ありがとう熊さん

食品スーパーのおやじが、生き方について辛いことも楽しいことも含めて、心を込めて書かせてもらいました。

「言ったのにやってくれない」は「私には指導力がありません」と同じ言葉である

私は若い頃から言い訳が多かった。食品スーパーで社員として働いている私は、アルバイト、パートに指示を出していかなければならない。指導をしていく立場だ。しかし、店は忙しく自分の仕事だけで手がいっぱいだと思った。なかなか人に指示をだすような余裕がないように思った。上手く仕事を割り振れないためにするべき仕事が出来ていない状態になった。それを上司から指摘された私が良く言う言い訳が「あれ?言ったんですけどね」と責任を誰かに押しつけることだった。その言ったということは随分前に言ったことであり、今はそのことが相手の頭の中にはないことだとしても一回言ったのだから私は言ったことになる」そのような気持ちでいてた。それが知らず知らずに癖のようになっていた。しかし、それはとても自分にとって損な言い訳だったことに気付いた。

ある日、本部の課長が店舗視察をしにきた。毎月、定期的に店を視察する事によってその店の改善点を指摘するのが目的だった。そして、いくつもの改善点を指摘された。そのほとんどが前月に指摘されたことと同じだった。

課長は「前月指摘したことを覚えていますか?」私は、「ハイ、ご指摘頂いたことはみんなに伝えました」と答えた。

すると課長は「それなのに出来てないところが多いですね。例えば、レジの人のネイルは禁止するように伝えたはずなのにまだしている人がいるのはどういうことですか?」と言われた。私はいつもの癖で「あれ?言ったのに、おかしいですね?」と答えた。これに対して課長はカミナリを落とした。

「言ったのに出来てないというのはおかしいですよ。本当に言ったのですか?本当に言ったのに改善してもらえないのはとても恥ずかしいことですよ。なぜだか分りますか?」これに対して答えられない私に課長は話を続けた。

「言ったのにやってくれないと言うのは私には人を指導する力はありませんと言ってるのと同じです。そんな人に会社が出世をさせることはありません。そんな人を出世させても、言ったのにやってくれないという状況を作るだけですからね。言ったのにやってくれないと言うよりも、言うのを忘れていましたと言う方がまだましです。言うのを忘れていたのなら、言えばやってくれるという可能性があるからです。言ったのにやってくれないと言うのは普通ではありません。普通は言ったらやってくれますよ。伝わってなかったと言うなら別ですが、一回言っただけで、言うのをやめていませんか?一回言ってだめなら二回、三回としつこいぐらいに言わないといけません。しつこく言うことで、人は動くのです。やってくれるのです。それでもやってくれないのはよほどの事です。そんな人を面接で採用しているとは思いません」

上司の言葉に反論出来なかった。一回言っただけで伝わったと思いこんでいた私に非があることを知った。

今まで「言ったのにやってくれない」と言う言葉を都合よく使っていた。しかし、他人に責任をなすりつけてるつもりが自分の評価を下げていることに気付いた。その言葉は出来てない理由にならない。都合のいい言い訳に過ぎなかった。