正直に「状況は厳しいです」と言えなかった経験談
以前に健康食品の営業の会社に勤めていた。
会場に会員さんを集めて、おすすめの健康食品を紹介する講習宣伝販売だ。
所長(そこの営業所でトップの人)がインストラクターとして商品の説明をお客様の前でする。
私たちは、「どうですか?」とお客様の背中を押すアシスタントだ。
この営業は生き物である。
いい時はものすごく売れるが、売れない時はとことん売れない時がある。
売れるかどうかって言うものは、その会場に来ているお客様の話の食いつきで大体分かる。
それを肌で感じるのが私たちアシスタントだ。
「あっ、今回は売れそうだ」
「あっ、今回は駄目だな」
と分かるのだ。
そこで所長は私たちに状況を聞いてくる。
「どんな感じだ?」と。
その当時私はまだ入社して数か月だろうか?
やっと、少しは注文が取れるようになってきたころだ。
「どんな感じだ?」と聞いてきた所長に正直に答えた。
「今回はちょっと厳しいかもしれないですね」
すると、所長は、「そうかな~俺はいけると思うけどな」と返してきた。
「マジか?こんなにお客さんの食いつきが悪いこの状態で?」と思ったが、一応は意気込みを見せておこうと「出来る限り頑張ります」と答えた。
そのやり取りを、先輩が聞いていた。
その先輩に後で注意された。
「あれはまずいだろ?」
「馬鹿正直に『状況はきびしいです』なんて、そんなこと言う奴はいないよ」
「ああいう時は、『大丈夫です。いけます』と答えなきゃだめだよ」
と言われた。
確かにそうだとは思ったが、全然大丈夫な状況じゃない。
嘘をつくのに抵抗があった。
大丈夫じゃないのに大丈夫と嘘をつく。
それで、やっぱり駄目だった時、「オイ、大丈夫と言ったよな」と言葉に対する責任を取らされそうな気がした。
しかし、先輩のように「大丈夫」と答える方が自分を追い込み、実際に先輩は意地でも結果を残しているように見えた。
そういう意味ではどんな状況でも「大丈夫」と言うのに意味はあるのだろう。
さらに、それと同時に何年もやっている先輩方はどうしているのか?
よ~~く観察をすると、状況を説明する時に厳しい状況の時ほど、あれこれと細かく状況を説明していることが分かった。
決して、「状況がきびしい」とは口が裂けても言わない。
その代わり・・・・
このお客様はこんな感じで・・・あのお客様は、あんな感じで・・・・
と大きく期待は出来ないけれど、何とかなりそうな状況という絶妙な言い回しで上司に説明していた。
つまり、ストレートに「厳しいです」とは言わないけれど、ちょっぴり厳しさをちらつかせるような説明の仕方だった。
この経験から私が学んだこと。
営業で、状況を嘆くのは簡単なことだ。
しかし、状況を嘆く人が状況を変えることはありえない。
だから、嘆くのではなく、何とかしようとする意気込みが必要だ。
それが出来ない人は生き残れない世界だと思った。