ありがとう熊さん

食品スーパーのおやじが、生き方について辛いことも楽しいことも含めて、心を込めて書かせてもらいました。

「誰もやらないからチャンス」の落とし穴に落ちちゃった経験談

夢は自分の本をだすこと。

しかし、何の取り柄もない自分。どうしたらこの夢を実現できるのか悩む日々を過ごしました。


私が目標に掲げたのは「誰も書かない鋭い視線から何かを書く」こと。そして出版社を「あっ」と驚かせること。今でもその気持ちは変わっていません。


そんな私は3年前、あることに気付きました。お酒に関する本で本屋に並んでいるものは「知られざる銘酒」といったものを紹介する本ばかり。


近くのスーパーで簡単に手に入る、誰でもその名を知っているものを幅広く紹介した本はありませんでした。私は「これだ!」と思いました。


食品スーパーで勤めている私は何が今売れているか肌で感じています。

お酒の資格も2つもっています。そこそこ詳しい。いつ書くの?今でしょ!と言うノリで書いた200ページの原稿。さっそく各出版社に企画書と原稿のサンプルを郵送しました。

どの出版社にしようかな?真剣に悩む甘い考えの私

最高の原稿が出来ました。もし、複数の出版社から「ぜひわが社で出版させてください」と同時に言われたらどうしよう?そんな悩みを持っていました(笑)。しかし1週間後から次々に送られてくる断り状の数々に現実を知らされました。

断り状ってこのように書くんだと感心しました。

企画の郵送にかんする感謝の気持ちから、頑張って書いた原稿に対しての敬意を表す言葉が続き、長期的な利益でなく短期的な利益を追求しなければならない売上至上主義の厳しい出版事情。そこには私の気持ちを傷つけない最大限の配慮が書かれてありました。

原稿のどこに問題があるのか教えてくれない出版社

どの出版社にしようかな?と言う考えは、どこでもいいからお願いと言う気持ちに変わりました。そして80社以上に企画書を送りました。

しかし返ってくるのは断り状だけです。原稿のどこが駄目なのか?気になるのですが「コメントは控えさせていただきます」という言葉が多く断り状に書かれていたため自分から聞くのはためらっていました。

56通目の断り状でやっと原稿の問題点を指摘してくれました。

目が覚めました。その内容です。

このたびお送りいただいた企画は大変鋭い企画だと思います。今までにない内容の企画なのですが、編集部で様々な角度から検討させていただいた結果、慎重論が大勢を占め今回はご希望に添えないことになりました。

お酒に関する本を買う方はかなりのお酒好きです。そう言った方が求めるのは、この本でないと知ることのできない珍しい銘柄のお酒の情報です。

私たちも、定番のお酒の銘柄について幅広く紹介されている本がほとんどないのは知っています。しかし、その本を出版しないのは読者のニーズを満たすことが難しいと判断するからなんです。

なるほどと思いました。

町の本屋さんに並んでいるお酒の本はマニア向けのものばかり

「初めての○○」といった初心者向けを売りにした本もあるのですが、お勧めの銘柄を見ると「え?これどこで手に入るの?」と思う銘柄ばかり。結局お酒好きの人が喜びそうな銘柄紹介になっていました。

「やって見なけらば分からない」に付き合うほど出版社は暇じゃない

私は、あえてマニアをターゲットから外したのです。「これからお酒を飲んでいきたい」「町のスーパーで簡単に手に入る定番のお酒ってどうなの?」知識ゼロの人をターゲットにしたのです。自分ではこの企画は最高と思っていました。

なぜなら、類似の本がないからです。出版社からの多くの断り状を見て、「なんで?やってみなければ分からないのに?」そう思ったのですが、結局やって見なけらば分からないと言う時点で絶対に売れるという保証がありません。

もしかしたら売れるかもしれないお酒の初心者向けの本よりも、売上が見込めるお酒好きをターゲットにした本の方が出版社にとって、出版する価値があるのです。

誰もやったことがないには理由が考えられます。

1 誰も知らなかった、思いつかなかったからやらなかった。
2 多くの人が気付いてはいるが、めんどくさい、大変だからやらなかった。
3 多くの人が気付いてはいるが、そこにニーズが少ないからやらなかった。

誰もやらないことはチャンスではあるが、なぜ誰もやらなかったのかをもっと深く考えるべきだったと反省しました。

そしてニーズがなければそのチャンスの実現性は絶望的になる。そのことを思い知らされました。チャンスと夢を追いかける人の少しでも参考になれますように。