ありがとう熊さん

食品スーパーのおやじが、生き方について辛いことも楽しいことも含めて、心を込めて書かせてもらいました。

仕事に対する数字を意識し、分析出来れば工夫と成長につながる

数字を意識するのは苦手だ。センスと勢いだけでなんとかなる。若いころの自分はそう思っていた。数字を気にする人よりも、勢いのある私がいい結果を残すこともあった。考えている時間があればその分を行動に移すべきだ。その方が何にしても前に進むことが出来ると思っていた。

そんな私が食品スーパーで働き出した。私がいてた店はかなりの繁盛店で売上の数字がとてもよかった。私はこの原因をとにかくがむしゃらに動いているからだと思っていた。数字を考える暇があったら、とにかく急いで商品を出したかった。出せば出すほど売れていくように思えた。そのようながむしゃらな気持ちで頑張ってきた結果が店が好調な理由だと思っていた。

勤めだして3年が経った頃のある日、本部の課長が視察に来た。店長が公休のため私が対応する事になった。本部の人が視察に来た時は必ず聞いてくる質問があった。その日の売上目標と、今月はどれだけ売上目標を達成できているかだった。その日も同じように聞かれた。私は待っていましたとばかりに答えた。いつも聞かれるから答えられる準備をしていたからだ。だがこの日は違った。

「それでは冷凍食品の売れ筋の上位10位までの商品名を答えてください」

「焼酎の売れ筋の上位10位までを答えてください」

私は答えられなかった。そんなものを知らなくてもどんどん売れている状態から商品を発注しておけば売り切れることはなく売上も落ちることがないと思っていたからだ。しかし答えられないことに対しては素直に謝った。

課長は言った。「この店は大変売上の数字がいいと思う。しかし、もっともっと売れる店だと思う。今は勢いだけで売っている様に見えるからだ。もちろん勢いはとても大事だ。しかし、そこには工夫や成長がない。数字を意識せずにただ漠然と働いていては5年経っても10年経っても、成長は出来ないだろう。しかしきちんと数字を意識していれば、売り場を工夫することが出来る。その工夫が成長に繋がるんだよ」この言葉に反論した。

「数字を意識している社員よりも私は結果を出しているじゃないですか?勢いだけと言いますが勢いが一番大事だと思います」この言葉に課長は怒った

「じゃあ君の勢いが具体的にどれだけ数字に影響を与えてるか答えられるのか?」

「それは・・・」と言う私に「具体的に数字で説明出来ないと頑張りが評価出来ないんだよ」と課長は言った。

その後、友人にこのことで愚痴を言った。「なんでみんな数字数字って言うのだろう?」友人は答えた「好きだからだと思うよ。自分も好きなものは数字を意識するからね。君は釣りが好きなんだろ?だからいつもメジャーを持っていて魚の大きさを気にしてるだろ?」友人の言葉に「あっそういうことか」と思った。

私は数字を意識するのが苦手なんかじゃない。数字を気にするほど仕事を好きになってなかったんだと気付いた。