ありがとう熊さん

食品スーパーのおやじが、生き方について辛いことも楽しいことも含めて、心を込めて書かせてもらいました。

上司が思う何倍も部下は言いたいことを我慢している。

「どうして私の大変さに気づいてくれないの?」

食品スーパーの社員として、アルバイト・パートさんたちに指示をする立場である私は常日頃から出来る限り従業員の大変さに気づいてあげるように努めています。

とはいっても、私自身が多くの仕事を抱え込み一杯一杯になりがちなので、至らない部分は多くあると思うのですがそれでも思うことは・・・

部下の不満に言われなくても気づいてあげるのは上司の務めであり、それが出来ないのは上司失格だということです。

人生で9回転職を繰り返してきた私が思うことは、上司が思う何倍も部下は言いたいことを我慢しています。

その我慢を維持できなくなった部下は、時にとんでもない行動に出ることがあると知った出来事をご紹介します。
私が勤める食品スーパーではその昔、メーカーからの直納ではなくセンター(会社の倉庫)からの仕入れ伝票は、すべて店のパソコンで手入力しなければいけなく、とても面倒でした。

しかし、前任の店長は入力をしてくれてたのに対して、新しく異動してきた店長はなぜかやってくれなくて私たちに任せきりでした。

「店長もやってくれたらいいのに」

「まったくその通りだよな」

手伝ってくれない上司の愚痴を言い合う私たち

私は後輩君と愚痴を言いながら何か月も我慢し続けてきました。他にやるべき仕事が一杯ある中での伝票入力はとても辛かったのですが、そのうち店長も、この大変さに気づいて手伝ってくれるだろうと思っていました。

しかし、それは希望的観測に終わりました。

しかも、その希望的観測が大きな衝突を生んだのです。ある日、後輩君は出勤してきていきなり、パソコンの前に座っている店長のところに行き、「はい、これ・・・」と入力がまだの伝票をバーーンと店長の目の前に置きました。

「ハイ、これっ!」

この行動が「店長も入力してください」の意味であることは誰が見ても明らかですが、店長は「えっ何?」と言い、後輩君は怒ったような口調で「手伝ってください」と返しました。

それは敬語ではあるものの、怒った声質は明らかに相手を挑発するのに十分でした。

当然のように店長は立ち上がり、血相を変え大声で怒り出しました。

「おいコラ、やるのか?」

今にも殴り合いの喧嘩になりそうな勢いで、「おいコラ、やるのか?」と立ち上がったので、私は「これはまずい」と思い「ちょっと、ちょっとやめてください。話しましょ」と止めました。

しかし、店長は飛びかかって殴りにいきそうな雰囲気を醸し出してはいるものの、実際に私が体で制止をした感じでは、本気で飛びかかるというよりも、演技をしているように思いました。

つまり、店長も心の中では私に止めてもらいたかったのでしょう

それに対して後輩君を見ると、完全に目が座っていて覚悟を決めた様子でした。私と店長は、「止めるなよ熊さん」「いや店長それはやめましょうよ」と劇団四季もびっくりの演技をしただけです。

その演技が一通り終わり、私たちは3人で話し合うことになりました。

私 「いきなり店長にそんなことしたら、誰でも怒るだろ?」

後輩君 「いきなりじゃないですよ。もう何か月も我慢してたんですよ。それなのに店長は黙って知らんぷりしてたんですよ」

後輩君の感情の爆発は、伝票入力を何か月も任せきりで手伝いもせず、その苦労に理解を示さない店長に、我慢に我慢を重ねた結果でした。

そのことを知った店長は・・・

「俺は神様じゃないんだから」

店長 「確かに、自分たちの大変さに気づかなかった俺も悪かったと思う。でも俺は神様じゃないんだから言ってくれなきゃ気づかないよ」

私 「でも、なかなか言いにくいこともあると思うんですけど」

店長 「俺も鬼じゃないんだから、言ってくれたらやるよ」

そして、私たちは現状の大変さを訴え、店長も伝票入力をしてくれるようになりました。

しかし、大きな疑問が心に残りました。

一体だれが一番悪いのだろう?

言いたいことを我慢し続け、爆発した後輩君?
部下の大変さに理解を示さずにキレられた店長?
それとも、何も言わずに海の底の貝のように黙っていた私?

それまで、部下の大変さに理解を示さない上司なんて、上司失格だと思っていたのですが、この時の店長の言葉に考えさせられました。

「俺は神様じゃない。そして鬼ではない」

確かにそうだと思います。もっと早い段階で伝える勇気があったのなら・・・きっと、優しいタッチの口調で話が出来たのでしょう。

ほんの少しの勇気をもつ大切さ

後輩君は言いたいことを言わずに我慢に我慢を重ねた結果、ついに強い口調で勢いをつけなければ言いたいことを言えない気持ちに追い込まれました。

そうなる前に早い段階で勇気持つことは大事です。「上司が思う何倍も部下は言いたいことを我慢している」という言葉の裏には「勇気を出して言ってみたら意外とすんなり上司は意見を受け入れてくれた」ということが多々あります。

言いたいことは早めに言ったほうがいいでしょう。万が一意見が衝突しても、早ければ早いほど傷口は浅くすみます。遅くなればなるほど、さらに言いにくくなり、この時の後輩君のように、感情を爆発させなければ言えなくなります。

それでも、「上司に言いたいことを言うのって気が引けるよな?」と思われる方は、今回の記事に出てきた上司の言葉を心の中で呟いてみてください。

「神様じゃないんだから、言わなきゃ分からないよ」

「鬼じゃないんだから言ってくれたらやるよ」

上司も人間です。余計な衝突はしたくないでしょう。

上司に言いたいことを言えなくて苦しんでいる方は多いと思います。そんな方が少しでも救われますように心から祈ります。