サラリーマンを馬鹿にするやつの店は潰れる。
サラリーマンを辞めて、居酒屋で独立したい。そう思い居酒屋の店長に弟子入りをした時、そこの店長に言われた言葉です。
「サラリーマンを馬鹿にするやつの店はつぶれる」
今思い起こすと、この言葉の意味するところは深いと感じています。今回はなぜ店長が私にそう言ったのか?そして、私はその意味をどう捉えたのか?をお伝えしたいと思います。
修行時代の私は、毎日毎日、細かいことまで店長に叱られました。
テレビで良く見る光景で、ラーメン屋の店長が若い弟子に怒鳴りちらすというのがありますが、まさにそれと同じでした。
店長はとても威圧感があり、怒り方がとても怖くて仕方がなかったです。朝の10時から仕込みに入り、閉店後の片付けを終わらし、家に帰るのは4時。寝不足と店長の怒鳴り声で頭が割れるほどの辛さを感じました。
時には閉店後に説教が始まり、いつになったら終わるのか分からない説教に心がおれそうになり、説教が終わった朝からは、ほとんど寝ずに仕込みが始まり、まさに地獄だと感じました。
「お前は会社員時代に役立たずだった男だろ?」
そういう店長の言葉に「いえ、そんなことはありません」と反論しました。なぜ反論したのか?それはサラリーマン時代、小さな会社ではあるものの営業でトップを取ったことがある自分のプライドがそうさせたのです。
さらに店長の説教にただうなずくだけでは「お前の意見はないのか?」と叱られます。寝不足で考える力も落ちている状態で、素直に自分の気持ちを言うことしかできませんでした。
「お前はサラリーマンをなめているのか?」
と店長は怒鳴りました。私は「いえ、そんなつもりはありません」と言いました。店長は「いや、お前は舐めている」「お前が店をだしたら絶対につぶれる」。そこから長い説教が朝まで続きました。以下はその長い説教をまとめたものです。
お前はお客様にもそんな受け答えをするのか?
お客様から、「マスターのサラリーマン時代ってどうなの?」と聞かれ「サラリーマン時代は優秀でした」と答えるのは、はっきり言って喧嘩を売ってるのと同じことだ。
お客さんは楽しい酒を飲みに来ているんだ。
俺は、サラリーマンしてる時に先輩から「役立たず」と言われた。でも、お前は優秀なサラリーマンだったんだな?俺が客なら絶対にお前のようなプライドのあるやつの店には行かない。楽しくないんだ。
お前はサラリーマンが出来なかったやつだ。
お前の考えは根本で間違っている。サラリーマンでそこそこ出来たから居酒屋をしてみよう。そうじゃない。サラリーマンが出来なかったから今、お前はここに修業をしに来ているんだ。
お前は逃げてきたんだ。
サラリーマンから上を目指してきたんじゃない。お前はサラリーマンから逃げてきた男だ。嫌じゃなければ辞めていない。サラリーマンで成功していたら、ここにお前はいない。
お前は心のどこかでサラリーマンを馬鹿にしてる。
会社の営業でトップになった?じゃあなんでそこにいなかったんだ?逃げてきたくせに、サラリーマン時代のプライドを持ち続けてる。お前はサラリーマンで頑張ってる人を馬鹿にしてる。
師匠は私の心を見抜いていました。
サラリーマンをなめている。自分ではそうは思ってなかった修業時代。しかし、心のどこかでそう思っていたと気付かされました。店長は、それを見抜いて私の気持ちを入れ替えて下さいました。