一度嫌いになった男を二度と好きにならないという考えはくつがえすことが出来る
職場では可愛がられた方が教えてもらえる。
食品スーパーのおやじです。後輩社員やアルバイト君の中には、仕事がなかなか覚えられないドジでおっちょこちょいなタイプでも、可愛く見えることがあります。
彼らには、駄目な自分を認め、そこから何とかしようとする姿勢が見えます。なので周りから「何とかしてあげたい」という気持ちが生まれます。
そして職場では可愛がられた方が勝ちになるでしょう。色々と教えてもらえるからです。
ドジでおっちょこちょいな私が可愛がられた経験を話します。
実は私も若い頃、自分で言うのもなんですが、先輩に可愛がられるタイプの人間でした。そして、決して仕事が出来る方ではなかったドジで、おっちょこちょいなタイプでした。
若いころ、「どうしてこんな私を可愛がってくれるのか?」疑問に思っていましたが、今思えば理由が分かるのです。今回はそんな私が若いころ先輩に可愛がられたきっかけになった出来事を紹介したいと思います。
その出来事から見えるのは「駄目な奴だけど可愛い奴だ。何とかしてやりたい」と思わせる後輩の特徴の一つです。
先輩と一緒に行ったバ―での出来事
昔、京都の工事現場で働いていた時、茄子先輩(仮名)と京都の繁華街にある巨大なバーに行ったことがあります。そこは地元で有名なナンパスポットでした。薄暗い店内にナンパ目的の若い男性2人組と、ナンパされるのが目的だと思われる若い女性2人組で賑わっていました。週末になると賑やかな音楽とともに若い男女が踊りまくるような、ノリノリの店でした。
茄子さんは私に「よしいくぞ」と言って女性2人だけで来ているテーブルに私を連れて行きました。しかし、私には致命的な弱点がありました。女性と話をするのが超苦手だったのです。緊張して、言葉が出てこないのです。茄子さんは、逆に良くしゃべるタイプでした。
茄子さんがしゃべらない私に机の下から膝をゴンゴンとぶつけてきました。「オイ、何してる?しゃべらんかい!」という合図でした。しかし、私は茄子さんの話に「はははは、そうそう」と笑うことが精一杯で自分から会話が出来ませんでした。
ナンパはうまくいきませんでした。茄子さんは、女性と話をするのが苦手な私を真剣に心配してくれました。
先輩 「何でもいいからしゃべれ!」
私 「いや・・・そんなこといっても何しゃべっていいのか?」
先輩 「なんでもええねん。とりあえず思いついたことをポンポン言うたらええんや」
私 「でも・・・」
先輩 「例えば、さっき、ウンコ踏んじゃって大変だったってノリでいったらええんや」
私は茄子さんの指示にしたがいました。2人組の女性に勇気をもって話しかけたのです。
茄子さんに教えてもらった通りにする私
「いやいや~ウンコふんじゃって、大変やったわーあははは」勢いよく話しかけたのですが、所詮は付け焼刃でした。会話がまったく続かずに女性は席を立ち去りました。
先輩 「お前、あれはあかんやろ?」
私 「だって茄子さんの指示に従っただけですよ」
先輩 「自然な会話の中で、上手く話をもっていかないと駄目やろ?ほら、見てみろ?違う男が声をかけてるじゃないか?」
私 「でも、あの2人は無理ですよ」
しかし、しばらくすると、その男のナンパが成功したようで4人で出ていく姿が見えました。私は、落ち込みました。
そして「な・・・茄子さん。僕、やっぱりこういうの難しいです」と言いました。ちょうど、その時、他の男性客たちが、なにやら小さなグラスを一生懸命運んでいるのが見えました。
なんだ?あの小さなグラスは?と私は気になって見知らぬ男性に声をかけました。「なあなあ、それって何?」男には気軽に声をかけられる私でした。
男は笑いながら「あはは・・これスピリタスやねん。これ飲ましたらイチコロや」「え?マジで?」「そうそう1杯でベロベロに酔うねん」私は飲みたくなりました。
さっそく注文しました。小さなグラスにちょこっとだけ入っているのです。かなり、アルコール度数は高そうです。しかし、甘ーーい味つけがされていました。グイッと飲みほしました。
甘いから、勢いでぐいっと飲めるのです。あ?なんか体が温まってきた。よし、もう一杯。よし、もう一杯。そんな私の姿を見守る茄子さん。私はこの時から半分記憶をなくしました。これからは茄子さんから聞いた話になります。
そばに身長約2mの体格の大きな白人男性がきました。私はその大きな男性にからみました。
「良くあんなことが出来たな?」と後で言われた行動です。
よった私は、やたらに話しかけて身長2メートルの白人男性を困らせたようでしだ。私の消えかかっていた記憶ではフレンドリーに話しかけていたと思うのですが茄子さんの話によると、まるで喧嘩を売っているようだったのです。「これはヤバい」と茄子さんは思い、私を外に連れ出しました。
2人で歩きながら公園が見えました。公園で休もうということになったのです。「お前、そうとう酔ってるだろ?」茄子さんの言葉に私は「酔ってません」大声で那須さんにからんだのです。
それでも「どう見ても酔ってるだろ?」としつこく茄子さんは聞いてきました。それに対して「酔ってませんよ」と私は大きな声で言い、鉄棒の所に行きました。そして逆上がりをしようとしたのです。酔ってませんアピールです。
酔ってるけど、なんとか逆上がりをしようとする私
しかし、酔っていました。
「うおーー酔ってなーーい。くっそーー酔ってなんかないから。はあ、はあ、はあ、あーーーあーーーうおーーー」
必死で、掛け声を出し、足をジタバタさせながら私は見事に逆上がりを1回やってのけました。その瞬間、地面に倒れ込みました。
「おい、大丈夫か?」茄子さんは私を抱きかかえました。かろうじて立ちあがった私は叫びました。
「僕は死にましぇーーん」
「だってだって、もてないんだから」
「だから、僕は死にましぇーーン」
そして、感情的になり、目から涙が出てきました。
「いや、違うお前はモテる」
「嘘つかないでください」
「嘘じゃない」
「どうやって信じろと言うんですか?」
茄子さんは私に抱きつきました。そして叫んだのです。
「俺はお前が好きだー」と。
女性にもてなかった私ですが大きなものを手に入れました。
次の日、茄子さんに言われました。「俺、今まで色んな若い奴見てきたけどお前みたいな馬鹿は初めて見た。俺、実は一旦嫌いになった男を二度と好きにならないんやけどその俺のポリシーを見事に覆したのがお前や。いや、お前は、凄い奴や」
その後、先輩はとても私のことを気にいってくれて、仕事でも、プライベートでも、とても面倒を見てくださいました。女性にもてない。さらに仕事も出来ない私を必死で何とかしてあげようと努めて下さいました。
この先輩のおかげで、私はずいぶん人として成長出来たと思います。今思えば先輩に気に入られてとてもよかったと思うのです。仕事がなかなか覚えられない。女性にもてない。それでも・・・
一生懸命に生きている姿は誰かの心をつかむということを知ったのでした。