りづらいアルバイト
「これだけやってくれるか?」
「これは急ぎで終われせてくれるか?」
独特の威圧感でプレッシャーを与えられたアルバイトの中には、時間が来ても、「この仕事を終らせてから」という心理が働きタイムカードで退勤を押した後、無償でやって帰る人もいました。
しかし、店長にはだれも文句を言わなかったのです。
独特の威圧感が周囲に文句を言わさない力になっていました。しかし、影での不満はどんどん大きくなっていきました。
「あの店長は何もやってくれない」
そんな声がどんどん大きくなってきました。そんな中「俺がいなくても回る店が強い店なんだよ」と店長は言いました。
自分がいなくても機能する店を作りたい気持ちは分かるのですが、町の小さなスーパーでそれはとてもハードルが高いのです。
この言葉に従業員の不満はどんどん膨らみ、ついに本部に内部告発をする人が現れました。
「店長は何もしてくれない」
「少しのことでキレやすい」
一人の従業員の告発に真相を確かめようと本部の上司が動き、その他のアルバイト、パートさんにも聞きとりをしたのでした。すると出るわ出るわの不満のオンパレードだったそうです。
当然のように店長は降格になり、異動になりました。
この出来事は私に大きな教訓を残してくれました。
威圧感のある上司は部下から不満をぶつけられることが少なくなりがちです。それ以外にたとえ威圧感がなくても、年を重ねるごとに周囲に耳の痛いことを助言してくれる人が少なくなることがあります。
私自身も40歳をすぎ、若い頃に比べて、周囲から不満をぶつけられることが少なくなっている様に感じています。
しかし、その立場に甘えていては?
囲に不満をぶつけられないだけで、その不満が消えたわけではありません。年齢や役職による「つべこべ言われない立場」に甘えていては、不満のマグマはたまりにたまり大爆発をするのでしょう。
犯罪を犯したお客様をさらし者にしてもいいのだろうか?
なかなか捕まらない万引き犯にいらいらする。苦労の末、やっと捕まえた万引き犯。しかし、捕まえた後も警察を呼び、犯人が逃げないように見張るなど、大きな時間を取られる。
そんな迷惑を考えずに、反省の色を見せない万引き犯に我慢できなくなる。
忙しい現代ではよくあることですが、なんとかギャフンと言わせたいと思う気持ちが空回りすることもあると知ってもらいたいと思います。
「あっ今入れたな!」
勤め先の食品スーパーで、頻繁に出没する恐らく万引きをしているであろう人に頭を悩ましています。その人が来るたびに、時間を取られるからです。
明らかに店に入ってきた時よりも、手持ちのカバンが大きく膨らんでいたとしても、私達に見つからないようにすばやく商品を入れているようで、なかなか商品を入れた瞬間を確認出来ないことが多いです。
しかも、ポケットやカバンの中に商品を入れたのが確認できたとしても店内では「万引きしましたよね?」とは声をかけられません。「今からレジで精算するつもりだった」と言われれば万引きを立証出来ないからです。
レジを通さず店の外までカバンの中に入れっぱなしのお客様にやっと声をかけられます。それまでずっと見張らないといけないわけで、とても大変です。さらに・・・
犯人を一人では捕まえてはいけないことになっています。
万が一、犯人が逆上すると危険だからです。そのような大変な思いをさせられればさせられるほど、捕まえた時に従業員にある感情が芽生えます。
その感情とは「やっと捕まえた万引き犯を責め立てたい」というものです。しかし、その感情にとらわれ周囲が見えなくなる事は危険だと思う出来事がありました。
従業員の様子をうかがう万引き犯
とても、やっかいな万引きばあさまがいました。ばあさまが来るたびに私はアルバイトから、「来てますよ」と呼ばれて、さりげなく見張ることを繰り返してきました。
万引き犯は声をかけられるのが嫌いと良く聞く話ですが、このばあさまは私が後を付けていることに気付くと、自分から声をかけてきます。
「ちょっと、すみません」と。
私は最初、この行動が理解出来ませんでした。万引き犯は情業員の目を極端に意識するもので、なぜ自分から声をかけてくるのかと思ったからです。
しかし、後で警察の人と話をすることがあったのですが、良くあるパターンでそれは、自分から声をかけることで相手の表情や声の調子から自分がどれだけ疑いをかけられているのか探る意味があるそうです。
そんな、ばあさまですが、ついに捕まりました。捕まえたのはパートさんです。万引き犯は絶対に一人で捕まえてはいけないという社内ルールがありますが、目の前で起こっている犯罪行為に我慢出来なかったパートさんは捕まえてしまったのです。
そして、自分がやった犯行に「何のことですか?」ととぼける万引き犯に、パートさんは腹を立てました。
「もしもーし、聞いてますか?」
私がかけつけた時にはパートさんはばあさまに顔をぐいっと近づけながら・・・
「もしもーーし、聞いてますか?」
「お母さん。いつも見てたんですよ」
「とぼけないで!」
と言っていました。なぜこの様なことをパートさんが言ったのかと言うと商品をレジを通さずに店から持ち出したと言う言い逃れの出来ない状態でばあさまは・・・
「えっなんのこと?」ととぼけたからです。
私はこれはまずいと思いました。その理由は最後に書きますが、とにかくばあさまをバックヤードに連れていくのが先だと言うことでバックヤードに誘導しました。
そして、警察を呼び、私がばあさまを監視しながら待つこと15分で警察が到着しました。そして、警察からの質問にばあさまは・・・
「年をとると分からなくなるんです」と話をはぐらかしました。
「お名前は」と聞かれても、「うーーん何だったかな?」と返し、「住所は?」の質問にも、「えーーと、歩いてきたんですけどね」と返し、どことなく・・・
認知症のふりをして罪から逃げようとする雰囲気がありました。
今まで私に何度も話しかけてきた姿からは想像も出来ない行為です。今まで散々後を付けてきたので分かるのですが、ばあさまは元気です。
それなのに、いきなりしゃがみこんで、「イタタタタ・・・」と起き上がれない振りをしたのです。何を質問してもそんな調子でどうしようもないと言うことで・・・
「署に連れていく」ということになりました。
警官二人がかりで、「お母さん起き上がってくださいね」と肩を貸されてなんとかパトカーに乗せられて行きました。
ちなみにうちの店にはもう出入り禁止となりました。そして肝心の捕まえたパートさんに私は言いました。
「『何あの人?怖――い』って言われてましたよ」
ガーーンとショックを受けるパートさん。
店頭でパートさんが万引き犯を責め立てていた時、他のお客様が小声で、「何あの人?怖――い」と言っていたのです。
そのことを伝えるとパートさんは「そ・・・そうなんですか」と言っていました。実はパートさんがばあさまを責め立てた気持ちはとても分かります。
今まで散々貴重な時間を割いてばあさまを見張り続けてきたのですから。
そこは私も認めつつも、「あっ!これはまずいな」と思ったのです。決定的な証拠をつかんだのだから、警察に引き渡すことも、出入り禁止にすることも出来ます。
だから、そんなに責めなくてもいいのです。
犯罪を犯したお客様をさらしものにしてもいいのだろうか?
昔、私が住んでいた地域のスーパーで、万引き犯の顔写真を貼り出した店がありました。すぐにその貼り紙は撤去されたのですが、その撤去された理由を、たまたま友人がそこでアルバイトをしていたので知ったのですがそれは・・・
地域住民からの苦情があったからです。
「なにもそこまですることはないだろ?」
「はっきり言ってその様なことをする怖い店には行きたくありません」
と本社に苦情が入ったそうです。
万引き犯を責めたい気持ちは理解できますが、必要以上に責め立てると、他のお客様から「何もそこまで責めることはないのに」と反感をもたれることもあるようです。
「明日からもっと大変だよ」は脅しではなく、これぐらいで潰れてほしくないからだ。
求人を見たときは、「これなら簡単そうだ」「体力のあまりない私にも出来そうだ」と思っていたのに、いざその職場に入ってみると想像以上の大変さにショックを受けることがあります。
そして、想像していたイメージと違うという不満を部下は持ち、逆に先輩は「楽そうだという新人の甘い気持ちを入れ替えてやろう」と気合が入ります。
そんな時は、お互いに「なぜ分かってくれないの?」という感情が芽生えます。そんな時に考えてもらいことです。
「先輩!毎日こんなに大変なんですか?」
何度も転職を繰り返してきた私は新人時代、様々な先輩に「毎日こんなに大変なんですか?と聞いたことがあります。
なぜそのようなことを聞くのか?それは、「大丈夫だよ。すぐに慣れるから。それに、今日は特別に忙しかったんだよ」 という優しい言葉を期待していたからです。
確かにそのような優しい言葉をかけてくれる先輩はいましたが、私の経験上では「何を弱音を吐いているんだよ。これぐらいで大変だと言っていたら駄目だよ」と言われることの方が多かったです。
そんな私は現在食品スーパーで働いています。そして、かつて自分が先輩たちにぶつけてきた弱音を今度は逆にぶつけられ、とても考えさせられました。
「そのピアスは外してもらうけどいいかな?」
店長不在で1日で二人のアルバイト面接をしました。 一人は、町の服屋にいそうな鼻にピアスをした若い男性です。
食品スーパーには様々な年代のお客様が来店されます。ご年配のお客様にはピアスに対して良いイメージを持っていない人もいます。
それに、社内規則でピアスは禁止されています。なので、「採用になったらピアスは外してもらうけどいいかな?」と聞くと「大丈夫です」と返事されました。
体力はありそうですが、どことなく不良少年のような印象を感じたので、「サービス業でいろいろお客様に言われることがあって大変だけど大丈夫かな?」と聞くと、これに対しても、「大丈夫です」と答えていました。
その次に面接をした人
第一印象は大人しそうでした。しかし、体力がありそうに見えないので、「意外と肉体労働だけど大丈夫かな?」と聞くと、「大丈夫です」と答えていました。私は思いました。
二人とも大丈夫じゃないだろ?と。
しかし、店長の出した答えは「贅沢言ってられないからどちらか採用しましょう」でした。
どっちも不安なタイプだと思う私に店長は、「余程でない限り、どっちか採用しましょうよ」と言ってきました。その後、こんなことを冗談ぽく言っていました。
「俺らの店ってスーパーで働きたい奴らの最後の砦みたいなもんですよ。まずはイオンとかの大手に面接に行って、そこで落とされて、『仕方がないな。こうなったらあそこ忙しそうだけど面接行ってみるか?』ってなるんですよ」と。
冗談っぽく言った店長ですが、少しは当たっている様な気もしました。そしていろいろ悩んだ結果、私は鼻にピアスをしていた彼を採用する事にしました。
勤務態度に不安はあるもののピアスは外してくれるのと、体力はありそうだからです。そして、次の日から来れるということでしたが来ませんでした。
「うわー。ばっくれやがったな」
何の連絡もありませんでした。これは駄目だと思い、もう一人の面接に来た彼を採用する事にしました。しかし彼は私の予想通りの男でした。
重たいものを運ぶ時、体がふらつく新人アルバイト
ふら~~~と、荷物を運ぶ時、動きがふらついているのです。そこで私は、「うーーん。でも真面目で大人しそうで、指示したことにちゃんと従ってくれそうな子だから、まっいいか?」と思うようにしました。
しかし、初日の仕事が終わった彼から、あることを言われました。
「あのう、いつもこんな感じなんですか?」
私 「どういうこと?」
彼 「こんなに毎日ハードなんですか?」
どうやら初日から思ったよりも仕事がきつかったようです。しかし、新人さんには出来るだけ簡単なことをさせています。
しかし彼は、「まさか初日からあんなに重たい物を持たされるとは思っていませんでした」と言ってきました。確かに重たいものは持たせました。そこは認めます。
しかし、仕方がなかったのです。商品が入っている段ボールは、軽いものもあれば重たいものもあります。軽いものだけを選んで仕事をするのは不可能です。
本来であれば新人さんには、最初からきつい仕事を与えてつぶれてしまわないように配慮をするのと、弱音を吐かれても、優しく「大丈夫だよ、すぐに慣れるからね」と言ってあげるのが筋なのでしょうが私は・・・
「何言ってるの?こんなもの序の口(相撲用語で一番下の地位のこと)だよ!」
「こんなもんじゃすまないよ。本来はもっと大変な仕事なんだからな」と言いました。後で思ったのですが、少しは「大丈夫だよ。すぐに慣れるからね」と優しい言葉でフォローしてあげたら良かったと思ったのですが、その時はそんな気持になれませんでした。
そして、若い頃の私も昔の職場で新人時代に似たような弱音を先輩にぶつけたことあったと思いだしました。そう言った時、大抵の場合は・・・
「何言ってるんだよ。本当はもっと大変だよ。新人だからきつい仕事は与えていないんだよ」と言われたものです。そんなことを思い出し、現在の自分と見比べて思うことは・・・
「もっと大変だよ」は先輩からの花束であることもある
「先輩からの花束であることもある」と言う風に、「・・・こともある」と表現したのは、それは言った人の気持ちによって大きく言葉の意味が変わってくるからです。相手を思っての言葉であるか、それともただの脅しであるかによって違ってくるのです。
今回の私の気持ちは・・・・
「頼むよ。これぐらいで潰れるなよ」
「まだまだこれからなんだから、頑張ってくれよ」
という新人アルバイトに成長してもらいたい気持ちから出た言葉です。しかし、「大丈夫だよ。すぐに慣れるよ」と言う優しい言葉がなかったのは反省点です。
なぜ私は優しい言葉をかけれなかったのか?
それは、心の中で少しだけカチンときたです。「自分達の仕事はそんなに思っているほど簡単で楽なものではない」と思っているからです。
自分達の仕事を甘く見られたくないのです。そして自分達の仕事をナメられたくないと言う気持ちが「カチンときた」という感情につながったのです。
しかし、新しい仕事では最初はみんなが大変だと思います。楽そうに見えていた仕事が実は大変だったと言うことは良くあることです。
新人さんには、初めは仕事を覚えてもらうために簡単な仕事を与えますが、慣れるに従って、難しく大変な仕事を与えます。なので最初から「これからもっと大変になるよ」と教えてあげるのは親切心からなのです。しかし、その言葉にプラスして・・・
「大丈夫だよ。君ならすぐに慣れるよ」
の気持ちが伝わるかどうかで先輩が後輩に送る言葉の花束の価値が上がるのです。様々な職業を経験して思うのは、どこの職場でも、思い描いていた想像以上の大変さに弱音を吐く新人はいます。
そんな時には、「こんなものじゃないよ」と声を大にして言いたい気持ちが強くなりがちです。
「新人に、自分達の仕事はこの程度のものだと思われたくない」の気持ちが強くなりすぎると、新しい職場で不安に感じている相手の気持ちを置き去りにしがちです。気をつけたいものです。