ありがとう熊さん

食品スーパーのおやじが、生き方について辛いことも楽しいことも含めて、心を込めて書かせてもらいました。

組織ぐるみになると下の者は従うしかない手抜きの仕事はトップが目を光らせるしかない

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「急げ」「きっちりしていたら儲からないだろ」

建築現場の職人をしているときに先輩方に言われた言葉です。あきらかな手抜き工事が組織ぐるみで行われ、建築現場のモラルを疑うきっかけになりました。

杭打ち意外にも手抜き工事はあります。

杭打ちの手抜きで横浜市のマンションが傾いているニュースを見て、私が思ったのはマンションが傾くというとんでもない重大なことだから世間の注目が集まるわけで、手抜き工事というものは他にもあることを知ってもらいたくなり、どうしても書きたくなりました。

私がしていた工事内容を簡単に説明します。

10年以上前、シーリングという仕事をしていました。口で説明するよりも、上のイラストを見てください。建物を作る時は必ずすき間が出てきます。その隙間にゴム状のものを埋め込む仕事がシーリングです。

シーリングはとても大事な仕事です。

あまり普通の人は注目しない仕事ですが、意外と大事。これがないと水漏れがしたり、建物の揺れを吸収するクッションのような役割もするから建物のひび割れも防ぐことが出来ます。地味ですが大事な仕事です。

手抜きするかどうかは職人しだい

私は6年間いろんな現場で作業しました。その現場ごとの職長(リーダー)の考えによって手抜きされる場合があることを知りました。断っておきますが、みんながみんな手抜きをしている訳じゃなく、そういう人もいると言うことです。

どんな手抜き?

大きく分けて2つあります。一つは材料代をケチる手抜き。つまりちゃんとした厚みでなく半分以下の厚みで材料を埋め込むのです。もう一つは、プライマー(材料を定着させる接着剤)を最初に塗るのですが、本来は30分ほど乾かさないといけないのを、ほんのわずかな時間だけ乾かして材料を埋め込むのです。

え?それってばれないの?

ほとんどばれません。防水やひび割れ防止にとても重要な仕事なのですが、職長(リーダー)の判断でここはこれぐらいなら大丈夫という基準でやっているのです。ある職長に「ここは最悪水漏れがしても中に水の通り道があって最後に水抜き穴があるから大丈夫」と言われたこともあります。

誰も注意しないの?

私の知る限りでは、ほとんど注意はされていなかったと思います。「急げ急げ」「そんなことしてたら儲からないだろ?」職長の責任と判断のもとで職人は動くので、なかなか「それはおかしいんじゃないの?」とは言えない空気がありました。

残念ながら私の見た手抜き工事は明るみにされないと思います。

横浜市の杭打ちの手抜きでマンションが傾いたニュース。建物の傾きという重大なことだから注目が集まるのであって、その他の細かい手抜きなんてものは目にとまらないのが現状だと思います。

業界全体もモラルの問題として捉えてほしい。

若い頃の経験からいまだに建設業界そのもののモラルをあまり信用していません。素人どころかプロでも見抜けないレベルの手抜き工事。直接的な被害があまりないだけに、「誰にも迷惑はかかっていない」と思われてる所があるように思います。

私は、きちんと手抜きなしのいい仕事をする職人もいっぱい見てきました。しかし残念な職人もいてる現実。「これぐらいなら大丈夫」という建築業界の意識の低さを大きな問題として捉えてもらいたいものです。