ありがとう熊さん

食品スーパーのおやじが、生き方について辛いことも楽しいことも含めて、心を込めて書かせてもらいました。

相手の頑張りを無視した注意は、「こんなに頑張っているのにやってられない」と思われる

アルバイトの一人がよく遅刻をするようになった。彼は毎日夜遅くまで残業し、寝る時間が少なかった。だから、いつもギリギリに走りながらやってきてタイムカードを押していた。そして間に合わず1分、2分の遅刻になった。

彼が、1分の遅刻をしても、それ以上に遅くまで頑張っていたのは分かるのだが、1分でも遅刻は遅刻だ。少しぐらいはいいかと許していたら周りに示しがつかない。

遅くまで頑張っている彼に、「たかが1分の遅刻」と思うと、ためらう気持ちもあるが注意した。

「最近遅刻が多くないか?」

「いつもギリギリに来るから間に合わないんじゃないか?」

「それなら5分早く来るつもりで来たら遅刻は防げるんじゃないか?」

私の言葉に彼は「そんなことは分かっています」と怒り、事務所を出て行った。その後、彼は私とすれ違っても目を合わさなくなった。そしてアルバイトのシフト表から自分の名前を斜線で引き消した。

恐らく「こんなに頑張っている俺に、たかが1分の遅刻で責めやがって。こんな店辞めてやる。俺が居なくなったら困るだろう」とでも思ったのだろう。

私は正直思った「嫌なら辞めろ」と。しかし、しばらくすると、シフト表の斜線を引いた横にまた自分の名前を書いていた。考え直したのだろう。子供の様な行動に笑ってしまった。

2人の同僚にこのことを話した。一人は「良く注意してくれたね。1分の遅刻は30分の遅刻よりもタチが悪いと思うよ。30分の遅刻はそれなりの理由があるけど1分の遅刻は気の緩みから来るからね。だから厳しく注意した方がいいよね」と言ってくれた。

そのおかげで、私は間違ってなかったと、ほっとした気持ちになった。

しかしもう一人は「確かに注意するのはいいと思う。でもいきなり注意して5分早くきたらとアドバイスするのは短絡的じゃないの?その前に『どうしたの?最近疲れがたまっているんじゃないの?』と聞いてあげたら彼と波風が立たなかったんじゃないの?」と言った。

確かに言われてみればそうだ。とても痛い所を突かれた。私は彼の気持ちをくんだ言葉を一切かけていなかった。その言葉をかけていれば、その後の注意やアドバイスの受け止め方も変わっただろう。そう思うと後悔した。

その後、しばらくの間アルバイト君は遅刻をしてこなくなった。それとともに目を合わさなかったほどの私への怒りも収まり、普段通りに接するようになってきた。

しかし、ある日のこと。また遅刻をしてきたのだ。彼が前の日の夜遅くまで頑張っていたのは知っていた。

私は注意する前に、「昨日は大変だったね。もしかして疲れがたまっているんじゃないの?」と聞いてみた。すると照れた表情で、「申し訳ございません」と謝ってきた。

いきなり注意したあの時とは違い明らかにその表情は柔らかかった。

彼は遅刻が駄目なことぐらいは、言われなくても分かっているのだ。注意する前に自ら謝ってくれたのだ。私は笑って許した。

 

 

あやしい催眠商法 だましの全手口  身近な人を守るために知っておくべきこと

あやしい催眠商法 だましの全手口 身近な人を守るために知っておくべきこと

 

 

 

「あやしい催眠商法だましの全手口身近な人を守るために知っておくべきこと」
単行本: 230ページ
出版社: 自由国民社 (2018/11/2) 
筆者 ロバート・熊
イラストレーター にゃんとまた旅/ねこまき
身近な人を守るために知っておきたい催眠商法の現場を元社員が詳細に明かした本です。
★本書の特徴
1.いかにしてお年寄りのこころを奪うか、元社員が明かします。   
2.ネット上にある催眠商法の説明はごく簡素なものですが、事実はかなり込み入った内容です。本書では複雑で巧妙な手口をあますことなく紹介いたします。
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