ありがとう熊さん

食品スーパーのおやじが、生き方について辛いことも楽しいことも含めて、心を込めて書かせてもらいました。

頑張っても早く帰れない状況は早く終わらせようとする気持ちを失わせる

「壊し屋」の異名を持つ上司の下で働いたことがある。あまりにも多くの指示を出され、毎日が大残業になった。
ある日、私の後輩社員が、上司に明日しても良さそうなことを、「明日でもいいですか?」と聞いたことがある。その時上司は、いきなり声を荒げて、「オイ!そんなに早く帰りたいのか?」「仕事をなめてるのか?」と言った。後輩社員は上司の迫力に負けてしまい、「いえ、そんなことはありません」と返事をして大残業になった。   
 上司はなぜ壊し屋と異名を持っていたのか?その理由はずばり、部下が担当している仕事を後回しにさせ、次から次に膨大な量の仕事を与え、大残業をさせるからだった。
また、上司は私たち社員だけでなくアルバイトにも容赦なく、「次はこれやって、それからこれをやって」と、とてもシフト通りでは終わらないほどの無茶ぶりをしていた。
アルバイトが日常業務をしていると、「そんなのは後でいいから先にこれをやってくれるか?」と日常業務から外すのだ。その指示の多くは時間に余裕のある時にするような仕事だった。
上司が後回しにさせる日常業務は、基本的にその日にやって帰らなければいけない業務だった。アルバイトがそれをしなければ誰がするのか?それは社員である私たちになるのだ。それで業績が上がって使える人件費が増えるのならまだいいのだが、業績が上がらない上に手が回らない状況に陥ったのだ。
私が思うには、基本的な日常業務がおろそかになっているから業績が上がらないのだ。しかし、上司にはなかなか言えない雰囲気があった。部下の意見には聞く耳を持っていない威圧的なタイプだったからだ。
これにはみんな大きなストレスを感じるようになった。みんなにはそれぞれ担当する仕事が与えられていた。その人しか手を出さない仕事だった。しかし、それを後回しにさせられるのだ。そんな状況に耐えられることが出来ずに一人の後輩社員が辞めることになった。  
彼と最後に話したことはとても印象に残っている。
「どんなに頑張っても早く帰れないですね」と最後にぶっちゃけた話をしてくれたのだ。毎日、「次はこれ」「次はこれ」と無茶ぶりをさせられたある日、彼はプッツンしたそうだ。しかし、上司に直接怒りをぶつけることはしなかったのだ。表向きは従順に上司の指示に従っているように見せて裏では楽をしようとするようになった。
どのように楽をしようとしたのか?その内の一つを教えてくれた。彼は、定時後にわざと目立つような仕事を一つ残しておくようになったそうだ。するとその目立つ仕事というのは上司も、「さすがにこれはやって帰らなければいけないな」と思う仕事なので無茶ぶりが弱まったそうだ。
その仕事というのは、壊し屋上司が異動してくる前は、早く終らせて早く帰ろうという気持ちで、残すことなんて絶対にしなかった仕事だった。頑張ってもどうせ早く帰れないという気持ちがそうさせてしまったのだ。頑張ったら報われる。そんな気持ちがない時になかなか力が出るものではない。結局、頑張っても早く帰れない状況は生産性が落ちるものなのだ。