ありがとう熊さん

食品スーパーのおやじが、生き方について辛いことも楽しいことも含めて、心を込めて書かせてもらいました。

年上のあなたを舐める年下には腹を立てるよりも心配りを見せればよい。

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店内で乱暴な言葉使いをするアルバイト

食品スーパーのおやじです。先日、アルバイトのA君がB君に店内で「オイ、そこ右や、違うやろ、もっと向こうや」という感じの乱暴な言葉使いをしていました。

店内にはお客様がおられます。店のイメージとして良くないのでA君に注意しました。A君は素直に謝りましたが、今までため込んでいたB君への不満を相談してきました。

ちなみにA君とB君はともに20代。仕事はほぼ同期。A君の方が若干年上です。私の「ちょっと話し方が乱暴になってるよ」の問いかけに彼は・・・

A君の不満

A君の話です
「あいつは僕が年上なのに、なめた態度をとるんです」
「変な笑い方で馬鹿にしてくるんです」
「優しくしてたら調子にのってくるんです」

A君が乱暴な言葉使いをするのはB君に対する自分が年上だという自尊心を傷つけられたことに対する不満から生じたものであることが分かりました。

年上として見てもらいたかったら年上としての部分をみせなければいけない。

年下に馬鹿にされて腹が立つ気持ちはとても大きく理解出来ます。私も20代前半の職人をしていた頃、大きく悩んだことがあります。

年下の職人が偉そうに指図してくる。馬鹿にしたような態度をとる。それに我慢出来ない私は、その不満を態度に表わしました。

わざと表情を険しくして見せたり、不機嫌そうな態度を取ったり、話し方を偉そうにしてみたりしました。

全て、自分を大きく見せたい。なめられたくないという気持ちからそうしました。しかし、全て空回り。状況は一向に変わりませんでした。

そんな私を見かねてアドバイスをくれた先輩がいました。

「年上だったら年上としての部分を見せなければいけないよ」というアドバイスです。しかし私は言っていることは分かるけど、何をどう見せろというんだ?と、その時は具体性がないアドバイスだと反発しました。

しかし、あれから20年以上が経ち、同じようにA君に「年上として見てもらいたかったら年上としての部分を見せなければいけない」とアドバイスしました。今はこの言葉の意味が理解出来るからです。

優しそうでも、なめられない人もいます。

必要以上に、B君に偉そうな口調で接するA君を見て、かつての自分を思い出しました。あの時の私はなぜ年下になめられるのか?いろいろな人に相談しました。

その中で一番多く言われたことが「優しそうに見えるから、なめられる」という答えでした。

私は、馬鹿にされても怒らないだろうと思われているようでした。しかし、性格は、そう簡単に改善出来る問題ではありません。何かすぐに、なめられなくなる方法はないものか?と考えました。

一回キレてみてはどうか?

一回大きくキレてみようかな?とも思いました。普段大人しい私がいきなりキレたら相手に大きなショックを与えられると思います。

しかし実力がともなわない私がキレたら、さらに馬鹿にされるのではないか?そう思うと行動に移せませんでした。

そんな私が、結局選んだ方法は、周りの優しそうな人だけど、なぜか、なめられない人を観察することでした。

なめられると、どうしても、なめてきた相手のことばかり気になります。その気になる対象を逆に、「なぜかなめられない人」に変えたのです。

「大人しい性格だけど、なぜかなめられない人」には特徴があります。

例えば、味方が多くいる。仕事でも、趣味でも、なんでもいいので「なかなかやるな」と周囲に思わせている。

人を大切にし、その人格がみんなから認めれているなどです。特に味方が多くいるのは心強いと思います。攻撃的な人も味方が多い人には攻撃しにくくなります。

年下になめられて「なにくそ」という気持ちは自分を高めるために使うべき。

相手を変えることばかりに気を取られるよりも、自分を変える努力をした方がより建設的だと思うのです。

A君の乱暴な口調には焦りが見えるのです。自分を年上だと見てもらいたい要求。それが満たされないためのイライラが見えます。

年上としての部分を具体的な方法で見せることが出来ない劣等感の裏返しにも見えるのです。だから自分は年上だというアピールをしたいのです。

偉そうな口調は、その自分の立場を心の中で確認して自分を落ち着かせるためであり、相手にもその確認を求めています。

そして今回、店内で、乱暴な口調をしたため、私に注意されました。店内でお客様がいてる中で乱暴な口調をするものではありません。

そのことを忘れるほど、心に余裕がなかったのでしょう。サービス業としてのプロ意識に欠けているとも思いました。

焦らなくても良い

40歳を越えて私が思うのは、焦らなくても、年を重ねるごとに人生の深みを相手に伝えることが出来るということです。一生懸命、人と向き合い、真面目に生きていれば年を重ねた経験の深みを相手に感じさせることが出来ます。

若いころは特に1歳、2歳の微妙な年の差が気になるものです。

若いころは年上としての人生経験の深みを見せられないイラつきもあるでしょう。かつての私のように。しかし、それでイラついてばかりいてたら自分が苦しくなるだけです。だからA君には「焦らずに、普通に堂々としてた方がいいよ」と助言しました。

年下の人が自分を年上として扱ってくれない。そのやりきれない気持ちは分かります。イライラしたい気持ちも分かります。その気持ちは自分を高めるために使った方が建設的なのです。

逆にイライラを相手にぶつけるように乱暴な口調で接するとどうなるのか?これは自分を大きく見せたいという気持ちがあると思うのですが、周囲の目には大きく見えるどころか小さく見えるものなのです。だから「それは違うだろ」と私はA君に言いました。

しかし、彼の気持ちはそう簡単に変わりませんでした。

私の話を彼は理解したかのように聞いたA君。しかし、頭で理解できても心がそれを受け入れることが出来なかったのでしょう。私の知らないところで、B君に対して上から目線の乱暴な口調で接していたようです。人の気持ちは一筋縄ではいきません。

ついにB君がキレました。

店内で「何だその言い方は?」と二人が口論をし出しました、急いで彼らの所に行き、「店内でそんなそんなことをするな。倉庫にいけ」と言いました。彼らに「熊さんもそばにいといてください。話を聞いてください」と言われ私も彼らの話を聞くことになりました。

私の前で原因は相手の態度にあると訴える彼ら二人。次第に口調が二人とも荒くなり、会話の流れがお互いの仕事のあら探しのようになりました。話がどんどん違う方向に行き、まとまりがつかなくなりました。

元々の口論のきっかけは?

A君にがB君に「もっとこうしたらいいよ」と仕事のアドバイスをしたこと。
日頃からA君に不満をもっていたB君は「分かってる」と言い、その後・・・
「分かってるとは何や?」
「何やとは何や?」
「余計なことを言うな」
「それはこっちのセリフだ」

とこれが大きくこじれてお互いがお互いの態度を責めるようになりました。
きっかけはささいなこと。ささいな時にサッと身を引けばこんな大き争いにならなかったことです。

「どうしてどちらも一歩も引けないんだ?」私の言葉に黙る二人「黙ると言うことは分かっているんだろ?」と言いました。そして、これ以上は同じ言葉の繰り返しになるという段階で一旦、売り場に戻しました。

後になり、A君が私に謝ってきました。

A君 「さきほどは、すみませんでした」

私 「別に俺に謝らなくていいよ。あいつに謝れば?」

A君 「いや・・・その」

私 「いやって子供じゃないんだから。どっちが悪いとかじゃなくてA君もムキになったのは事実だろ?じゃあ謝らなきゃ駄目だろ?」

A君 「でもB君は仕事が終わって帰ったのですが」

私 「じゃあ明日、謝れば?」

A君「明日は僕休みです」

私 「それじゃあ、なおさら価値のある謝り方が出来るじゃないの?俺だったら休みの日に、それだけのために出てくるよ。ジュースとお菓子を買って、昨日はごめん。これで爽やかやんか?」

A君 「休みの日にですか?」

私 「勘違いしたらあかん。仕事をしに来いと言ってる訳じゃないよ」

私は話を続けました。

「勘違いしたらあかん。謝ったら負けじゃない。謝ったら勝ちや。年上をして見てもらいたかったら年上としての部分を見せなあかん。自分、今のままやったら何も見せられないで。偉そうにするのが年上じゃないよ」

「頭を下げても君の価値は下がらないよ」

次の日A君は店にやってきました。仕事をしに来たのではありません。B君に謝りに来たのです。ただそれだけのために来たのです。

私 「どうだった」

A君 「逆に俺のほうこそ悪かったってB君に言われました」

私 「ははは、爽やかやな」

年上としてのマナー

今回のケースのように同期であれば、仕事で差をつけるのが難しいこともあるでしょう。だからといって、偉そうに接する事が年上としての部分を見せることにはつながらないと思います。そんなことをしたら逆に空回りすることが多いと思うのです。

仕事で年上としての部分を見せることが難しくても、年上としての気配り、心配りを見せることは出来ると思うのです。それが年上としてのマナーでしょう。