ありがとう熊さん

食品スーパーのおやじが、生き方について辛いことも楽しいことも含めて、心を込めて書かせてもらいました。

「こんなこと言ったら嫌われるかも?」と人に注意出来ない私の背中を押した先輩の言葉

「本当にちゃんと言ってくれるんですか?」


食品スーパーの社員として、アルバイト・パートから様々なお願いをされることがあります。その中でも私が苦手なのは,「あの人に注意してください」と言われることです。

なぜそのようなお願いをされるかというと、従業員一人一人には、仕事に対する温度差があり、一生懸命全力で取り組んでいる従業員の目には、そうでない人の姿がよく見えます。

なので、「私がこんなに一生懸命に頑張っているのに、あの人は手を抜いている」と不満に感じるのでしょう。ですが、不満に感じていても直接言うのはためらうようで、
それは、それぞれの立場があるからでしょう。

社員が上司に注意しにくいように、アルバイト・パートさんにも、年の差や先輩・後輩といった上下関係があり。言いにくいことがあります。

そんな時に私に相談してくるのですが、彼ら・彼女らから見ると私がちゃんと注意しているかどうか不安になるようです。

「そんな優しい言い方で本当に伝わるんですか?」

職場での私は、どちらかというと穏やかで優しい口調で話をするようで、その口調では・・・

「相手を正すことは出来ないんじゃないか?」

「そんな優しい言い方で本当に伝わるんですか?」

と心配されることがあります。確かに心配になる気持ちは分かります。なぜなら私はこのように注意することがあるからです。

ヘビースモーカーの新入社員との思い出

その新人君は、それはそれは煙草が大好きな男でした。彼が煙草に使うお金は月に2万円。彼にとって煙草は生きる喜びなんでしょう。

その彼に仕事の指示を出す私。

「次はあれをやって、これをやって・・・」

すると新人君は・・・

「あっその前に煙草行っていいですか?」

人が教えている最中なのに・・・(涙)

でも、彼の気持ちを考えてあげるべきか?

しかし頻繁に煙草を吸いに行かれても困るよな。

でも、私は煙草を吸わないから彼の気持ちは分からないし・・・う~~ん。
彼は煙草なしではやっていけなさそうなタイプだし・・・う~~ん。
そのように注意すべきかしないべきか悩みました。

私の背中を押したアルバイトの言葉

「あの人煙草に行き過ぎですよ。注意したほうがいいですよ」と一人のアルバイト君が言ってきました。

他の従業員も決められた休憩時間以外は煙草を吸うのを我慢しています。彼だけ好きな時間に行かせると周囲の不満が大きくなるでしょう。
「よしっ」と思い立ちました。

みんなの気持ちを考えて注意する私。

私「そこは控えた方がいいよ」
新人君「あっハイ」
彼の表情が一気に曇りました。

笑いでフォローする私。

「別にトイレを我慢しろと言っているわけじゃないよ」
と腰をクネクネしながら言いました。

「あ~~ん漏れちゃう」という感じのクネクネした動きです。

そのコミカルな動きに「はははは・・・」と笑いがおきました。
笑いでフォローしたのです。
曇り空を晴れにしたかったのです。

いかがでしたでしょうか?

私自身が後で思い起こしても「なんだか頼りない注意の仕方だな?」という印象をもちました。
「もっとビシッと注意出来ないものかな?」
と歯がゆい気持ちになりました。しかし・・・

注意の仕方を考える前に、もっと大事なことがあります。

どのように注意しようかと考える前に、心の中で持つべき大事なこと。それは一歩踏み出す勇気です。以前の私は今よりも「こんなことを言ったら嫌われるのではないか?」という気持ちにとらわれて注意そのものから逃げていました。


そんな時にある先輩から・・・

「注意の仕方なんてそれぞれでいいよ」
「伝え方なんてものは人それぞれで真似できるものではないんだよ。それよりもまずは自分のやりやすい伝え方で伝えることが大事なんだよ」と教えられたことがあります。

私はこの先輩の言葉を今でも大事に心の中で持っています。もっとビシッっと注意したほうが良いと頭では分かっているのですが、実際に注意すべき相手を目の前にすると気が引けてしまうことがあります。

それでも、それぞれのやり方で、まずは注意することが大事だと思います。たとえそれで相手に改善が見られなかったとしても「前にも言いましたよね?」と言えるのですから。

そして、あとで思い起こすことによって、「次はもっとこのように伝えよう」と反省をし、改善することが出来るでしょう。

「そんな優しい注意の仕方で相手に伝わるんですか?」
という従業員の心配に対して私が思うことは。ものの言い方、伝えるときの雰囲気は人それぞれで真似しにくいものです。

実際に相手を目の前にすると頭で思い描いていたこととは違う気持ちが揺れ動くときもあります。

しかし、最も大事なことは一歩を踏み出すことです。たとえそれが周囲から優しすぎるんじゃないか?と思われてもです。その一歩が次につながります。

この記事を読んでいただいている方の中には私のように、人に注意するのが苦手という方がおられると思います。

どのように注意しようかな?と注意の仕方を考え込んでしまい、結局、やっぱり今回はやめておこうと注意することから逃げてしまいがちな方もおられると思います。

そんな方の少しでも参考になれればと思います。一歩踏み出す勇気がほしい時は、ぜひ私が先輩から教わった言葉を心の中で唱えてみてください。

「注意の仕方なんてそれぞれでいいよ」

きっと、勇気ある一歩を踏み出せられると私は思います。

「好きでやってますから」と自らサービス残業をする従業員に考えてもらいたいこと

20代前半のころ先輩にかけられた言葉で、今でも心に染み込んでいるものがあります。それは・・・

「仕事よりも体のほうが大事だぞ」と言われたことです。

その当時の私は仕事にかける気持ちがとても強く、大事なものを見失いそうな状態でした。

今の仕事で認められたい。休んでいる場合じゃない。無理してでも頑張ることが自分を大きく成長させるという思いが強く、どんなに体が辛くても弱音を吐かないことが美徳だと思っていました。

そんな私に原因不明の痛みが襲ってきました。

その痛みは睾丸が急に赤く腫れあがったことから始まりました。最初は大したことはないだろう、すぐに治るだろうと軽く考えていたのですが、次の日、また次の日と悪化していき、その痛みに耐えるため顔から汗が出てきました。

「おい、それは病院に行ったほうがいいんじゃないか?」

と先輩に言われましたが、抱え込んでいる仕事のことが気になり、どうしようか悩みました。そんな私に先輩は、「逆にそんなつらい状況で職場に来てもらったら困るから行けよ」と言ってくれました。そして病院に行くと・・・

「危なかったですね。もう少し病院に来るのが遅かったら睾丸摘出でしたよ」

と病院の先生に言われました。原因は菌による炎症でした。ちなみに性病ではありません。それから仕事は3日休み、抗生剤入りの点滴治療を行うようになりました。

職場を休んでいる間、仕事のことが気になり仕方がなかった私に先輩は電話をしてきました。

「仕事よりも体のほうが大事だから絶対に無理するな」

体が大事なことぐらいは分かっている私ですが、そうして人に言われることで気持ちよく治療に専念できました。

病院のベッドで横になりながら点滴をしている時間、様々なことを考えました。この抗生剤入りの点滴は抜群に効いたようで、痛みが和らいでくるのが実感できました。

点滴に入っている抗生剤が体に染み込んでいくように、私の心の中に仕事を休めという先輩の優しさが染み込んでいき、心も体も温かいものに包まれました。

そんな私が、かつての自分のように必要以上に頑張ってしまう従業員について、改めて考えさせられたことがあります。

私が他人の個性の中で苦手なもの

私は完璧主義者が苦手です。それは椎茸と同じレベルだと思います。

私の職場にいてた完璧主義者

自分の担当している仕事を完璧にしたくて休日もただ働きをしにくるアルバイトのこだわり君

完璧でありたい気持ちが休むことを拒否しているようでした。

任された仕事は完璧にこなしたい。休んでいる場合じゃない。

分かるような分からないような。私なんて1分でも3分でも早く帰って寝たいのに(涙)

心配の声をかけた私

「せっかくの休みなのに」

「好きでやってますから」

しかし、聞く耳をもっていないようでした。

「みんな心配してるんだよ。休まなきゃ体を壊しちゃうよ」

「大丈夫です、楽しんでやってますから」

お金のためとは別の自己満足したいがための行動に疑問をもつ私

こっちは心配をして声をかけているのになんなんだ。お金のために働いている私と違う生き物なのか?」

見過ごせないサービス残業にその都度注意する私

「ただ働きは会社としても問題なんだよ」

「あと3分だけさせてください」

しかし、何度も注意するのは大変なストレスでした。

いったい何なんだ。私の言葉は彼にとって、正義を踏みにじる悪の言葉なのか?

しかし、何事も状況というものは不変ではありません。

そんな彼が風邪をひいた。ずいぶんしんどそうだ。おいおい、まだやるのか?

無理は禁物ということを伝える私

「無理したら駄目だよ。仕事も大事だけど、体はもっと大事だよ」

「ありがとうございます」

意外と素直に聞いて早めに帰ってくれた彼に思うこと

普段は頑固なくせに意外と素直に聞いてくれた。

いたわりの言葉は体が弱り切った時

すーーーーと入ってくるのだろう、そう、」すーーと。

すーーと染み込むんでしょう

素直に聞いてくれた彼ですが一言だけ、不安な気持ちをぶつけてきました。

「心配で仕方がありません」と。

気持ちは十分に理解できます。自分がいなくて大丈夫なのか?休むことで周りに迷惑がかからないか?という気持ちです。

もちろん、一人が休むと他の人の負担が大きくなりますが、それはお互い様です。心配だから無理をする気持ちは分かりますが、それが本当に他者の気持ちを考えた上での行動なのか疑ってみることが大事です。

必要以上のがんばりは周囲に余計な気をつかわせる。

任せられた仕事をきっちりしたい。しかし与えられた時間内では満足にできない。かといって限られた人件費の中で自分に与えられる時間だけを増やしてもらうのは難しい。そんな時に・・・

「休日出勤・サービス残業をしてでもやりきりたい」

という気持ちが生まれます。しかし、それがどうしてもしておかないといけないことであれば周囲の納得も得られやすいのですが・・・

自己満足での必要以上のサービス残業は周囲に余計な気を使わせます。

「あの人があそこまで無理をしているのなら私も無理しなくちゃいけないのかな?」

「与えられた時間しか働かない私って、そうじゃないあの人よりも頑張ってないのかな?」

といった気持ちが周囲に生まれ、過重労働につながります。

なので、サービス残業については、「好きでやってますから」と言われても無視することが出来ない問題だと思います。

「好きでやってますから」と言う言葉は、いかにも自分個人だけの問題に聞こえがちですが、自己満足でのサービス残業は、周囲の人を巻き込む問題につながると思うのです。

 

「どうしてあなたたちの意見は批判ばかりなのですか?」と上司に言われて気づいたこと

「どうしてあなたたちの意見は批判ばかりなのですか?」

私が勤める食品スーパーでは月に一回、役職別に本部で会議が開かれます。販売促進のための会議です。

各店の社員が店での取り組みについて発表し、それについて上司から順番に意見を求められます。

ある日の会議での出来事です。その時、発表した社員の取り組みがあまりにも、つっこみ所の多い内容でした。そこで意見を求められた私たちは・・・

ここも駄目、そこも駄目と、駄目出しばかりの意見を言いました。

これに対して上司は「どうしてあなたたちの意見は批判ばかりなのですか?」と言いました。

「意見を求められたら、いいところと悪いところ両方探してください」

さらに上司は「意見を求められたら、いいところと悪いところ両方探してください」と話されました。

その理由は・・・

同じ会社の仲間であり、仲間が一生懸命に取り組んだ内容だからです。悪い点ばかりが目に付くのは仕方がないとしても探せば、評価できる部分はあるはずです。

まずは、いい点も悪い点もバランスよく意見してください。それが結局意見する人の力になります。いい点を伸ばし、悪い点を改善する力が身につきます。

この上司の言葉を聞いて・・・

確かにそうだなと思った私。同じ職場で働く以上、相手の悪いところばかりを指摘するのではなく、相手が頑張ったことに対するねぎらいの言葉や、良い点も見つけてあげるのは、一つの思いやりだと思います。

そんな気持ちでいてた時の、あるエピソードがあります。

長期休養していたとても頼りになる従業員が戻ってきました。

一年ぶりに戻ってきた、ある事情で休んでいたパートさん

調子のいい言葉で迎え入れる私

「寂しかったよ」

「またまた、うまいこと言って」

休んでいる間パートさんは・・・

「熊さん、実は私ね、一年間休んでいる間にね」

「店の前を通るたびに、あぁこの店は私がいなくても全然大丈夫なんだって、なんだか寂しくなっちゃってね」

職場にいけないことを不安に思っていました。

「ははは、そんなの気にしすぎですよ。相変わらず面白い人ですね」

それに対してパートさんは、にっこり笑顔で返しました。

そんなパートさんの個性とは?

とってもお登りさんです。

認められるのが大好き

褒められるのが大好きなお登りさんです

「見て見て、熊さん、私が一人でやった売り場、ばっちりでしょ」

自分が仕上げた売り場で、さっそく高い評価をもらいたいようでした。

私は思いました。「確かに上出来だよな。でもあとここだけを直したら完璧だよな。よしっ」と。そして・・・

「うわぁー、惜しい、あとここだけ直したら100点ですよ」と改善点を「惜しい」と表現する私

「えー、100点だと思ったのに」

ちょっぴり残念そうなパートさん。

100点をとる難しさ。

「そう簡単には100点はあげられないですよ。でもね・・・」

「その明るさは100点満点ですよ。はははは・・・」

良いところは評価したいものです。

やる気が倍増する「惜しい」のもつ力

人は、あと少しでゴールという場面で特に力を発揮します。私が言った「惜しい」の言葉には「あと少しでゴールだから頑張ってください」のメッセージが込められています。

改善すべきところを探そうと思えばいくらでも出てくるのですが、一つに的をしぼって「惜しい」と言うことでやる気が倍増します。

人は相手の駄目なところに目がいきやすい。

人は意見を求められると、ついつい駄目なところを探してしまうことがあります。

良い部分よりもそうでない部分に目が行ってしまいがちです。なので、最初に紹介した会議での話にでてきた上司が言ったように・・・

良い部分とそうでない部分をバランスよく見るように意識することは大事でしょう。

それが評価を求められたときの相手への思いやりだと思います。あの時私が「惜しい」と言った理由は・・・

「あと少しで100点」ということを大きく評価したいという気持ちがあったからです。

そして私たちは組織の中で生きる上で息を合わせることが大事です。

あの時の会議で、同僚の駄目だしばかりをする私たちは配慮が足りていませんでした。そんな私たちに上司は、「どうしてあなたたちの意見は批判ばかりなのですか?」と言われ、ハッと気づかされました。

その後、上司から教えていただいた、「意見を求められたらいいところも悪いところも両方探してください」と言う言葉が素晴らしいと感じました。

その姿勢は、みんなで気持ちよく息を合わせてチーム力を最大化させるうえで必要なことではないかと今では実感しています。