ありがとう熊さん

食品スーパーのおやじが、生き方について辛いことも楽しいことも含めて、心を込めて書かせてもらいました。

男同士の再会の場面では嘘を言って見栄を張る人がいることを知りました。

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車検を受けた場所でまさかの彼に会いました。

食品スーパーのおやじです。仕事が休みの日、車検を受けていた車屋さんに出来上がった車検証をもらいに行きました。

すると半年以上前に、うちの会社を解雇された元同僚に会いました。これには驚きました。彼が解雇された理由はパートさんへのセクハラです。

矢よりも早いうちの会社の噂話。

「〇〇君、セクハラで首になったみたいだよ」

「へぇ~~そんな事するように見えないんだけどね」

「いや、見えるだろ?」

「どんなセクハラ?」

「40代パートさんの太ももを触ったらしいよ」

「旦那さんが会社に抗議したみたいだよ」

矢よりも早いわが社の噂話。この情報はすぐに広まりました。

彼とは店は違うものの、多少の交流があっただけに私にとってショックはありました。結婚もして子供が出来たばかりなのに、どうして?と残念な気持ちになりました。

しかし理由がセクハラという恥ずかしいものだけに、連絡は一切取っていませんでした。

彼の、その後が気になった私は・・・

ビックリはしましたが、まあ知らない間柄でもないし、無視するのもどうかと思うので「久しぶり~」と言いました。

ちなみに、セクハラの話しは一切しないでおこうと思いました。解雇という制裁を受けているのと、非常にデリケートな問題なだけに触れないでおこうと私は思いました。

それよりも、現在の彼が何をしているのかが気になり、ちょっとだけ話をすることにしました。

私は車検証を取りに来ただけで、彼はちょうど車検が終わったばかりだったためにお互い時間が取れたのです。

彼は現在、地元から若干離れた場所にある他社のスーパーに勤めているそうです。

「へぇ~~車で45分のところなんや、結構大変だな」と私が言うと「いや、それが結構楽な会社で、辞めてよかったよ」と返してきました。

話を聞くと、うちの様に残業をすることもほとんどなく、一つの店にいるスタッフの数も多く、うちの会社のようにレポートの提出とか、毎月のいろいろな本部から指示される取り組みなどもないらしいのです。

うちの会社よりも楽な会社に入ったことを自慢する彼さらに彼は驚くようなことを言いました。

「いつまで、ブラック会社で働くの?忙しい会社にいるとその忙しさが当たり前のように思えてしまうよ。他の会社に転職しても、どうせ同じだろうと思ってしまうからね」そういうことを彼の口から聞き、驚きました。

心の中で「辞めたんじゃなくって辞めさせられたんじゃないの?」と思いましたが、それを言うと会話が終わってしまい、もっと聞きたいことが聞けなくなると思いやめました。

彼の話しをさらに詳しく聞くと・・・

うちの会社よりもそっちの方が楽でいいなと思うような内容でした。彼との会話で気になったのは、彼はうちの会社をクビになって痛い目にあっただろうと思っていたのが、逆にうちの会社よりも楽な会社に転職してそれを自慢げに語ったことです。

これには「なんか理不尽だな」と感じました。さらにうちの会社を彼はブラックだと言いました。しかし、私の認識ではブラックとまでは言えないと思います。

それは、会社から従業員に「残業をするな」「閉店後は早めに帰れ」と指導されてるからです。しかし、「早く帰れ」と言われても、そう簡単に終わらない仕事量があるように思いますが(汗)。

しかし、残業をほとんどせずに帰れている社員も多くいます。つまり、与えられた時間に終わらない仕事量だと思っているのは段取りが悪いからなのかもしれません。だから、ブラックなのか?違うのか?は意見が別れると思います。

彼の話で心の葛藤が生まれました。

それでも、彼の転職して楽できたという話しを聞くと、心が動かされてしまいます。このままこの会社で居続けていていいのだろうか?それとも思い切って転職したら人生が変わるのだろうか?と心の葛藤が生まれました。

しかし、現在の日本の雇用の厳しい現実を考えると、やはり安易な転職は危険だと思いました。他人の仕事が羨ましく思い転職を決意することの危険性です。私は今まで7回転職をしています。

その中で本当に辞めて良かったと思うのは引越し業者と不動産の会社の2社だけです。引越し業者は体力が続かない。このまま続けたら体を壊すと感じたからです。

不動産の会社は社長のパワハラが強烈で精神的に耐えれなかったからです。しかし、その他の会社を辞めた理由は「もっといい仕事をしてみたい」という理想を求めたものです。

しかし、辞めて職業安定所で職を探すと現実に大きく打ちのめされました。自分の期待を大きく下げないと職は見つからない現実です。

理想を求めた結果、逆に理想を下げなければいけなくなりました。簡単に見つかると思ってた職が簡単に見つからない。自分の理想を下げて下げてやっと見つかる現実。

その無職の間、とても大きな不安を感じました。このまま職が見つからなければどうしよう?あれほど「こんな会社辞めてやる」と思っていた会社が、いかにありがたかったかと思ってしまうのです。

毎月の給料。仲間との力を合わせる一体感。年金、保険などのわずらわしいことも会社が全てやってくれて、しかも優遇もされる。そんなことを考えると、町を歩いていてもなんか自分は取り残されているような感覚になり、町で働いている人達が輝いて見えるのです。

それに比べて自分は?と自信を失ってしまいます。この職を転々としてた経験は20代30代前半のころの私の経験です。まだ40代では1回も転職はしていません。

想像すると間違いなく大変厳しい現実が待っていると思うのです。

40代の知り合いで会社が倒産して、再就職までに1年以上かかった人もいます。毎日職安に行き、数多くの会社の面接で不採用になり、どんどん自信をなくした姿を見ました。

理想をどんどん下げていき、最終的にはどんな仕事でもいいからという考えになったと彼から聞きました。

家族や周りにも心配をかけて、早く職につかなきゃいけないと焦りが出てきて、たとえ世間がブラックだと噂している会社でも仕事があるだけ幸せだという気持ちになるそうです。

車検の時に久しぶりに会った彼の話を聞くと、「もしかして今の会社ってブラックなのかな?」と考えてしまいましたが、やるべき仕事量は多くても残業なしで定時に帰れている社員が多くいてる会社であるならば、ただの忙しい会社です。

本当のブラック企業で、このまま居続けてたら体が壊れてしまうという状態ならば辞めてもいいと思うのですが、ブラックかどうかと悩んでいるぐらいの状態。グレーの状態で転職を試みるのは危険が伴うと思うのです。

一時の感情に振り回されてはいけない。

こんなブラックな会社辞めてやると思って辞めたら、その会社よりも条件のいい会社をなかなか見つからず。運よく見つかっても、採用までは至らない。結局、最後に拾ってもらえる会社は本当のブラック企業だけというオチになる可能性があるのです。

転職して良かったという話を聞くと、心が動かされます。思い切って辞めてみないと他の会社の良さが分からないのかな?と思ってしまいます。

しかし、一時の感情に流されずに冷静に世間の雇用の現実に目を向けないと大きな後悔が待ってるんじゃないか?そう思いました。

理不尽な現実に腹を立てる同僚達

しかし、ここで話は終わりません。世の中、そんなうまい話はないと自分に言い聞かせても、やはり元同僚の「いつまでブラックな会社で働いてるの?」という言葉が心の中で引っ掛かって仕方がありません。

もう黙っていられません。同僚達にこの話を聞いてもらいました。「ちきしょ~あいつセクハラでクビになったくせに逆に幸せを掴んでるなんて、世の中はどうなってるんだ?」「でも、彼がいうように、うちの会社はブラックなのかな?」と腹を立てる同僚達。

彼の嘘がばれた瞬間

しかし、一人の同僚が「ははは、それは違うよ」と笑って話してきました。「それは違うってどういうこと?」と聞くと、同僚は彼がどこのスーパーに転職したか知っているそうです。

なぜ知っているのか?それはたまたまお客さんから聞いたそうです。しかもその転職先のスーパーは同僚が元いてたスーパーで大変厳しい労働環境だったそうです。

同僚の話によると、うちよりも大変な仕事量で辞める人が多いそうなのです。私は驚いて聞きました。

「えっ?じゃあなんで、『今の会社は楽が出来てる』って言ったんだろう?」の私の疑問に同僚は「そんなの決まってるだろ、会社をクビになったことを恥ずかしいと思ってるから、久しぶりに会ったお前に俺は負け組じゃないってアピールしているからだろ」と言いました。

この話で私が言いたい事。

彼はうちよりも大変な労働環境にある職場に変わりました。しかし、久しぶりに再会した私になぜ「今の会社は楽だよ」「いつまでブラックな会社に働いてるの?」と言ってきたのでしょうか?

これは嫌がらせなのでしょうか?男同士の再会の場では今の現状を比較し合うことが多々あります。正直にありのままの現実を話する人ばかりではありません。

中には嘘を言って見栄を張る人もいるのです。とくにセクハラによる解雇という恥ずかしい過去をもってる彼には、その恥ずかしさを消したいという心理が大きく動くのだと思われます。

男の再会でよくある場面に、いかに自分がすごい男になっているかの自慢大会になることがあります。かつては同じ土俵にいたのに今は・・・と比較をしたがるのです。そこで競争が生まれやすく、優越感や劣等感をもってしまうのです。

今回、彼の転職して良かったという話に大きく悩まされましたが、男の再会の場面では嘘を言って見栄を張る人がいることを知りました。

特に過去の恥ずかしい自分。みじめな自分を知っている相手には「俺は負け組じゃない」とアピールしたくなる。

「あんな会社は辞めて良かった」と言うのはほとんどの場合負け惜しみです。男の再会の場では、そんな心理が働くことも頭の片隅に入れておくと私のように悩まずにすむでしょう。