ありがとう熊さん

食品スーパーのおやじが、生き方について辛いことも楽しいことも含めて、心を込めて書かせてもらいました。

黙ってサービス残業をすると上司に「なぁんだこの人数で大丈夫なんだ」と思われる。

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サービス残業労働基準法違反です。

サービス残業は賃金の発生しない時間外労働のことです。雇用主がその立場を悪用し、労働者に強制するのは違法行為であり、労働基準法には、6か月以下の懲役、または30万円以下の罰金に処すると定められています。

では、従業員が勝手にやっているサービス残業は違反なの?

このケースで問題になるのは、見て見ぬふりをしているかどうかなのです。見て見ぬふりをするということは直接命令をしていなくても、黙認しているということで、それに対して賃金を支払わないことは違反行為です。

勝手なサービス残業をやめさせるのは意外と難しい

私の勤め先の食品スーパーでは、完璧主義者で、細かい所までこだわり、与えられた時間内では満足出来ずにサービス残業をしていたアルバイトのA君がいました。

彼に、「サービス残業労働基準法違反だからやめてくれ」と言ってもなかなか聞き入れてくれない時期がありました。

しかし、その彼がサービス残業をしなくなったきっかけがあります。

この出来事は同じく従業員の勝手なサービス残業に悩まされている人たちの一つのヒントにもなるのではないかと思い記事にしました。

きっかけは、新しく異動してきた店長にありました。

新しく異動してきた店長は売り上げに対して人件費をかけ過ぎているうちの店の現状を変えようとしました。つまり人件費を削ったのです、これに、A君が不満をぶつけてきました。

売り場がボロボロになってお客さんが離れる。

A君「こんなに人の数を減らされたら手が回りませんよ。このままでは売り場がボロボロになってお客さんが離れていってしまいますよ」

人の数が減らされて一人一人の負担が増えているから当然不満は出るだろうとは思っていました。

なので私は店の苦しい現状を話しました。

「大変だけど、今までの人件費だったら利益がでなくなるから仕方がないんじゃないかな?売上に対してこれ以上かけられない人件費ってもんがあるんだから、その目標とする数字に人件費を抑えるには単純に売上を上げるか人件費を削るかしないといけないだろ?」

この私の言葉にA君は、「でも、前の店長はどちらかと言うと人件費を削るよりも頑張って売上をあげて人件費を削らないようにしてたのに、今の店長は人件費を削ることばかり考えてますよね?」と新たな問題点を指摘してきました。

「あの店長は、この店のことを分かってないんですよ」とA君は言いました。

つまり、今の店長は店のことを理解していないから人件費を削っているのではないかということです。確かに、今の店長は異動してきたばかりだから店の現状(従業員の能力やお客さんの流れ)を正確に把握している訳ではありません。

しかし、その異動してきたタイミングで近くにライバル店が出店してきて売上が若干落ちているのです。本部の計らいで競合店対策でチラシをうち、競合店の価格対策もしていますが、それでもお客様は若干少なくなっています。

だから人件費を今までの様にかけられないのは仕方がありません。

しかしA君は「競合店が近くに出来たのなら、なおさら店をいいい状態に保って行くべきではないのですか?」と人件費を抑える守りの姿勢よりも責めの姿勢の方がいいということを言ってきました。

しかし、人件費を削ったのは店の責任者である店長の判断で行われているのです。まずはそれに従うべきではないかと私は思うのです。そして今回もっとも人件費で削られたのは閉店後の時間です。

今までは閉店後2時間アルバイトを使っていましたが、店長の指示で1時間に減らされました。 A君達アルバイトは、今まで2時間でやっていた仕事を1時間でやらなければいけなくなったのです。

2時間でやっていたことと同じことを1時間で出来る訳がありません。

どこかで妥協点を見つけて明日に出来る仕事は明日に回す割り切った動きをしないと時間を短縮なんてできません。

この妥協を最もきらうA君の性格を知っていた私は「今までと同じように完璧にしたい気持ちがあってもタダ働きはしないでくれよ」と先に釘をさしました。

「タダ働きでいけてる状態にしても本当の意味ではいけていないんだよ」

と、先にそれを言っておかないと彼はサービス残業をしてでも今までと同じように気の済むまで遅い時間まで残ると思います。勝手な残業は適性な人件費を考える上で障害になります。

だから、「A君が勝手な残業をして今まで通りの仕事を閉店後にしたら店長は『あっこれで全然いけるんだ』と思うだろう」と言いました。

店長は店全体の数字を考えた上で判断をしています。

だから、今までと違うやり方を取り入れているのです。だから、まずはそのやり方に従って、もし、どうしても無理だったら、その時に元のやり方に戻すかどうか考え直してもらったらいいと思いました。

そして、結果どうなったかというと、彼がサービス残業をしなくても妥協点を見付けて問題なく売り場はそこそこ維持出来ています。

サービス残業をしなくなった決め手は?

まじめで働き者な性格の彼は、サービス残業を禁止した私に最初反発していました。しかし、決め手はサービス残業がもたらすことによる新しい店長への影響を理解してくれたからです。その影響とは・・・・

サービス残業をされると適正な人件費を考える上で障害になるということです。

 

同じ仕事ばかりで嫌になっている従業員に褒めても納得してもらえない。

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「もう、やってられない」

仕事には、収入が低い、いじめがある、ブラック企業である、と様々な悩みが存在しますが今回は、自分の立ち位置に対する不満に考えさせられた出来事です。

私が勤める食品スーパーでは、従業員から様々な仕事に対する不満を聞くことがあります。その中でも多いのが、「私がやりたいのは〇〇なのに・・・」です。

先日の事です。ある一人のパートさんが、レジでの打ち間違いや、お客様とのトラブルが重なったため、一旦レジの仕事から離れて品出し(商品を補充する仕事)を中心にしてもらうことになりました。

そのために他のパートさんの仕事がレジ中心になりました。

仕事の分担上、仕方がないことですが、これに対して一人のパートさんが愚痴をこぼしました。

 

「もう、あの人のせいで私、ここのところずっとレジばかりですよ」と。


その気持ちは分かるのですが、レジはお客様の対応が出来る人でないと務まりません。だから私はこのパートさんの愚痴にこう答えました。

「〇〇さんはレジを任せていて安心だからですよ」

「金額の違算もめったにないし、お客様の対応も良いし」

「つまり出来る人だからレジをしてもらっているんですよ」と。

私がなぜこのような事を言ったかと言うと、その仕事は評価が高い素晴らしい仕事だということを分かってもらうことで、「レジばっかりさせられると不満を持つのではなく、レジを任せられて嬉しいなと言う気持ちに切り替えてもらいたかったからです。

しかし、私の気持ちとは逆にパートさんは・・・

「ある意味、出来ないと思われた方が得ですね」と言われました。

この考えは多くの方が一度は考えたことのある事でしょう。「ある意味、出来ないと思われた方が得ですね」とパートさんが言う通り、出来ない人には仕事を頼みません。

不本意な仕事をさせられたくなければ、出来ないふりをした方が得策ではないかということででしょう。

しかし、その考えた方を人に言うことは自分の評価を落とすのです。

なので、「それは駄目でしょ?」と私は言いました。するとパートさんは「まあ、そんなことはしませんけどね」と、笑いながら冗談っぽくすませました。 私はかつての自分のことを思い出しました。

私も昔、パートさんと似たようなことを口にしたことがあります

食品スーパーの社員として、やるべき仕事内容は多いのですが、ずっと同じ仕事内容でした。そんな私は周囲に大きな不満を持つようになりました。

今、私がしている仕事を他の人がやってくれたら自分は他の仕事が出来るのに・・・

今回のパートさんと違う点は、パートさんは同じ時給ならもっと簡単な仕事をしたいという気持ちですが私の場合は、もっと難しい仕事をして自分を生かしたい という不満です。私は我慢出来ずに上司に言ったことがあります。

私 「なんで同じ仕事ばかりなんですか?」

上司 「それは仕方がないだろ?」

私の訴えは流されました。代わりに、「自分勝手な人」「我慢出来ない人」として評価が下がりました。

「それを言ったらおしまい」「言わなきゃよかった」という気持ちになりました。上司にはもっと自分の気持ちを理解してほしかったのですが、「お前は経営者じゃないだろ?自分で仕事内容を決められる立場じゃないだろ?」と言われました。

ずっと同じ仕事ばかりさせられる不満。そんな不満を上司は聞いてくれると思っていました。「それじゃやってみる?」と望む仕事が与えられることを期待していました。

しかし、「それを言ったらおしまいだな」 と言う気持ちにさせられました。そんな私の悔しかった気持ちを思い出して、あることに気付きました。今回のパートさんの愚痴に私の対応は、がっかりさせてしまったのではないか?と言うことです。

シンプルに相手の求めているものを考えると・・・

「私はずっとレジばかりさせられている」と言うパートさんの不満。それに対して私は「それは、あなたが出来る人だから」と評価することで不満を解消してもらおうとしました。

しかし、それは私の気持ちの中に、「いちいちみんなのあれがしたい、これがしたいと言うことなんて聞いてられない」というものがあったのです。

だからパートさんは、「ある意味出来ないと思われた方が得ですね」と皮肉の様な言葉を言ったのでしょう。

評価よりも気持ちをくんでもらいたい

パートさんは私に

「そうだよね。しんどいよね」

「出来るだけ負担を軽く出来るように見直してみるから」

「〇〇さんの気持ちはちゃんと聞いたよ」

「時給の見直しもするね」

と気持ちをくんでもらいたかったのでしょう

限られた少ない人件費で営業している会社では、個人の「あれがしたい、これがしたい」に対応が出来ないことも多くあります。

しかし、そんなことは誰もが十分に理解をしています。自分の要求が全て通ることはありえないと思っている中でも、少しは自分のことを考えてもらいたいというのが本音でしょう。

同じ仕事ばかりで嫌になり、我慢の限界で上司に相談をすることがあります。そんな時には上司はなんとかその仕事に対して納得をしてもらいたくなります。

なので、「同じ仕事をしてもらっているのは、あなたが出来る人だからですよ」と褒めることで納得してもらえるのではないかと考えがちです。

しかし、そのように褒められても、評価されても、「いや、私が求めているのはそうじゃない」と思われるのです。

つまり、従業員から不満をぶつけられた時は、気持ちをくんであげられるかどうかで上司としての価値がきまるのではないかと気づかされた出来事でした。

簡単に出戻りを考えるのは巣立ちを温かく見守った親鳥の気持ちを無視する行為である

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戻ってきてくれたことは正直嬉しいと思うけれど・・・

食品スーパーのおやじです。さて、皆様は一旦辞めた会社にもう一度戻ってくる出戻りについてどう思われるでしょうか?

私は恥かしくないのかな?と個人的に思っています。 私たちの会社にも出戻りの社員やアルバイトがおります。

その中には、かつての部下だった男の下で働くことになった元店長もいます。その様なケースを見ると、出戻りはかなりの覚悟が必要だと思います。

なので「私には出戻りは無理だな」と思っているのですが、他人の出戻りに関しては否定するつもりはありません。出戻りの方には「懐かしい」と喜んであげるようにしています。

懐かしい人との再会は正直嬉しい気持ちがあるからです。しかし、出戻りしたくても周囲がそれを許さないケースもあることを知った出来事があります。

5年前、ある一人のアルバイトの送別会でのこと

5年ほど勤めてくれたアルバイトにみんなで送別会を開きました。その時の彼の挨拶です。

「前の会社を辞めて、ここでアルバイトをしたきっかけは次の就職が決まるまでのつなぎのつもりでした。しかし、店の人がとてもいい人ばかりで、居心地が良過ぎていつの間にか何年も経ってしまいました」

「気づいたら20代後半になっていて、このままではいつまでもアルバイトのままで、自分は変わらないと思いました。なので、いつからでも次の職場で働き始められる状態で正社員の職を探したいと思いました。皆様には大変お世話になりました」

つまり、アルバイトを辞めることで「いつでも動ける状態」になることで、有利に就職活動をしたいということです。 彼の決意を聞いて、みんなで「がんばれ」と拍手して送り出しました。

彼は初対面の人にもしっかりとした印象を与える雰囲気があったので、本格的に就職活動をしたらすぐに正社員の仕事は見つかると誰もが思っていました。

しかし、その2ヶ月後..・・・店長に彼から一本の電話が・・・

その当時の店長に彼から連絡があったそうです。「戻りたいんですけど・・・」と。そのことで店長に「熊さん、どう思いますか?」と聞かれて私は正直な気持ちを言いました。

「この前、送別会を開いたばかりですよ。戻ってくるの早すぎないですか?」私の言葉に店長は「僕もそう思って、『お前はそれでいいのか?』と聞いたんですけど彼は『色々考えた結果です』と言ったんですよ」と電話でのやり取りを教えてくれました。

ちなみに彼はとても頼りになるアルバイトでした。慢性的な人手不足である私達の職場で彼が戻ってくるのはとても助かることです。しかし、店長の心にも私の心にも何かが引っ掛かりました。

「俺達はそれでいいけれど、あいつはそれでいいのか?」と。「そしてみんなはどう思うのか?」と私たちは彼と仲が良かったパートさんに聞きました。すると・・・・

驚きの表情で言われました。

「え⁉あれだけみんなで応援したのに・・・」パートさんにとって彼に対する思いは、巣立ちを見守った親鳥のようなものだったのでしょう。

パートさんは彼の出戻りに反対の意見を言いました。彼の出戻りは彼の就職活動を応援したみんなの気持ちを考えると受け入れるべきではないという考えです。

さらにパートさんは「そんなに簡単に戻れるものなの?」と言いました。みんなの意見はほぼ一致しました。彼の出戻りは断るべきだと。

そして店長は彼に断りの電話をこのように入れました。

「今、お前を受け入れる訳にはいかない。そもそもちゃんと就職活動したのか?諦めるのはいくらなんでも早すぎるだろ?みんなの応援している気持ちを大事にしないといけないだろ?本気でやって、どうしても無理だったらもう一度相談しに来い」と。

しばらくして、彼が職人の会社に勤めだしたことを知りました。そして相変わらず人手不足で苦しんでいる私たちは「あいつ戻ってきたら助かるのにな」と勝手なことを言い合うオチがついたのでした。

それから5年ほどが経ちました。現在彼は・・・・

髭の似合う立派な職人になっています。先日、店に久しぶりに顔を出してきました。

今は正社員の職人として頑張っているそうです。かなり久しぶりに会ったので「今の会社で勤めてどれぐらいになるの?」と聞くと「4年か5年ぐらいだと思います」と言っていました。

月日の経つのは早いものだなと思いました。その4年か5年の間に随分と彼の風貌が男らしくなったように感じました。髭を生やし、いかにも職人らしい顔つきになっていました。 やっぱり男は就く仕事によって顔つきが変わってくるものだなと感じました。

彼が職人として立派に働いていることを知り、あの時、みんなで出戻りを断って良かったと思っています。みんなの期待通りに彼が就職出来て、今も活躍していることは嬉しいものです。

彼の出戻りを断ったのは・・・

彼のことがみんな好きで、頑張ってほしかったから。
彼は真面目で働きものなので必ず正社員の仕事が見つかるとみんなが信じたから。

この気持ちが大きかったからだと思います。