ありがとう熊さん

食品スーパーのおやじが、生き方について辛いことも楽しいことも含めて、心を込めて書かせてもらいました。

人が本を買う理由は「この本でないと知ることが出来ない」価値を感じるからである

子供のころからの夢は自分の本を出すことだった。しかし大人になり、何の取り柄もない私はどうしたら夢が実現出来るのか悩んだ。なにかいいアイデアはないものかずっと考えていた私にあるアイデアが思い浮かんだ。

「初心者向けに定番酒の魅力を紹介する本」を書いたら絶対に売れると思ったのだ。本屋で並んでいるお酒の本はどれもが「知られざる銘酒」といったものを紹介するものばかりだったからだ。確かにそういった銘柄はお酒好きが喜びそうなものであるが、その銘柄の中には、「これってどこで売ってるの?」と思うようなどこの酒屋でも見たことがないようなものも数多く紹介されていた。

本を見て、「このお酒が飲みたい」と言う気持ちになって町のスーパーやコンビニに買いに行っても売っていないものが多かった。本で紹介されている「知られざる銘酒」と実際に町のスーパーやコンビニで広く売られている銘柄は違うのだ。どこでも手に入りやすい銘柄。日常飲むのに買いやすい価格の銘柄。お酒の初心者はそういうものを知るべきだと思った。

それに、お酒の仕事に初めて携わる人の参考書にもなると思った。「これは絶対に売れる」そう思い原稿を書いた。さっそく、出版社に企画書とともに原稿のサンプルを郵送した。

しかし返ってくるのは断り状ばかりだった。「こんなにいいアイデアをなぜ出版社は断るのか?」とても腹が立った。しかも断り状には、なぜこの企画は駄目なのかという理由が書かれていなかった。それでもどこかの出版社は私のこのアイデアを理解してくれるはずだと思いどんどん出版社に郵送した。

ある日届けられた断り状を見て驚いた。そこにはなぜこの原稿は駄目なのかという理由が親切に書かれていた。

「お酒の本を買う方は、かなりのお酒好きです。そういう方が求めるのは、この本でないと知ることが出来ない珍しいお酒の銘柄の情報です。今回頂いた定番酒の企画は読者のニーズを満たすことが難しいと判断します」この言葉に目が覚めた。

私の企画は、お酒好きをターゲットから外していた。ターゲットにしたのは初心者であり、お酒の仕事に初めて携わる人だった。そう言った人には是非知っておきたい、知るべき知識を書いた。しかし、その内容はこの本でないと知ることが出来ない情報ではなかった。

知りたくなった時にネットで検索すれば簡単に分かる内容だった。自分にしか書けないものでもなかった。そう思うと、自分の原稿が魅力的に見えなくなった。私が書いた原稿はお酒の仕事をする人には知るべき知識なのだが、興味がわくような内容ではなかった。

無料で手に入る情報に何の魅力があるのか?そう考えると私の企画がとても未熟なものであることに気付いた。

「何でこの素晴らしい企画を理解してくれないんだ」そんな不満を感じるのは10年早かった。

 

f:id:robakuma:20190624153356p:plain

100円でお土産がもらえる場所で繰り広げられる集団心理誘導術を余すところなく書いた本です。

 

 

あやしい催眠商法 だましの全手口  身近な人を守るために知っておくべきこと

あやしい催眠商法 だましの全手口 身近な人を守るために知っておくべきこと