ありがとう熊さん

食品スーパーのおやじが、生き方について辛いことも楽しいことも含めて、心を込めて書かせてもらいました。

相手の何気ない言葉に神経をすり減らすことほど無駄な時間はない

「この仕事向いてないんじゃないの?」この言葉を聞いて多少なりとも心が痛まない人は少ないだろう。しかし、それほど酷い言葉ではないという考えを持つ人と、話をして考えさせられたことがある。

20代の私は5年間、工事現場の職人をしていた。2年目、3年目、4年目と年数を重ねれば重ねるほど、ある不満が大きくなっていった。同じ時期に入った人達、後輩が次々に小さいながらも現場を任せてもらえたり、私が簡単な仕事しか任せてもらえないのに対して難しい仕事を任せてもらえたりという姿を、沢山見てきたことに対する不満だった。

不器用な面があるのは事実なのだが、とても悔しく思った。一旦「こいつは見込みがない」と思われるとそこから難しい仕事のチャンスはなかなかもらえないものだ。しかも長年やればやるほど、「こいつは駄目だ」という目で見られているように感じた。どんどん後輩に現場が任されていく中で、自分の居場所がなくなるような気がして、辞める決意を固めた。

社長に連絡すると「そうか、もう嫌になったんだな」とあっさり辞めることを承諾してもらえた。寂しいものだ。問題はその後だ。会社には、社長の代わりに職人の仕事の割り振りをしている番頭がいてた。この番頭は、私よりも1つだけ年下だった。その番頭にも「辞める」と伝えた。なぜなら、仕事の割り振りをしているからだ。

すると、とんでもないことを言われた。この番頭は「分かったよ」と言った後に「お宅さん、職人に向いてないからな」と言ったのだ。とても余計なひと言だと思った。「お疲れ様」とか「寂しくなるね」とかそういう言葉を期待していただけに驚いた。しかし、辞めると決意した時点で、この仕事に対する未練を断ち切る気持ちを持っていたので、この言葉にやり合う気持ちはなかった。

その後、私をもっとも可愛がってくれた先輩の茄子さん(仮名)にも連絡をした。茄子さんは親会社の社員だった。しかし、私を、自分のところの後輩社員よりも可愛がってくれた。だから、私が仕事を辞めることをとても残念がった。そして、二人で飲みに行くことになった。

そこで私は番頭から言われた言葉に対する不満をぶつけた。「ものすごく酷いことを言われたんですよ」「へぇーどんな?」「『お宅さん、職人に向いてないからな』と言われたんです」すると茄子さんは「それのどこが酷い言葉だ?」私は愕然とした。私をとても可愛がってくれた茄子さんなのに・・・私と一緒に「それは酷いな」と怒ってくれると思ったのに・・・私の悔しい気持ちに共感してくれると思ったのに・・・まさかの

「それのどこが酷い言葉だ」

茄子さんは話を続けた。「お前が酷いことっていうからどれだけ酷いことを言われたのかと思ったけど全然酷くないな」そんなことはないと思った私は「例えば僕が入って間もない時に言われたのなら、まだ納得したかも知れないけれど、僕は5年間やってきたんですよ。おかしいんじゃないですか?」「いや、普通だろ。向いてないと言うのは日常会話だろ」私の気持ちを理解してもらえることが出来ずに残念だった。人それぞれ受け止め方が違うのだろう。

話は続いた。「それよりも職人辞めてなにするんだ?」「技術職はもういいと思ってるんで、今度は営業にチャレンジしたいと思ってるんです」「そっちの方が向いてないな」ここで、この前の番頭と同じような言葉が返ってきたのだった。

しかし、なぜか茄子さんに言われたら許してしまう心理が働いた。それだけ茄子さんのことを尊敬していたからだ。自分を可愛がってくれているという思いが伝わってくるからだ。

茄子さんと別れた後、考え込んだ。「お宅、職人に向いてないからな」番頭の言葉を思い出すたびに馬鹿にされたような気持ちでいっぱいになった。しかし、向いているか向いていないかを今から証明する事は出来ない。別の世界に行く事に決めたからだ。何気なく言った相手の言葉に神経をすり減らすよりも、次の世界で輝く方が大切だと思うようにした。

 

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近所に出来た100円でお土産が配られる宣伝会場。

そこで繰り広げられる高額商品を購入させる門外不出のセールストークを書きました。

騙される人が一人でも少なくなりますように。

 

あやしい催眠商法 だましの全手口  身近な人を守るために知っておくべきこと

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