お客様都合による返品を受け付けない会社でしつこく返品を迫るお客様に思うこと
理不尽な要求に安易な対応は悪しき前例を作る
食品スーパーのおやじです。この仕事につきものなのが、お客様からの理不尽な要求です。特に勝手な理由による返品を要求してくるお客様が多いです。
「唐揚げを買ったけれど家族が食べなかったから」「おにぎりを買ったけれど美味しくなかったから」「プレゼントで買ったお酒を相手の人がいらないと言ったから」
これらは商品に問題があるわけではないので、お断りをすることが会社のルールになっています。しかし、しつこく「融通をきかせろ」「こっちは客だぞ」と言われる方もいます。
そんな時は「何事も穏便にすませたい」「早く話を終らせたい」と思いお客様の要求をのんであげたくなります。しかし、安易な対応は「この前やってくれたのに」と悪しき前例を作ってしまいます。
先日、30分前に購入された牛乳を返品したいというお客様がいました。
理由は「いらなくなったから」です。しかも店の外に出られていました。
店の外に出られた段階で私たちがその商品がどのような保管状況にあるのか確認することが出来ません。食の安全を守る立場としてこのように対応をしました。
私 「申し訳ございませんけれど冷蔵商品で店の外に出られているので返品には応じられません」
お客様 「なんで?普通どこでも当日だったら返品してくれるわよ」
私 「うちも、常温で保存できるものでしたらレシートを確認して当日に限りさせて頂いておりますが、冷蔵、冷凍、パンなどは傷むのが早い商品でして、店の外に出られた時点で、私共がその商品がどのような保存状況に置かれているかを確認することができませんので、申し訳ないのですがお断りさせて頂いています」
お客様 「そんな訳ないでしょ?さっき買ったばっかりなのに、そんなにすぐに牛乳が腐ると思ってるの?」
私 「申し訳ございませんが、一旦店の外に出られた後での冷蔵商品を他のお客様に販売するのは食の安全を守る立場としては出来ないんです」
お客様 「もうあなたうるさいわね。ちょっと待っててくれる?」
お客様は私を待たせて店内の奥の方に行きました
「待っててくれる」と言われ困惑する私
私はサービスカウンターで待ちながら、とても緊張をしました。誰かを呼んでくるのでしょうか?怖そうな旦那さんかな?と想像すると心臓がドキドキしました。
少しの時間で、お客様は私のところに戻ってきました。その手にはオレンジジュースがありました。その後、私の想像通り「これと交換するからいいでしょ?」と聞いてきましたた。
当然、そのような対応は出来ないので「申し訳ございませんが交換であっても、一旦外に持ち出された牛乳を返品することは出来ないんです」と答えました。しかしお客様は引きさがりませんでした。
返品出来ないと知ると交換してもらおうとするお客様
お客様 「だから、別のものを買うと言ってるでしょ?」
私 「申し訳ございませんが交換であっても牛乳をこちらが受け取ることになりますんで、対応出来ないんです」
お客様 「あなた、良く考えなさいよ。交換なんだから、あなたは何も損をしていないでしょ?」
私 「申し訳ございませんが、損か得かでの対応は出来ないんです」
お客様 「あなたしつこいわね。何度同じ事言ったら分かるの?私は返品するって言ってないでしょ?交換なのよ。それをあーだ、こーだと、もう嫌だわ。あなた良くそんなんで商売が出来るわよね」
話はまだ続きます。
独自の理論を言うお客様
お客様 「あなた、もっと頭を柔らかくして考えなさいよ。これを戻してこれを買う。それでお終いじゃないの?それをあーだ、こーだと無駄な時間を使うことないでしょ?」
私 「お時間を頂いて申し訳ございませんが、会社のルールとして受け付けられないんです」
お客様 「何をそんな小難しいことを言ってるの?もっと簡単に考えたらすむんじゃないの?あなた達だって暇じゃないでしょ?」
私 「簡単に交換ですむのなら話は早いのですが、ルールがあるので申し訳ないのですが勝手な真似が出来ないんです」
お客様 「私はたかが100円ぽっちが欲しくて言ってるんじゃないのよ」
私 「本当に申し訳ないのですが・・・」
お客様 「もういいからこれ打ってくれる」
お客様から言われ、レジでオレンジジュースを打ちました。
その会計の後、「もっとお客さんを大事にしなきゃいけないわよ」と言われ、私はただ「申し訳ございません」と謝るだけが精一杯でした。
思いだすたびにイライラした気持ちが大きくなりました。
「私は100円ぱっちが欲しくて言ってるんじゃないのよ」と、 お客様が言えば言うほどその逆に聞こえてくるのです。「もっとお客さんを大事にしなさいよ」の言葉も深く心に突き刺さりました。
私もそうしたいのです。何事も穏便に済ませたいのです。購入してから30分しか経っていない牛乳。大丈夫だと思うのですが、明確なルールがあるからこそ食の安全は守られるのです。
それが来店して頂くすべてのお客さんを大事に扱うことにつながると思うのです。こういったお客様都合の返品を上司から「絶対に受け入れないでくれ」と言われています。一人を許すと違う人も許さなければいけなくなるからです。
「以前にやってくれたじゃないの?」と再び同じことをされることがあるのです。正直言ってこの手のやり取りはとても骨が折れます。「何事も穏便に済ませたい」と言う気持ちが湧きおこります。
私達の仕事はお客様あっての商売です。
今回のようなお客様都合による返品は会社の方針によって変わります。会社によっては、穏便に済ますということで、生鮮食品であっても返品を受け付けることもあります。
そして、返品された牛乳などは破棄をするのです。それはそれで私は良いと思います。私たち従業員は会社の方針にそって行動しなくてはいけないからです。
正直言って、そういった返品も認められている会社がうらやましいと思います。お客様の気持ちも考えると、後で破棄する商品でも返品を受け付けたいと思います。
出来ることなら穏便にすませたいのです。なので「もっとお客さんを大事にしなさいよ」と言う言葉が心に突き刺さりました。
その突き刺さった言葉を心から抜こうと苦しむ中で見えてきたものがありました。それは「もっとお客様を大事にしなさい」と言われた言葉はあくまでも、そのお客様個人を大事にしろと言われていることです。
そこで、そのお客様の気持ちを大事にする形で、何事も穏便にすませようとする考えでは食の安全も守れなければ、他のお客様を大事に扱うことにもつながらないと言うことです。
明確なルールがあるからこそ、全てのお客様を大事に扱うことにつながるのです。