ありがとう熊さん

食品スーパーのおやじが、生き方について辛いことも楽しいことも含めて、心を込めて書かせてもらいました。

同じ給料で仕事量が多いのは大変ではあるものの居場所は広く確保出来る

「私はこれだけ仕事をしているのに、どうしてもっと給料が貰えないのだろう?」と疑問を持つことがある。
 出来高制の仕事ではなく、決められた給料で働いている時は特に周囲と自分を比べて納得がいかないことにストレスを感じることがある。
 とても繁盛している店に配属になったことがある。そこで体力に自信があった私は、どんどん仕事を任せてもらえるようになった。
 最初はそこにやりがいを感じていたのだが、しばらくすると、どうにも納得のいかない気持ちを感じるようになった。
 それは、同じ店に私よりも仕事量が少なく、のんびりしている先輩がいたからだ。
 頻繁に煙草休憩に行くので、その分、私に仕事が回ってきて、まるでその人を楽させるために自分は頑張っているのかな?と思うようになった。
 しかも、相手は先輩なので、言いたいことをぐっと我慢する毎日が続いた。
店長も、その先輩がのんびりしていることを知っているため、多くの仕事をその人に与えることをしなかった。
それでも、頑張っていこうと思ったのは、いつかは評価されて給料に反映されるだろうという期待があったからだった。
 しかし、その期待通りの待遇にならなかった。入社して数年経ち、確かに給料は多少上がったが、それ以上に不満を持つようになった。
 それは、のんびりしている先輩だけに対する不満ではなく、会社そのものに対する不満だった。数年、同じ会社に居ていると周囲の待遇が見えるようになったからだ。
 他の店はそれほど忙しくないのに同じ給料を貰っていると、周囲と自分を常に見比べて不満を持つようになった。
 ある日のこと、一人のアルバイトが愚痴をこぼしてきた。同じアルバイトなのに手を抜く人と頑張っている人がいる。なのに、同じ時給なのはおかしいというものだった。
 だからといって、時給を簡単に上げられるものではなかった。ギリギリの人件費の中では考慮できる時給の差は大きいものではないからだ。
 すると、アルバイトは、「頑張らない人の方が得をしますよね」と言ってきた。それを言ったらおしまいだと思った。
 仕事をしに来ている以上は、一人一人に最大限、頑張ってもらわないと、ただでさえ人手が足りないのにさらに人手が足りなくなるからだ。
 さらに、頑張らない人が増えると全員のやる気にも影響が出るだろう。だから注意したら、「冗談です」と笑ってすまされた。
 その後、自分はどうなのだろうと考えた。私はアルバイトと違って時給ではなく月給だけれども、あらかじめ決められた給料で働くということでは同じだと思った。
 口には出さなかったものの、「頑張らない方が得なのではないか?」と思うようになっていた。しかし、口に出さなくてよかったと思った。
 なぜなら、実際にそれを口に出したアルバイトと話をして、「なんて自分勝手な人間なんだ」と思ったからだ。私も、同じようなことを上司に言ったら、上司にそう思われただろう。 
 さらにやる気を失い、自分の成長にもつながらなくなっただろう。
頑張った分だけ給料が欲しいのであれば出来高制の会社に行くべきなのだろう。
 そうしないのは、自分の中に、決められた給料が欲しいという気持ちがあるからだ。決められた給料をもらえるのはありがたいことだ。
「自分はこんなに頑張っているのに頑張っていない人と同じ扱いなのはおかしい」と思えば思うほどストレスを感じる。
 しかし、給料は決められているのだ。頑張っている人には仕事が増える。それは大変なのだが、居場所は広く確保出来る。周囲から認めてもらえて自尊心も満足出来る。同じ給料でも頑張っている人の方が生き生きとした感じを周囲に与えることが出来るからだ。