ありがとう熊さん

食品スーパーのおやじが、生き方について辛いことも楽しいことも含めて、心を込めて書かせてもらいました。

以前の職場に先輩風を吹かしに行くと寂しい人と思われる

 かつてお世話になった先輩との再会はとても嬉しいものである。会わないでいる期間が長ければ長いほどその気持ちは強くなる。
 しかし、どんなにかつて仕事が出来ると周囲が認めていた先輩であっても、以前の職場に顔を見せる時には注意した方がいい事があることを知った出来事がある。
 賃貸不動産の営業をしていた時の事だ。入社して1年ほど仕事を教えてくれた先輩がいた。その人はかなり営業成績が良く、私にとって一番の目標となる人だった。
しかし、友人の会社の立ち上げを手伝うと言う理由で退社をしてしまった。私は一番の目標を失いとても悲しい気持ちになった。
 先輩が辞めて半年が経つ頃、営業所に先輩が遊びに来てくれた。私たちの顔を見に来てくれたのだ。とても嬉しくなった。先輩を知っている従業員全員が「懐かしいなー」「元気だったか?」と喜びの声をあげて迎え入れた。
それから先輩は時折「そばに寄ったついでだから」と遊びに来るようになった。
そんな時にお客様が来店され私が営業をすることになった。久しぶりに先輩の目の前で営業をすることに大きなプレッシャーを感じた。先輩の目の前で格好悪いところは見せられないと心臓の鼓動が早くなった。
結局、私の営業は不発に終わり契約に至らなかった。それを見た先輩は久しぶりに私にアドバイスをしてくれた。「もっとここはこうすべきだ」と理にかなったアドバイスだった。さらに先輩は私の机の上が散らかっているのも良くないと言ってきた。
 机の上が散らかっているのは「仕事が出来なくなる理由の一つだ」と言われた。
その先輩が帰った後、上司が私に言った。「あいつは何様のつもりなんだ」と。上司にとっては辞めた人間が先輩として後輩にアドバイスをするのが気に入らなかったようだ。
 さらに上司は、「あいつを出入り禁止にしようかな?」と言ってきた。これに対して「それは酷いんじゃないですか?」と言うと「冗談だけど、それぐらい余計なお世話と思えることを彼はしているんだよ」と言われた。
 さらに、先輩の顔を見せに来る回数にも問題があった。週に1回ほどのペースで、しかも、長い時間世間話をして帰るようになっていた。このせいで周囲から「暇なのか?」「寂しい人なのか?」と言われるようになっていた。
 明らかにみんなの先輩に対する姿勢が変わってきているように思えた。最初、半年ぶりに遊びに来た時はみんなから「良く来たな」と大きく歓迎されていた先輩が、今はみんなから薄い反応しかされなくなっていた。さらに、「部外者なのになんでこんなに頻繁に来るんだ」と思われるようになっていた。
 せめてみんなから「懐かしいなー」と言ってもらえる期間我慢出来ないものなのか?先輩風を吹かさずにいられないのか?
そう思うととても残念に思った。