ありがとう熊さん

食品スーパーのおやじが、生き方について辛いことも楽しいことも含めて、心を込めて書かせてもらいました。

何年も同じ会社で勤めていると、その会社の常識が自分の常識になりがちである

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スーパーの仕事に個人ノルマがあることにショック。

食品スーパーのおやじです。私がこの仕事を選んだ理由は、以前営業をしていて、ノルマに追われるプレッシャーが嫌だったからです。

スーパーなら勝手に商品が売れていくから、そのようなノルマもなくてプレッシャーもないだろうと言う気持ちがありました。

しかし、実際には、ギフトのシーズンや、土用の丑の日や、バレンタインなど、様々なイベントごとに会社からノルマが課されます。会社はノルマと言う言葉を使わずに、目標数字と言っているのですが(汗)。

さらに「買うのは強制ではない」と会社から言われているのですが、その言葉通り、買わないでいる社員は少なく、お客様に勧めるからには買ってその良さを実感するべきという雰囲気があります。

焼酎や日本酒の頒布会など、1万円以上する商品のノルマもあります。

これが、とても売りにくいんです。そもそも、お客様は毎日の晩御飯のおかずを買いに来ています。そこで万単位の商品を勧めて買ってもらうためには、日頃の常連様との接客が大きく試されます。

それでも、以前に営業をしていた私は割と注文を取ることは出来ました。なので、後輩に「どうしたら先輩のように注文が取れるんですか?」と聞かれることがあります。そんな時は「商品を売るというよりも、自分を売るというイメージで仲の良いお客様に買ってもらう」とアドバイスしています。

これは8年前の出来事で、私の反省文です。

後輩社員が一生懸命、勧めていてあと一歩のところで「検討します」と言って帰られた女性のお客様。そのお客様が再び来店してきました。

私は「どうですか?」と声をかけました。するとお客様は「注文しようと思っているんですけど、どいうせ注文するなら、いつも親切にしてくれる彼に注文したい」と後輩の名前をだしました。

しかし、私も個人でノルマを早く達成したかったため「誰に言っても大丈夫ですよ」「早く注文しないと売り切れてしまいますよ」と半ば強引に勧めて、自分の成績にしてしまいました。しかし、これを後で知った後輩社員が怒りをぶつけてきました。

怒りをぶつけてくる後輩

後輩は「僕が狙ってたお客さんなのに、なんで横取りをするんですか?」と言ってきました。これに私は言い返しました。「目の前に注文してくれそうなお客さんがいたら勧めるのは当たり前だろ?」「それが仕事なんだから仕方がないだろ?」と言いました。

しかし彼は「以前先輩が狙っていたお客さんを僕が注文きいたら、嫌そうにしましたよね?それって矛盾してませんか?」と言いました。

実は以前に私も自分が狙っていたお客さんを取られて悔しがったことがあります。あからさまに口には出さなかったけど、その悔しさは態度に出ていたと思います。そこを後輩は指摘してきました。

しかし、私はその怒りを口には出したことはない。

腹が立って仕方がなかったです。お客様を取られた悔しい思いは私も多く経験してきました。

あと一歩のところでお客様が帰られて、再び来店されたら、「もう〇〇店で注文したよ」と言われたこともあります。この時は悔しくて悔しくてたまりませんでした。

なので、後輩の気持ちも分かります。しかし、悔しいからと言って、自分の狙ってたお客様を取った社員に対して怒りをぶつけることはしませんでした。

そういった悔しい気持ちが多少顔に出ていた時があったかもしれないので、そこを後輩は指摘してきたのでしょう。しかし口には絶対に出しませんでした。そこは割り切って気持ちを抑えて、怒りをこらえてきました。

なぜ、私は横取りという卑劣な行為に走ったのか?

今思えば、横取りというのは卑劣で恨みを買う行為だと思います。しかし、当時はそれが私の中では当たり前になっていたんです。

「悪いことをしている」「ずるいことをしている」と言う気持ちはありませんでした。ではなぜ私はそのような考えになっていたのでしょう?

それは以前に勤めていた会社で私の考え方が大きく変わってしまったのが影響していました。人の性格は就く仕事でも変わるものなんですね。

お客様の奪い合いが当たり前の会社で働いていました。

食品スーパーに勤める前、5年間、営業の会社に勤めていました。そこの会社では、注文は誰がアプローチをしていたとしても、最終的に取った人の成績になるという会社の考えの中で戦ってきました。

狙っていたお客様を取った。取られたは日常茶飯事でした。もちろん入社当時は、平気で横取りする先輩に腹が立っていました。

とにかく手口がずるいんですね。陰でこそこそと「私に注文してくれたらサービスしますよ」と自分に注文が入るように仕向けるのが当たり前。

それに文句を言おうものなら逆に怒られる世界。お人良しは生きていけないんですよ。そんな会社に5年もいててね、営業は誰が狙っていても、取ったもの勝ちという意識が体に染み込んでいました。

しかし、会社によって許されることは変わる。

しかし、それは、私が以前勤めていた営業の会社だから許されることであり、現在の職場で、その考えを持ち込むのはあまりにも軽率だったと反省しています。

現在の職場では、様々な社員と仕事をする機会があり、それぞれの考えに触れることがあります。

中には「あのお客様はあなたに注文したいと言ってたよ」と自分がきいた注文を私の成績にしてくれた人もいました。以前の営業の会社では考えられないことです。

ちなみに、以前私が勤めていた会社は今は存在しません。お客様の奪い合い。従業員が火花を散らして「私に注文して下さい」とアプローチする雰囲気に、お客様の心が離れたのではないかと思います。

しかし、今の職場は違います。

私も8年前の反省から、他の従業員がアプローチしているお客様を横取りするようなことはやめました。すると取った取られたで争うこともなく、お互いがお互いのノルマに協力的になれました。

あの時、後輩に怒りをぶつけられて、後輩のことを器の小さいやつだと感じたのですが、後で思い返すと、自分の成績ばかりにとらわれていた私。私こそ器が小さかった。そのように反省をしています。

就く仕事で考え方は変わる。

昔、お客様の奪い合いが当たり前だった会社に勤めたことで感じるのは、人の考えは意外と就く仕事で変わるものだということ。

みんなが苦しむ、食品スーパーのおせち・クリスマスケーキ・日本酒の頒布会などのノルマ。

「どうしてそんなに注文が取れるの?」と不思議がるほど注文が取れるようになった私。

それは、過去の弱肉強食の世界で身に着いた営業の感覚。しかし、弱肉強食の世界では許される行為が、そうでない世界では許されないこともあります。そこの会社では常識なことが世間では非常識になるんですね。

会社の常識を疑う。

今思えば、どうしてあの時の私は「お客様の奪い合い」が当たり前になっていたのでしょうか?

情けない話ですが、5年間、それが当たり前の会社で勤めていたことで、その会社の常識が自分の常識になったんです。

何年も同じ会社で勤めているとその会社の常識が自分の常識になりがちだと思います。これを回避するには、昔から言われることで、「初心忘れるべからず」の精神が必要でしょう。

私も、お客様の奪い合いの会社に入った時は、「とんでもないところに来てしまった」と思ったものです。

その気持ちを忘れないでいたならば、「このことが許されるのは、あの会社だから」と世間の常識からずれることはなかったと思うんです。

タイトルにあるように、「何年も同じ会社で勤めていると、その会社の常識が自分の常識になりがちです。

その考えが素晴らしいものであれば良いのですが、そうでないならば気を付けないといけないことだと知ったのでした。