ありがとう熊さん

食品スーパーのおやじが、生き方について辛いことも楽しいことも含めて、心を込めて書かせてもらいました。

人生にくじけそうになった時は期待してくれた人のことを思い出すべきだ

 

学生時代の思い出

学生時代、新聞奨学生として新聞配達所に住み込みで働き、奨学金をもらいながら学校に通っていた。

配達所の店長は大の競馬好きだった。1993年のエリザベス女王杯という有名な競馬のレースを店長とテレビで観戦していた時の事だ。そのレースにはベガと言う名の絶大な人気を誇る強い馬が出走していた。

店長はベガの馬券を買っていた。「勝ったら飯をおごってやる」と言われ、私もテレビでベガを応援することにした。そしてレースが始まった。

店長は「ベガ、ベガ行けー」とテレビに叫んでいた。しかし最後のカーブをすぎたころ実況は「ベガは苦しい、ベガ苦しい」と「ベガ苦しい」を繰り返した。店長は、相変わらず、「ベガベガ」と叫んでいた。

そしてゴール近くになり実況は「内からホクトベガ、内からホクトベガホクトベガホクトベガ」とホクトベガを連呼した。え?ベガ?ホクトベガ?と私は思った。さらに実況は「ホクトベガ先頭、ホクトベガ先頭、」この時店長は「おい、おい、ちょっと待ってくれ」と叫んだ。

そしてゴール後にアナウンサーは後に日本の競馬史に残る名セリフとなる言葉を叫んだ「ベガはベガでもホクトベガ

ベガでなく、ホクトベガが一着でゴールしたのだった。店長は「マジか?」と言った。
私は笑いをこらえるのに必死だった。店長は怒っていたからだ。ベガが負けた悔しさよりも、アナウンサーの実況に怒っていたのだ。普通に「ホクトベガが勝ちました」でいいのになぜベガはベガでもという余計な言葉を言うのだと怒っていた。

2年間お世話になった店長

私は笑いをこらえながら「確かにこの実況はひどいですね」と、自分も同じ気持ちであるかのような言葉を店長にかけた。

店長は「くっそーこの言葉は一生忘れられん」と言った。私は一旦遠ざかり、見えないところで体を震わせながら笑った。

私はこの店長に、2年間世話になった。新聞奨学生を卒業する時、近所の居酒屋で送別会もしてくれた。店長は私に、2年間の住み込み生活で随分と成長したことについて褒めてくれた。

店長も住み込みだったために食事や買い物など、一緒にいる時間が長かったので私が卒業して配達所にいなくなることは「寂しい」と言ってくれた。

送別会

そしてこれから卒業して社会に旅立つ私にエールを送ってくれた。

「社会に出たら、理不尽なことがいっぱいあると思う。でもくじけずに頑張ってほしい。自分に負けずに頑張ってほしい。2年間、苦労してきた経験を生かして欲しい。苦労した分、そうでない人には負けないでほしい。人生でつらいことがあって、くじけそうになった時は俺達のことを思い出してほしい。一緒に生活をともにしたお前に期待している俺達がいることを。お前が負けるということは期待した俺達が負けると言うことなんだから」

私は感謝の気持ちで体が熱くなった。そして私も最後のあいさつをした。

「2年間、本当にいろんなことがありました。店長や、皆さんのことは一生忘れません。忘れられない思い出がたくさんありすぎます。店長覚えてますか?」

「え?」

「ベガはベガでもホクトベガって?」

「あっ!それを今言うか」

「はははは」笑顔で送別会は終わった。

言われなくても負けないよ

後で一人になり心の中で店長の言葉をかみしめた。「お前が負けると言うことは期待している俺達が負けると言うことだ」

言われなくても負けないよ。ぎゅっとこぶしを握りしめて思った。

 

 

あやしい催眠商法 だましの全手口  身近な人を守るために知っておくべきこと

あやしい催眠商法 だましの全手口 身近な人を守るために知っておくべきこと

 

 

 

「あやしい催眠商法だましの全手口身近な人を守るために知っておくべきこと」
単行本: 230ページ
出版社: 自由国民社 (2018/11/2) 
筆者 ロバート・熊
イラストレーター にゃんとまた旅/ねこまき
身近な人を守るために知っておきたい催眠商法の現場を元社員が詳細に明かした本です。
★本書の特徴
1.いかにしてお年寄りのこころを奪うか、元社員が明かします。   
2.ネット上にある催眠商法の説明はごく簡素なものですが、事実はかなり込み入った内容です。本書では複雑で巧妙な手口をあますことなく紹介いたします。
3.まず近づかないことが一番ですが、もし被害にあってしまった場合の有効な対策も分かります。

大型書店の法律書の棚に並べられていることが多いです。
お近くの書店に置いてない時は、本のタイトルをお控えになり、お取り寄せでお願いします。