職場で残業代を請求しずらい雰囲気を作ることは大きな迷惑行為である
与えられた時間で仕事を終わらすことが出来ないアルバイトのストレス
食品スーパーのおやじです。自分の担当している仕事が思うように出来ずに残業をしようとするアルバイトさんに、残業はしないで仕事を上がるように指示しました。
限られた人件費をオーバーするわけにはいかないからです。しかし、アルバイトさんは責任感が強く、きっちりとして帰りたいという気持ちでサービス残業。つまりタダ働きをしようとしました。
「僕のことは、ほっといて下さい」「好きでやってることですから」と彼は言いました。しかしタダ働きは会社として問題であるため、注意しました。
すると、「そっちがそのように仕向けたんでしょ?」と怒りをぶつけてきました。
つまり、与えられた仕事量が与えられた勤務時間には終わる量ではないから、このようになったことを言いたかったようです。
だからと言ってタダ働きをさせる訳にはいきません。「後は俺がやっとくから」とアルバイトさんを帰らせました。
一つの仕事を完璧にしたくて与えられた勤務時間内に終わらせられないアルバイト
一旦引きさがったように見えたアルバイトさんですが、怒りが収まらなかったのか、また私の所に戻ってきて「やるなら僕と同じようにして下さいね」と言ってきました。
アルバイトさんは完璧主義者で、一つの場所を完璧にしないと気が済まないタイプです。その分、時間がかかり、その他の仕事がおろそかになるのです。
彼と同じように一つの場所を完璧にするように時間をかけていると他の仕事ができなくなるために「そこそこって言う言葉があるだろ?」と言いかけたところ、アルバイトさんは怒って帰ってしまいました。
その日はとてもするべき仕事が多く、私は多くの残業をすることになり、店を出たのは日付が変わってからになりました。
明日に回してもいい仕事を回すのに抵抗があるアルバイト
私のいてる地域の食品スーパーには厳しい価格競争があり、他店よりも1円でも安くと企業努力をしています。それでありながら、近隣には、他社のスーパーが次々に出店してきて、さらにお客さんの奪い合い。オーバーストア状態になっています。
なので会社も次から次へと様々なイベントや企画を打ち出し、とても忙しくなっています。仕事量はどんどん増える一方でありながら、厳しい人件費コントロールが求められています。
与えられた時間内に多くの業務をこなすためには、優先順位を決めて、そこそこで一つの業務を切り上げることも必要となってきます。しかし、与えられた仕事を完璧にしないと気がすまない性格のアルバイトもいます。
性格の問題で、そこそこで切り上げて、明日に回してもいい仕事を回すということに抵抗があるのです。きっちり終わらせてからでないと帰りたくないと自分を追い込んでしまうのです。
勝手にやることだからいいでしょ?」とサービス残業をしがちな従業員
小売業や飲食業などの、お客様相手のサービス業は、時間が読みにくいものです。熾烈な販売競争を勝ち抜くために安さを追い求め、サービスの質を向上させ、その上で業務の効率化をしなければいけなくなり、ギリギリの人件費での営業になる現状があります。
時間が過ぎても仕事が終わらないから残ってサービス残業をするというのは、サービス業では良く聞く話です。
しかし、サービス残業は会社としては問題なだけに「残業はするな」と何度も会社からは言われます。
会社からみれば、他の誰かが時間通りに上がれていれば、時間通りに上がれるだけの仕事量しか与えていないという認識をもつのです。
終わらないのは要領が悪いからという認識になりがちです。そのため、「時間通りに終わらないのは自分の要領の悪さのせい」と従業員は思いがちです。
勝手な残業とはいえ、黙認していれば労働時間とみなされます
私は、サービス残業をする従業員の気持ちは良く分かります。私自身がしてるからです。しかし、この傾向は良くはありません。
なぜなら原則として上司の指示がない残業は勝手な残業としてみなされて労働時間として扱われません。残業は上司が依頼して初めて生ずるからです。
しかし、上司が直接的な指示をしていなくても、勝手な残業を見て見ぬふりをしていると間接的な指示があったものとして労働時間とみなされます。
さらに「残業をしないでくれ」と言ってても、とても時間内で終わらないような仕事量で、職場に残らざるをえないと認められた時も間接的な指示があったものとして労働時間になります。
時間内に仕事を終わらせられるかどうかは、人それぞれの能力にもよります。
良く聞く労使トラブルで、残業を禁止している会社で、勝手な残業をした従業員の残業代未払いの問題があります。
この場合、たとえ勝手な残業とはいっても、それを黙認していれば、その残業は労働として認定されます。実際の裁判でも、同じような判断が下されています。
しかし、今回のアルバイトさんは私に「残業代はいりません」「好きでやってることですから」と残業代を請求する考えがないことを訴えてきました。
あくまでも残業は好きでやっていることだと主張してきました。「きっちりして帰りたい」という、意気込みは評価出来ると感じました。しかし・・・
「残業代を請求しない」と言われても、請求する権利が無くなったわけではありません。
私は、これを許したくありませんでした。アルバイトさんは、今日しておかないと落ち着かないからと、明日に回してもいいようなことで残業しています。
つまり、与えられた時間で段取り良くすれば終わるような仕事量しか与えていないのです。しかし、時間内に終わらせられる能力には個人差があります。
残業代を請求する考えがないからといって、残業代を請求する権利が無くなったわけではありません。本来は残業代を請求出来る立場にあるのです。
それを放棄するということは他のアルバイト、パートさんにも「あの人も、やってるから」と悪しき習慣になる可能性があるのです。
そうなると職場に残業代を請求しづらくなる雰囲気が生まれるでしょう。
好きでやってるからと放置すると、残業をしているという感覚も少なくなるでしょう。残業代の請求がなくても、残業代支払いの義務は残ります。後でトラブルになるリスクもあるのです。だから会社はサービス残業を望んでいないことを従業員に周知徹底させることが必要だと思うのです。