ありがとう熊さん

食品スーパーのおやじが、生き方について辛いことも楽しいことも含めて、心を込めて書かせてもらいました。

他人の子供を叱れますか?親が出てきて文句を言われるから叱れない人には普段からの心構えが必要です。

「駄目だよ」「危ないよ」だけでは伝わらないことがある

勤め先の食品スーパーで、子供が走っていて危ない。果物をおもちゃと勘違いして遊び道具にしている。やってはいけないいたずら行為。しかし注意をしない大人ばかりです。

そして、注意をしても「駄目だよ」「危ないよ」だけでは制止力がなく、一旦やめたようで、またいたずらをくりかえす。反省のない子供。

昔は、サザエさんに出てくる波平さんのように、「バカ者~」と叱り飛ばす怖い大人がいたものですが、どうも最近は子供を叱るということに腰が引けている大人が多くなってきています。

ではなぜ他人の子供を叱らなくなったのでしょうか?

他人の子供を叱らない理由
  • 親が出てきて、文句を言われるかもしれないから。「うちの子は叱らない教育をしているんです」「うちの子は、そんな悪いことはしません」などと言われるから。
  • 「他人の子供を叱るなんて何様のつもり?」と思われる。子供を叱るのは直接の親だけだと言い張るモンスターペアレントが増えてきている。
  • 子供相手に本気で怒るのは大人げないことではないか?と思ってしまう。下手に叱り、泣かれて自分が逆に悪者になるのではないかと思ってしまう。

昔は、悪いことをしたら、知らないおじさん・おばさんに叱られました。それでも「あそこのおじさんは乱暴だ」などと陰口を言われることはありませんでした。

親も、自分の知らないところで子供がいたずらをして叱られた時は、申し訳ない気持ちになり、感謝もしたものです。

しかし、時代の変化で、「他人に自分の子供が叱られるのは嫌だ」と言う親が増えてきています。他人の子供を叱ることで親とトラブルになったという話も聞くようになりました。

なので、少しぐらいのことなら叱らないでおこうかな?とスルーする大人が増えてきました。そして、いざ本当に叱らなければいけない時、叱れないという問題が出てきました。

今回は、私が経験した、叱りたいけど、普段子供を叱ったことがないので、強く叱ることが出来ず、結局子供に「フンッ」と鼻で笑われた苦い経験をお話したいと思います。

そして、そこから学んだことをお伝えしたいと思います。

万引き少年が現れた。

食品スーパーに勤めています。先日、パートさんに「万引きをしている子供がいる」と言われ、見るとキョロキョロと周りをうかがい、大きなカバンを肩から提げている少年がいました。

万引きは実際にしている所を見ないといけません。なので私は少年の後をつけました。すると少年は私の視線に気付き、カバンに入れてあったお菓子やらジュースやらを出していきました。

会社からは万引き犯は店の中ではなく、必ず店の外に出た時に捕まえるように指導されています。店の中では「後で払うつもりでした」と言い逃れをされる恐れがあるからです。

しかし、私は我慢が出来ませんでした。  見つかったからカバンから出して逃げようとする姿に腹が立ったのです。「コラ、何してる」と注意しました。

すると少年は「俺はお客さんなのに何?」と、とぼけました。会社から店の中では捕まえてはいけないという指導が頭の中から消えてしまい、「こっちに来い」と少年を店の倉庫に連れて行きました。

少年は信じられないほど態度が悪かったです。

同僚に警察を呼んでもらうようにお願いしました。少年に「今警察を呼んだから、そこで待ってろ」と言うと、少年はペっと床につばを吐きました。

警察がくるまでの間、少年が逃げないように見張っていると、「おっさん、いつまで待たせるの?」「急いでいるから早くしてくれる?」と言ってきたので「いいから黙って待ってろ」と私は言いました。

15分ほどで警官2人が到着しました。

20代と思われる若い警官と40代と思われる男性警官の2人です。そして40代と思われる男性警官が少年と話をし始めました。

警官 「何でカバンの中にお菓子やジュースを入れたんだ?」

少年 「後でお金を払おうと思ってたから」

警官 「レジカゴがあるんだからそれを使わないといけないだろ?」

少年 「手首を怪我して、レジカゴが持てないから肩から提げるカバンを使った」

そんなやり取りの中、若い警官から私は、少年と離れた場所に呼ばれ、話をしました。
店の中での万引き行為は立証が難しい。

若い警官は言いました。「少年はかなり万引きについて詳しいと思います。どう言えば言い逃れが出来るかを知っています。店の中での万引き行為は立証が難しいのを御存じですか?」

私は「知っています。どうしても我慢出来ずに捕まえてしまいました。本当に反省をしています。うかつな行動で申し訳ないと思っています」と言いました。

そして再度、少年のところへ若い警官と行きました。

若い警官は少年に近づき話をしました。「何でこんなことをしたんだ?」

少年 「そっちこそ何しに来たの?」

若い警官 「お金を払わずにカバンの中に商品を入れたからだ」

少年 「後で払うつもりだった」

若い警官 「お金は持ってるのか?」

少年 「お金は家に忘れてきた」

若い警官 「じゃあ万引きじゃないのか?」

少年は、ふてぶてしい表情でポケットに手を突っ込みながら「店の外に出てないのに万引きっておかしくない?そもそも俺何で捕まってるの?」と言い警官を睨みつけました。その瞬間です。とても大きな声で若い警官は叫びました。

「なんだその態度は」と。

いきなりの大きな声に少年は驚きました。

「何だその態度は?誰にそう言うことを教えてもらったのか知らないけど、その行動がどれだけ周りに迷惑をかけているのか分からないのか?」

そして、こんなことでは捕まえられないだろうという考えがどれだけ悪質であるか?どれだけ親に心配をかけるか?このまま大人になったらどれだけ取り返しがつかないか?といったことを話しました。

そして、少年の名前と親の連絡先、通ってる中学校を聞き出しました。そして私に「親への連絡はよろしけば店からして頂けますか?」と言われ私がする事にしました。

少年の母親が電話に出られ、大変驚きながらも「申し訳ございません」と謝罪の言葉を言われました。

その後、警官に「この少年をどうします?」と言われ、私は「もう二度と来店しないでくれたらそれでいい」と言いました。警官は少年に「今回は店の好意でもう帰っていいことになったけど二度とこんなことをするな」と言い少年を帰しました。

言い逃れが出来る状態での逮捕は難しい。しかし見逃すわけにはいかない。

万引きとしての立証が難しい状態で、警官も大変困ったそうです。しかし若い警官は少年に対して、とても大きな声で「悪いことをしていてその態度は何だ?」と叱りつけました。最後、少年は小さな声で「すみませんでした」と謝りました。

恐らく少年には他に仲間がいてて、どうすれば言い逃れが出来るか知恵を付けられていたのだと思うと警官は言ってました。

だから逮捕は難しい。しかし、その悪意をもってする行動を見逃すわけにはいかない。だから人として一人の人間として本気で叱ったそうです。

子供と本気で向き合い、本気で叱る。

最近、本気で子供に叱ることが出来ない大人が増えていると思います。こんなことを言ったら逆にその子の親から、「うちの子を傷つけないで」と言われるかもしれないと、ブレーキがかかります。

言い逃れが出来る状態で、他人の子供を叱りつけるのは正直ためらうこともあると思います。しかし、一人の人間として向き合い本気で叱る。そんな警官の正義ある行動に子供を本気で叱ることの大切さを改めて感じました。

なぜ、私は本気で叱れなかったのか?

あの時私は、強く叱るということに抵抗がありました。信じられないほど態度の悪かった子供ですが。

私の頭の中で、「こんな態度をとる子供なら、親もモンスターかもしれない」と思ったのです。後のトラブルを心配して、強く出れませんでした。

しかし、このままではだめだという気持ちもありました。「おっさん、いつまで待たせるの?」と言う大人をなめ切った態度に一応は注意したものの、本気は伝わらず、どんどんなめられて行っている感じがしました。

その原因は、普段、子供を叱るということを知らないからです。叱り方が分からなかったのです。「自分が叱ったら子供がおかしくなってしまうかも?」と本気でぶつかれなかった私です。

いざと言う時に叱れるのは普段からの心構え

今回、私は自分のふがいなさを痛感しました。万引き少年に一応は注意したものの、その注意は弱く、どんどんなめられていった私。

それに対して、若い警官が、本気で強くり飛ばしたこと。その直後に毒を抜かれたようにおとなしくなった子供。

子供を叱りずらくなった世の中です。しかも、度を越した態度は注意だけでは伝わらないことがあります。

素直に注意を聞かない子供。注意だけでは、その子は「フンッ」と鼻で大人を笑う。これは駄目だと思いつつも、強く叱れない。

叱れないのは経験がないから、どうしたらいいのか分からない。そんな時は、普段からの心構えが必要なんじゃないかと気づきました。

若い警官は最初は穏やかな口調で注意していました。しかし、度が過ぎた態度に強く叱りました。普段から、ここまでのラインを越えたら強く叱らねばならないという線引きがされていたのでしょう。

それがあるから、たとえ、後で親が文句を言ってきても、その叱ったことへの正当性を強く言えるのでしょう。

私が今回、一番言いたかったことは、普段からの心構えの大切さです。これがあるかないかで、本気で子供とぶつかることが出来るかどうかが決まります。

若い警官にはその心構えがあったのでしょう。注意だけでは素直に聞かない子供もいる。そんな子供に大人がしてやれること。

「あの時、おじさんに叱られたけど、おじさんはこんな気持ちだったんだ」と思い起こす。それが次の世代への私たちがしてやれることの一つでしょう。