人は誰も見ていないところでは善悪の区別がつきにくくなる
食品スーパーに勤めだして2年目の若い男性アルバイトが、もしかしたらレジで不正を働いているかもしれないということをパートさんから聞いた。
パートさんの話によると、彼は知り合いらしきお客さんが来た時に、商品をレジを通すふりをして、実際は通さずに無料で渡しているようだ。
しかも全部の商品をそのようにすると、すぐにばれるだろうと、半分ぐらいの商品を通して、残り半分をうまくレジを通さずに渡すという姑息なことをしているようだった。
早速パートさんから教えてもらった時間の防犯カメラの映像を確認した。するとレジを通しているのかいないのか判断しにくい動きに見えた。
しかし、なんの商品を渡しているのかは確認できた。なので、その時のレシートを出してみて確認した。するとパートさんが言うようにレジを通した商品もあるが、通していない商品も多くあることが分かった。
あきらかな不正であるために、上司と相談して問い詰めることにした。彼を呼びだし、事務所で防犯カメラの映像とレシートを照らし合わせて、不正の事実を突きつけた。彼は不正を認めた。
彼と一緒に今まで頑張って働いてきただけにとても残念な気持ちになった。「何でそんなことをしたんだ?」と聞くと、「たまたまです」と自分を正当化しようとしてきた。
「そんな言い訳はいい。ばれないと思っていたのか?」と聞くと静かにうなづいた。彼は当然、解雇になった。
他の従業員はこのことに驚いた。彼は真面目そうな感じでそのような不正を働くようには思えなかったからだ。
そしてみんなで今後、不正についてどうすべきか話し合った。やはり不正は見付けるよりもさせないことに力を入れるべきだということになった。
なぜ彼は不正をしたのか?それは「店がだらしなく見えるからだ」と意見があった。忙しいを理由に事務所や倉庫の整理まで手が回らなかった。
整理整頓が出来ていない店はだらしなく見える。そのような店は不正に対してもだらしないだろうと彼は思ったのだろう。
そして事務所で防犯カメラの映像をパソコンの画面に映し出してはいるものの、誰も見てはいないだろうと思ったのだろう。
しかし、定期的に映像をチェックしている姿勢を私たちが見せていたら、見られているという意識が働き不正の抑止力になっただろう。
これからは「不正は必ずばれる」「不正をした人間はこうなる」と言うことを従業員全員が理解することが大事だということになった。
今まで彼以外にも不正をしてきた人を何人か見てきた。「えっこの人が?」と思うような意外な人もいてた。悪いことをしなさそうな人のように見えていても、誰も見ていないところでは善悪の区別がつかなくなることがある。
いい人ばかりだから大丈夫だという考えは危険だ。どうせばれないだろうという気持ちは誰の心にも少なからずあるからだ。