ありがとう熊さん

食品スーパーのおやじが、生き方について辛いことも楽しいことも含めて、心を込めて書かせてもらいました。

「申し訳ございません」と言ったが非を認めたわけではない。

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「急いでいるから早く返金してくれ!」

勤め先の食品スーパーはチェーン店で、万が一どこかの店が詐欺にあった場合、全店にメールで連絡が入ります。

詐欺が発生した店舗名・発生した日にち・時間・犯人の性別と特徴(見た目の年齢や身長など)とともに、その手口がメールで配信されます。

その手口のほとんどが返金詐欺です。

「買っていない商品がレジで打たれている」「イベントで大量に購入した商品に問題があり信用を失った」などと言い返金を要求されます。

そして、レシートと現物がない状態で「急いでいるから早く返金してほしい」と言われます。

犯人は結論を急がせることで店員からの安易な対応(金銭での解決)を求めてきます。
もちろん私たちは、急がされても安易な対応をしないように会社からは指導されています。

会社のマニュアルにある通り、正当な理由がない限りレシートと現物がなければ返金・交換には応じることはありません。

しかし、同一人物と思われる犯人は同じような手口を数店舗で行うことがあるようです。犯人はその手口が私たち会社の全店舗にメールで配信されていることを知らないのでしょう。

若干手口を変えて要求してくることもあります。

私が勤める店舗の近くで詐欺未遂が発生し、同じような特徴をもつ人物に同じような手口で返金を要求されたことがあります。

しかし、同じような手口といっても若干内容は変えていました。もちろん返金には応じませんでしたが、とても不安な気持ちがありました。それは・・・

「万が一、私の勘違いだったらどうしよう?」という不安でした。

この気持ちは、思い込みでお客様に対して疑いの目を向けられないという接客業ならではのものです。

「これって言いがかり?」と思いつつも嘘か本当か?確認が取れない場合は強く出れません。

今回は、そんな嘘か本当か確認ができない状態でのお客様からの金銭の要求に対応して、大きく考えさせられた出来事を紹介します。

ある日のクレーム

従業員にぶつかり、こけて腰を強打したというお客様が来店されました。

 即座に「大変もうしわけございません」と言い「その時の従業員に確認をさせていただいてからお返事させていただきます」と言いました。

すると「こっちは急いでるの!確認するんやったら、これ見たらいい」と、携帯で破れたスカートの写メを見せてきました。

急がれてるお客様を前に、ドキドキする気持ちをぐっと抑えて「私どもも再発防止に努めなければいけない問題ですので事実確認は必ずさせていただいております」と伝えると

疑ってるの?」とお客様。「そうではありません。こういった問題には店としていい加減なお返事ができません」と返しました。

「どのくらいの時間まつの?」とお客様。「その時の従業員全員にすぐに確認が取れれば30分ほどだと思いますが、そうでないとお時間頂くと思います」と確認する時間を頂きました。

 その時に働いていた従業員に確認しました。

しかし、該当する事項はありませんでした。そして「お待たせして申し訳ございません。確認しましたが該当事項がございません」「疑ってるの?」ムッとされるお客様。

「該当事項がない以上、当店としては対応いたしかねます」「じゃあ訴えてもいいの?」

「訴えられるのは本意ではありませんが、当店としてこれ以上対応が出来ないのでお客様のご判断にまかせるしかありません」

 お客様はさらにこちらを責めてきました。「あんたスカートがどれぐらいの値段するか分かってるの?どうしてくれるの?どうしても無理なの?私は泣き寝入りするしかないの?」

かなり感情を揺さぶられましたが、ぐっとこらえて、該当事項がない限り対応出来ないことを繰り返し丁寧に伝えていくと、最後は「おかしいなーまるで私が嘘つきみたい」と言いながら帰られました。

この手のクレームは感情的な話になりやすいです。

なので私なりに3つ対処法をまとめました。

事実の確認事項が無いクレームの対処法

1 感情を動かさない。
2 個人的な思い込みでの発言をしない
3 あれこれ言いたい気持ちを押さえて話の広がりを最小限にする

確認事項がからといって言いがかりだ決め付けられません。逆に何でもかんでも100%信用してお金を出すわけにもいけないのです。

以前、この手のクレームで、他店の店長が安易にお金を渡して問題になったことがあります。私も今回、このようなことを経験して思うのは、そのお金を安易に渡した店長の気持ちも分かるのです。

私もあの時は、かなり心が折れそうになりました。だから感情的にならないように気を付ける必要性があるのです。

だから感情的にならないように気を付ける必要性があります。「言いがかりなのか?」「金品を要求しに来ているのか?」とあれこれ考えて戦いたくなる気持ちも生まれますが・・・

相手に勝つ必要はありません。負けなければいいのです。安易な対応に逃げなければいいのです。自分に負けないことが大事です。

そして、今回私が最もお伝えしたいことは、「申し訳ございません」と言う謝罪の言葉をどう伝えるかが大事だと思います。

「大事なスカートが破れて申し訳ございません」と言うと、事実を認めたと捉えられることも考えられます。

だからと言って証拠も何もないから謝罪することはないという姿勢では冷たい対応になると思います。

あの時、事実の確認が出来ないクレームに対応して気づいたことは・・・

「申し訳ございません」の言葉は非を認めたときにだけ使う言葉ではないということです。

私がお客様にお詫びの言葉を伝えたのは、非を認めたのではなく、それ以上確認しようがないということで、目の前のお客様に対して申し訳ないという気持ちがあったからです。