ありがとう熊さん

食品スーパーのおやじが、生き方について辛いことも楽しいことも含めて、心を込めて書かせてもらいました。

暇な仕事では向上心を失わないように注意する

忙しすぎるのは嫌、暇すぎるのも嫌、しかしそんな贅沢を言ってられない時がある。勤め先の食品スーパーで。新店オープンの応援に呼ばれた。新店オープンはやる仕事が沢山ある。しかし大人数で応援に行くため、個人個人のやる仕事は分散される。私が担当したのは新規会員のカード受付だった。長机の前に一人で座り、会員になりたいお客様が来られた時だけ受付をする仕事だった。
普段忙しい店で仕事をしている私は喜んだ。なぜならこの仕事はとっても楽に思えたからだ。新店オープンだからお客様は多く来店される。しかし会員になりたいというお客様は時折しか来ない。その時折しか来ないお客様を長机の前に座り、ひたすら待つのが仕事だった。待っている間はとてものんびりできる仕事だった。そののんびりできることが私には嬉しかった。しかし、嬉しいのは最初だけだった。
退屈で頭がぼーっとしてきた。時折しかお客様が来ないからと言って、そこから動く訳にはいかない。まるで自分が置物になったような気持ちになった。「なにかすることはないですか?」聞いてみたら仕事をもらえた。チラシを折る仕事だった。しかしそのチラシも全部折ってしまった。あとは座ってるだけの時間が長く続いた。時間がとても長く感じた。私がここにいてる意味はあるのかと思った。
しかもこの応援は3日間あった。ほとんど体を動かしてないのに初日からとても疲れた。これは動かないことに対する精神的な疲れだと思った。二日目は私一人でなくもう一人の他店の社員と会員受付の仕事をすることになった。一人でも充分なのになぜ?と思ったのだが、新店オープンの大人数の応援でどの仕事も人手が充分に足りてるからだった。
しかし初日とは違い、話し相手がいるだけでも気が紛れた。お互いの仕事の情報を交換した。普段は他店の社員とゆっくり話す機会がなかっただけに、自分なりに得るものがあった。その中で最もためになったと思ったことは、彼の暇な仕事に向き合う時の心構えだった。
彼も私と同じで忙しすぎるのも、暇すぎるのも嫌というタイプだった。しかし、会社勤めでは暇すぎる仕事をするときもある。そこから動かずにじっと待つような仕事をする時がある。そんな時は向上心を失わないように注意しているそうだ。やることがないからと言って頭までぼーっとしてたら何の成長も出来ない。だからと言って今の受付の仕事は本を持ち込んだり、パソコンを持ち込んだりも出来ない。じゃあどうするんだと思った私に、彼は小さなメモを見せてくれた。会社で必要とされる資格の知識が書かれていた。まるでカンニングペーパーのようなものだった。
しかしいくら暇だと言ってもあからさまに勉強をすると白い目で見られる。だから頭の中で知識を高速で思いだすことによって知識を定着させるそうだ。休憩時間にテキストを読み、覚えるべきところをメモする。それを思い出すことで有意義な時間を過ごせるそうだ。3日目は彼のアドバイス通りやってみた。確かに暇でも自分を成長させることが出来ることを知った。