補助犬を受け入れる時に「認定証を確認させていただけますか?」と声をかけることは、失礼にはあたりません。
食品スーパーに勤めています。どうしても許したくない出来事がありました。夕方すぎにペットと思われる犬とともに入店されようとしたお客様のことです。
さっそく、御遠慮頂くようにお願いしましたが、お客様から「この子は補助犬です」と言われました。
身体障害者補助犬法を御存知でしょうか?
2002年に施行された法律で電車、バス、タクシー、スーパー、病院、コンビニ、ホテル、などは受け入れを拒否することが出来ない法律です。
私たちも、お体の不自由な方の社会参加を妨げたくない気持ちがあります。そのため補助犬に関しては入店して頂くのですが、補助犬であるという証明が必要となります。
お客様は障害者手帳を私に見せてきました。そして「この手帳を見せればバスも病院もどこでも入れてます」と言われました。
しかし、障害者手帳は補助犬を証明するものではありません。
それでも、障害者手帳を見せられた時はかなりひるみました。障害をお持ちの方の社会への参加を邪魔してはいけないという気持ちがあるからです。
お客様は歩くのも大変な中、30分かけて犬とともに来店されたそうです。しかし補助犬と証明できません。他のお客様にも迷惑がかかります。
そう何度も説明しましたが納得されずに、今回だけはということで、お客様に店の外で待ってもらい、私が買い物を代行しました。
後で知ったのですが、その方は近隣の系列店でも良く来店され、「補助犬です」と言い、証明するものがない状態で入店してたそうです。つまり常習犯です。
とてもくやしい気持ちになりました。嘘を許したくありません。だからこそ正しい知識での対応が求められる。そのように強く思いました。
そもそも補助犬って何かを知っておくことが大事です。
補助犬とは
1 盲導犬 目の不自由な方をサポート
2 介助犬 手足の不自由な方をサポート
3 聴導犬 耳の不自由な方をサポート
この3種類の総称です。ちなみにH27.4/1現在の実働数は
盲導犬 全国で966頭
介助犬 全国で70頭
聴導犬 全国で75頭
補助犬全体で1111頭しか実働していません。
また介助犬や聴導犬の実働数が0頭の県も多く、それだけ目にする機会が少ないと思います。
また盲導犬がラブラドール・レトリバーやゴールデン・レトリバーが多いことから補助犬は大型犬のイメージが強いのですが、介助犬はパピヨンやヨクシャーテリアなどの小型犬も活躍しています。つまり犬種では区別は出来ません。
今回の出来事は詐欺です。
補助犬の詐欺というと、何年も前にテレビなどで話題になった募金詐欺を思い浮かべる方も多いと思います。あのニュースによって補助犬の募金に対するイメージが悪くなり、本物の募金額に大きな影響がでたと言われています。
募金詐欺は一頭の補助犬を育てるのに300万円以上の費用が必要なことを悪用したとんでもない詐欺で多くの方が怒りを覚えたでしょう。
しかし、今回は金銭目的の詐欺ではありません。金銭でなく、補助犬の権利を自分のペットにも認められたいという要求での詐欺です。
ペットの犬とレストランに行きたい。タクシーに乗りたい。スーパーに買い物に行きたいという補助犬だけに認められた権利が欲しかったのでしょう。私も犬を飼ったことがあり、気持ちは分かるのですが決して許してはいけない行為です。
ではどうやって本物と偽物を見分けるのか?
今回のお客様の犬はとても落ち着きがなく、私のズボンの匂いをクンクン嗅ぎ、鼻息も荒く、お客様はリードで抑えてるのですが飛びかかるような勢いがありました。
つまり、訓練をされていない落ち着きのない犬です。素人目でみても偽物と分かります。しかしながら私たちはプロでなく素人です。
毎日補助犬に接しているトレーナーではなく、めったに接する機会のない私たちは素人です。少しぐらい落ち着きがないからといって、この犬は補助犬ではないだろうと言うことは憶測に過ぎません。
明確に判断するには補助犬の認定証の呈示を求めるのが一番でしょう。
認定証の呈示を求めるのは失礼にあたらないか?
今回のお客様に認定証の呈示を求めた時、「疑ってるの?」と言われました。しかし補助犬使用者は補助犬の認定証(盲導犬の場合は使用者証)の携帯が義務付けられています。
つまり提示を求めるのは失礼にはあたりません。また、補助犬にも外出時、補助犬と分かる表示がある胴着を着用しています。
手帳をめくると使用者と補助犬の写真、名前、生年月日、登録番号、連絡先など事細かく記載されています。認定番号で問い合わせることも出来るでしょう。
もしも黙認したら本物の補助犬のイメージがどれだけ傷つくか?
補助犬に接する機会が少ない世の中で、お客様が補助犬だと言い張れば、ついつい入店させてしまう。そんな話も聞きます。
今回のお客様の犬はとても独特の動物臭が強くあり、落ち着きがなかったです。もしこのような犬の入店を許したら、他のお客様は、きっとこう思うでしょう。
「補助犬は落ち着きがなく、臭い犬だ」
「見ていてとても危ない。近寄りたくない」
さらに他のお客様に危害を与えたら、店の信用も、補助犬に対するイメージにも影響が出るでしょう。だからこそ嘘を排除したいのです。
最後に
店側は、補助犬を同伴されるお客様を温かく迎えたいと思っています。だからこそ、嘘の補助犬を許すわけにはいきません。
しかし、毅然とした態度で拒否できるかどうかは知識があるかないかに関わってきます。本物を守るためにも嘘を排除したい。そう思う気持ちからこの記事を作成しました。