ありがとう熊さん

食品スーパーのおやじが、生き方について辛いことも楽しいことも含めて、心を込めて書かせてもらいました。

腹が立つ客に仕返ししたいけど、いい方法はないか?と悩む前に一歩離れて観察する。

「うわー、またあのお客様が来た」

食品スーパーに勤めています。サービス業をしていると必ずどこの店にも、従業員から要注意と思われているお客様がいるものです。

「うわー、またあの人が来た」

と口には出さないものの心の中で思う従業員の間に緊張感が走る瞬間です。この人の前では下手を打てないという気持ちが生まれます。

]「俺のパターンを覚えろ」

「俺のパターンを覚えろ」と言わんばかりの態度で従業員に接するお客様。特に新人には厳しく、少しでも自分が求めていることとずれていることをされると、大きな声で威嚇的にどなりつけられることがあります。

耐えることを要求される従業員

「あの人なんとか出来ないのかな?」

そう思いがちですが、お客様であることには変わりなく、理不尽だと思いつつも耐えることを要求されるのですが、それに耐えられない従業員の訴えを目の当たりにして考えさせられました。

店内で怒鳴るお客様

「お前は一言多いんだよ」
と常連の男性客の怒鳴り声が響きました。何事かと思い・・・というよりも「またあの人か?」と思い駆けつけました。

新人に厳しい常連のお客様

「お前は喧嘩を売ってるんか?」
と怒鳴られていたのは、研修が終わり一人でレジを任せて間もない新人パートさんでした。実はこの男性客はとても注意しなくてはいけない常連のお客様です。

特に新人にはあたりが厳しく、何かと大きな声で注意をしてくるのです。その言い方があまりにもきつく、はたから見ていてほぼ威嚇のように思います。

「遅い。もっと速くやれよ」と不慣れな新人の遅さを責めたり、「オイ!そんな入れ方するな!」とレジ担当がカゴに商品を入れる時に自分の気に入らない入れ方をされると怒りだしたり、うっかり惣菜に箸をつけ忘れたら、「オイ、いちいち言わないと駄目なのか?」と怒鳴るのです。

今回は、「もっと速くやれ」と言われたパートさんが、「申し訳ございません。まだ新人なので」と言ったことで、怒りに火をつけました。

まともに次のお客様を相手出来なくなるほど精神的に追い込まれる

「余計な一言を言うな。金を貰ってるんだろ?お前はボランティアか?」

ガガガガ・・・とまくしたてるように怒鳴るお客様に私も「申し訳ございません」と何度も頭を下げてようやく・・・「俺を誰だと思ってるんだよ?どれだけこの店に金を落としてると思ってるんだよ?」と言いながら帰られたのです。

その後、パートさんを見ると今にも泣きそうな顔をしていました。

しかし、混雑時でレジを止める訳にもいかずに「後ろに下がっていて下さい」と言い、私がレジを代わることにしました。

出入り禁止に出来ませんか?

その後、パートさんが仕事から上がる時、ベテランのパートさんが今回の新人パートさんと一緒に店長に相談をしていました。

ベテランのパートさんが新人パートさんの相談にのる形で、一緒に店長に相談しようと言うことになったようです。

ベテランパートさん 「出入り禁止に出来ませんか?」

店長 「出入り禁止にするのは余程のことがないと難しいですよ」

ちなみに以前店長は、そのお客様にやんわりと注意をしています。

「出入り禁止に出来ないならもっときつく注意して下さい」

しかし、改善がされてないのです。相変わらず、新人が入るたびに「オイ。もっと商品を大事に扱えよ」と大きな声で責められます。

ベテランパートさん 「今回だけじゃないでしょ?私も今回だけなら何も言わないけど、みんな被害を受けてるんですよ。出入り禁止にしないのなら、もっときつく言ってもらわないと困ります」

「警察を呼んでもいいですか?」

そんな会話の中、ベテランパートさんの後ろにいてた新人パートさんが・・・
「次にあの人が来たら、録音して警察を呼んでいいですか?」

店長 「それはしないで下さい。個人で商売をやってるんじゃないんですよ。そんなことをしたら大変なことになりますよ。『お前の所はそんなことをするのか』ということで個人の問題だけでは済まなくなるんですよ」

パートさん二人 「とにかくしっかりと店長から注意して下さい。でないとこの先新人が来たらずっと同じことの繰り返しですよ」

パートさんの勢いに押され、「分かりました」と店長は言いました。その後、私は店長と二人きりになり、店長ならではの悩みをぶつけられました。

「うーーーん、どうしよう?どうやって話しをつけようかな?」と。

下手に注意をすると逆にこっちが不利になる場合が考えられる

本来であればお客様が大きな声で怒鳴っている時に注意をするのが一番なのですが、そうでなく聞いた話によって話しをすることになるので注意しにくいようです。

しかも、気難しいお客様で少しでも隙を見せると、そこをついてきます。しかし、あそこまでパートさんに言われて動かない訳にはいかない店長は「うーーん。どの言い方が一番角が立たずに済むかな?」と悩んでいました。

やっかいなお客様はどこにでも存在する。

パートさんの言葉に不満を持つ店長はこんなことも言っていました。
「暴言が嫌なら接客業に来なけりゃいいのに・・・」と。

この店長の言葉は、私も耳が痛いです。私は暴言は嫌いですが、接客業を選びましたから。この仕事を選ぶ前は、接客業はたくさんの「ありがとう」でつつまれているハッピーな世界だと思ってましたから。

しかし、現実はそうではなく、むしろ、やっかいなお客様ばかりが目立ち、どうして私は接客業を選んだんだろう?と思ったほどです。

なので、店長の「暴言が嫌なら出来るだけ人との関わりが少ない仕事を選ぶべきだ」ということには、ちょっと違うように思いました。

ただ、接客業を選んだ時点である程度の覚悟は必要だとは思いますけどね。

結局出入り禁止にするには材料が足りなすぎるの判断

店長 「大体、あのお客様は厄介だと教わってるんだから、そんな人に隙を見せたこっちも悪いと思うんだよ。大体、『新人だから大目に見てください』と言う言葉も優しいお客様は何も言わないけれど、そうじゃない人には言い訳にしか聞こえないもんなんだよな」

店長の隙を見せたこっちも悪いと言う言葉に、「確かにそうだな」と思った私です。あきらかに新人に対して、「俺は常連だから俺のパターンを覚えておけ」と言わんばかりの態度は理不尽に感じるのですが、出入り禁止にするのは難しいと思います。

それに、新人への暴言とはいっても、まったくこっちに非がないことを言っている訳ではないのです。

「早くしろ」

「もっと商品を大事にあつかえ」

これらの言葉は大きな声で威嚇的に言うから暴言に聞こえます。さらに新人への責めも、一時的なもので、その人のパターンを覚えてしまえば何も言われなくなるのです。
訴えても法的に認められるか?

どこの店にも必ずと言っていいほど難しい対応を求められるお客様はいます。威嚇的な言葉責めをされてもお客様はお客様です。

正直に言って、お客様の中には、店員をあきらかに下に見ている態度をとる人もいるので虚しい気持ちにもなることがあります。

しかし、例えば暴力をふるわれたり、「殺すぞ」と脅迫されたりした場合なら警察に動いてもらえるのですが、今回のケースの場合は逆に訴えられた時に・・・

本当に店側の主張が法的に認められるのか?という難しさがあるのです。

つまり、理不尽だけど法的になんとかするのは難しいのです。

残念なことに、ちょっとしたことで大声で責めるお客様はどこでも見かける。

理不尽に怒鳴られると「悔しい!ギャフンと言わせたい」と思いがちですが、このようなケースでは結局は店の責任者である店長の判断になります。

あまりにも度が過ぎていて、店側の注意を受け入れなければ出入り禁止にしますし、それほどでもないと判断すれば従業員に我慢を求めます。ここで考えたいのは・・・

どこの店にも従業員に厳しい態度のお客様はいるということです。

地域性もあるでしょうが、不特定多数のお客様が来店される食品スーパーでは、ちょっとしたことで大きな声を出し責めるお客様はいるものです。

決して歓迎はされない存在ですが、存在するというのが現実でしょう。人と接する仕事をしたいと言うことで接客業に就き、厳しいお客様が存在するという現実に悔しい気持ちになるのは皆同じです。

お客様の態度は一過性のもの

しかし、店長が言った「暴言が嫌なら接客業に来なけりゃいいのに」という考えには疑問が残ります。なぜなら、店全体で取り組む問題だからです。

どこの店にも存在する新人に厳しく当たるお客様は台風のように一過性のものです。

従業員全員で新人をフォローすることが大事です。ベテランが横につく、慣れるまで他のレジに回ってもらうなど全員で取り組む問題でしょう。

それでも、防ぎようがない場合が出てきても、お客様の新人に対する厳しい態度は一過性のものです。台風が直撃したようなものです。

なので全員で取り組みつつ、直撃の恐れがある新人にも気持ちを強くもってもらうのです。

一人でなく全員で取り組む問題

そして今回、パートさんの「客の暴言を録音して警察に訴えてもいいですか?」という訴えを上司が却下した理由は・・・

接客業につきものの要注意のお客様の域を超えていない場合は店側の主張が法的に守られるのかどうか難しく、個人で取り組む問題ではなく全員で取り組む問題だからです。

人間である以上は腹が立つ気持ちはそう簡単に抑えられない。

長年接客業をしていますが、人間である以上、どうしても相手に対して腹が立つという感情を捨てることは出来ませんでした。

「それで、お金をもらっているんだから、プロとして、仕事として割り切るべきだ」と自分に言い聞かせ、毎日が我慢の連続です。

なので、今回の「警察を呼んで訴えたい」と言ったパートさんの復讐心が痛いほどよくわかります。

「仕返ししたい」「悪いのはあなただと逆に反省させてやりたい」と言う気持ちが生まれますが、その気持ちを仕事だからと言う理由でおさえつけて、どうしていいのか分からなくなります。

「あっ、またか」の余裕を身に付けるには?

接客業には自分が想像しているよりも、はるかに斜め上を行く腹ただしいことが起きることがあります。言いかえると想像出来ないレベルだから腹が立つのでしょう。

そうして山のように、腹ただしいことを経験して、やっと、「まっまたか!」の余裕を身に付けるのです。

理不尽なお客様が来られても、それは日常的なこととしてとらえることが出来るようになります。これは慣れと言うものです。

慣れるのが一番

「慣れるのが一番」とはよく聞く言葉ですが、一見無責任な言葉ですが、長年やっていると、どんどん後輩もできてきて、その後輩たちも、自分と同じように悩む道を歩いていることに気付きます。

理不尽なお客様に腹を立て、そんなお客様は山ほどいるのに、一人一人にぶつかって生き、後先を考えず、「この恨み晴らさずにおけるか」とたとえ相手と刺し違えても自分の気持ちをすっきりさせたい気持ちでいる後輩たち。

自分が怒っているときは、目の前のことしか見えないのですが、他人が怒っているときは意外と状況がみえるものです。

仕返ししてもなんのメリットもない。

その仕返しはとてもハードルが高い。

仕返しが実現しても後でやっかいなことになる。

山ほど腹ただしいことを経験してきたからこそ、見えるものでしょう。しかし、慣れる前に心が壊れそうになる時がありますよね。

そんな時は一歩引いて観察する。

仕返ししても、やっかいなお客様は多すぎる。

仕返しをしても、法的に守られるのかの判断は難しい

仕返しをしても一人で戦う問題ではない。

下手に仕返しをしてもこちらが不利になる

もちろん、どう考えても警察を呼ぶべきだという判断が必要な場合もあるでしょうが、その一歩手前の理不尽なお客様は意外と多いものです。

毎日が勉強です。

「仕事として割り切れ」と言われても、割り切れない辛さがありますよね。でも、一歩引いて観察すると「仕返ししたい」「逆に謝らせたい」という気持ちが無駄に疲れるだけだと気づけます。

今回の記事は、「そんなのは接客業だったら当たり前だよ」と思われる人には響かないでしょう。

もうすでに、接客業につきものの理不尽なお客様に対する心の余裕がある人です。とちなみに私はまだまだその域には達していません。

毎日が勉強です。こんな角度から攻めてくるのか?と驚きの連続です。腹が立つからと一人一人にぶつかっていっても、本当に大変です。身がもちません。

一歩引いてみると余裕が出る。

「俺は客だ」と言わんばかりの客を遠ざけるのは現実的に不可能です。そんな時に欲しいのが心の余裕です。一歩引いてそういうお客様を観察するという余裕です。

腹が立つお客様は必ずいます。 そういうお客様に対し、いちいち腹を立ててたら接客業はつとまりません。

いろいろと対処法を紹介しましたが怒りの感情を抑えるのは難しいですが、普段の心構え一つで慣れてきます。

慣れてくれば、何とも思わなくなるでしょう。 「あ、またか」みたいな感じで、うまく対処できるようになります。

「怒っている人」を観察する気持ちに切り替えると楽になる

人と接する上では、腹が立つこともあり、仕返ししたい気持ちで一杯になることもあるでしょう。

そんな時は、みんなが通る道であり、その道を一歩引いて観察すると、若干は楽になれると思います。

仕事なので、我慢も大事ですし、それが自分を大事にすることにつながると思います。まだまだ私も腹を立てることがたびたびですが、一緒に頑張りましょうね。

 

あやしい催眠商法 だましの全手口  身近な人を守るために知っておくべきこと

あやしい催眠商法 だましの全手口 身近な人を守るために知っておくべきこと

 

 

 

「あやしい催眠商法だましの全手口身近な人を守るために知っておくべきこと」
単行本: 230ページ
出版社: 自由国民社 (2018/11/2) 
筆者 ロバート・熊
イラストレーター にゃんとまた旅/ねこまき
身近な人を守るために知っておきたい催眠商法の現場を元社員が詳細に明かした本です。
★本書の特徴
1.いかにしてお年寄りのこころを奪うか、元社員が明かします。   
2.ネット上にある催眠商法の説明はごく簡素なものですが、事実はかなり込み入った内容です。本書では複雑で巧妙な手口をあますことなく紹介いたします。
3.まず近づかないことが一番ですが、もし被害にあってしまった場合の有効な対策も分かります。

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