ありがとう熊さん

食品スーパーのおやじが、生き方について辛いことも楽しいことも含めて、心を込めて書かせてもらいました。

「ついにチャンスがもらえた」と言った時に一緒に喜んでくれるのは一部の人だけである

私はかつて職人をしていた。その3年目のことだ。1日でも早く仕事を覚えて一人前になりたいとずっと思い続けてきた。

しかし、上下関係が厳しく、なかなか重要な仕事が任せてもらえなかった。雑用だけで1日が終わる毎日が続いた。「チャンスさえ与えられたら自分は出来る。出来ないのはチャンスが与えられないからだ」と先輩たちを恨んだ。

同じ時期に入った仲間は、多かったが、ほとんど辞めてしまった。

後に入った後輩たちも、雑用ばかりの毎日に嫌気がさし、どんどん辞めてしまった。そんな厳しい世界でも、すんなりとチャンスが与えられ、重要な仕事を任される人もいた。

いわゆるセンスの良い人である。今から思えば私がいつまでも肝心な仕事をやらせてもらえなかったのは自分の不器用さが原因なのだが、そこを認めたくない私は、すんなりとチャンスをもらえている人に嫉妬をした。

「あいつと俺の何が違う?」とイライラした気持ちになった。自分の不器用さよりも環境のせいにしたくなり、「こんなに頑張っているのに?」という気持ちにとりつかれ悶々とした日々を送った。

そんなある日のこと、仲良くなった先輩に「やってみるか?」と言われ、本来先輩がすべき重要な作業をやらせてもらった。ほんの短い時間だったが、飛び上がるほど嬉しかった。

嬉しい気持ちは誰かに聞いてもらいたくなる。みんなが集まっていた休憩時間、仲の良い仲間に大きな声で、「今日、嬉しいことがあったのですよ。実は難しい仕事をやらせてもらったのですよ」と言った。しかも満面の笑みを見せた。

私がその時に期待した皆からの言葉は、「良かったね」「どうだった?」と言うものだったが、なぜかその時の皆の反応は薄かった。

「それがどうした」と言わんばかりの冷たい表情を皆がしていた。その冷たい反応に私は何も言えなくなった。

その場には私に重要な仕事をやらせてくれた先輩もいた。その先輩に「ちょっとこっちに来い」と呼ばれて外に出た。

すると「嬉しいのは分かる。でもやりたいのは自分だけじゃない」それだけ言って先輩は立ち去った。

とても短い言葉だったが、それだけで十分に理解が出来た。

うかつだった。あれほど、チャンスが貰えず悶々とした日々を送ってきたはずなのに嬉しさで周囲が見えなくなっていた。自分だけが苦しんでいる訳じゃない。

一見みんな仲良くしていたのだが、昔からの友達ではない。みんなが上を目指して頑張っていた。

しかし、頑張っていてもセンスの良し悪しでチャンスが大きく変わっていく理不尽な現実に皆は黙って耐えていた。

そんな状態の時に、「チャンスをもらえてうれしいです」と言うと「それがどうした?」と思われるだけだった。一緒になって喜んでもらえる訳ではなかった。

椅子取りゲームはゲームだから笑える。仕事での椅子取りゲームは笑えない。そんなことは分かっていたはずなのに嬉しさで頭から消えてしまった。そんな自分がとても恥ずかしいと思った。

 

あやしい催眠商法 だましの全手口  身近な人を守るために知っておくべきこと

あやしい催眠商法 だましの全手口 身近な人を守るために知っておくべきこと

 

 

 

「あやしい催眠商法だましの全手口身近な人を守るために知っておくべきこと」
単行本: 230ページ
出版社: 自由国民社 (2018/11/2) 
筆者 ロバート・熊
イラストレーター にゃんとまた旅/ねこまき
身近な人を守るために知っておきたい催眠商法の現場を元社員が詳細に明かした本です。
★本書の特徴
1.いかにしてお年寄りのこころを奪うか、元社員が明かします。   
2.ネット上にある催眠商法の説明はごく簡素なものですが、事実はかなり込み入った内容です。本書では複雑で巧妙な手口をあますことなく紹介いたします。
3.まず近づかないことが一番ですが、もし被害にあってしまった場合の有効な対策も分かります。

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