ありがとう熊さん

食品スーパーのおやじが、生き方について辛いことも楽しいことも含めて、心を込めて書かせてもらいました。

同じ仕事ばかりで嫌になっている従業員に褒めても納得してもらえない。

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「もう、やってられない」

仕事には、収入が低い、いじめがある、ブラック企業である、と様々な悩みが存在しますが今回は、自分の立ち位置に対する不満に考えさせられた出来事です。

私が勤める食品スーパーでは、従業員から様々な仕事に対する不満を聞くことがあります。その中でも多いのが、「私がやりたいのは〇〇なのに・・・」です。

先日の事です。ある一人のパートさんが、レジでの打ち間違いや、お客様とのトラブルが重なったため、一旦レジの仕事から離れて品出し(商品を補充する仕事)を中心にしてもらうことになりました。

そのために他のパートさんの仕事がレジ中心になりました。

仕事の分担上、仕方がないことですが、これに対して一人のパートさんが愚痴をこぼしました。

 

「もう、あの人のせいで私、ここのところずっとレジばかりですよ」と。


その気持ちは分かるのですが、レジはお客様の対応が出来る人でないと務まりません。だから私はこのパートさんの愚痴にこう答えました。

「〇〇さんはレジを任せていて安心だからですよ」

「金額の違算もめったにないし、お客様の対応も良いし」

「つまり出来る人だからレジをしてもらっているんですよ」と。

私がなぜこのような事を言ったかと言うと、その仕事は評価が高い素晴らしい仕事だということを分かってもらうことで、「レジばっかりさせられると不満を持つのではなく、レジを任せられて嬉しいなと言う気持ちに切り替えてもらいたかったからです。

しかし、私の気持ちとは逆にパートさんは・・・

「ある意味、出来ないと思われた方が得ですね」と言われました。

この考えは多くの方が一度は考えたことのある事でしょう。「ある意味、出来ないと思われた方が得ですね」とパートさんが言う通り、出来ない人には仕事を頼みません。

不本意な仕事をさせられたくなければ、出来ないふりをした方が得策ではないかということででしょう。

しかし、その考えた方を人に言うことは自分の評価を落とすのです。

なので、「それは駄目でしょ?」と私は言いました。するとパートさんは「まあ、そんなことはしませんけどね」と、笑いながら冗談っぽくすませました。 私はかつての自分のことを思い出しました。

私も昔、パートさんと似たようなことを口にしたことがあります

食品スーパーの社員として、やるべき仕事内容は多いのですが、ずっと同じ仕事内容でした。そんな私は周囲に大きな不満を持つようになりました。

今、私がしている仕事を他の人がやってくれたら自分は他の仕事が出来るのに・・・

今回のパートさんと違う点は、パートさんは同じ時給ならもっと簡単な仕事をしたいという気持ちですが私の場合は、もっと難しい仕事をして自分を生かしたい という不満です。私は我慢出来ずに上司に言ったことがあります。

私 「なんで同じ仕事ばかりなんですか?」

上司 「それは仕方がないだろ?」

私の訴えは流されました。代わりに、「自分勝手な人」「我慢出来ない人」として評価が下がりました。

「それを言ったらおしまい」「言わなきゃよかった」という気持ちになりました。上司にはもっと自分の気持ちを理解してほしかったのですが、「お前は経営者じゃないだろ?自分で仕事内容を決められる立場じゃないだろ?」と言われました。

ずっと同じ仕事ばかりさせられる不満。そんな不満を上司は聞いてくれると思っていました。「それじゃやってみる?」と望む仕事が与えられることを期待していました。

しかし、「それを言ったらおしまいだな」 と言う気持ちにさせられました。そんな私の悔しかった気持ちを思い出して、あることに気付きました。今回のパートさんの愚痴に私の対応は、がっかりさせてしまったのではないか?と言うことです。

シンプルに相手の求めているものを考えると・・・

「私はずっとレジばかりさせられている」と言うパートさんの不満。それに対して私は「それは、あなたが出来る人だから」と評価することで不満を解消してもらおうとしました。

しかし、それは私の気持ちの中に、「いちいちみんなのあれがしたい、これがしたいと言うことなんて聞いてられない」というものがあったのです。

だからパートさんは、「ある意味出来ないと思われた方が得ですね」と皮肉の様な言葉を言ったのでしょう。

評価よりも気持ちをくんでもらいたい

パートさんは私に

「そうだよね。しんどいよね」

「出来るだけ負担を軽く出来るように見直してみるから」

「〇〇さんの気持ちはちゃんと聞いたよ」

「時給の見直しもするね」

と気持ちをくんでもらいたかったのでしょう

限られた少ない人件費で営業している会社では、個人の「あれがしたい、これがしたい」に対応が出来ないことも多くあります。

しかし、そんなことは誰もが十分に理解をしています。自分の要求が全て通ることはありえないと思っている中でも、少しは自分のことを考えてもらいたいというのが本音でしょう。

同じ仕事ばかりで嫌になり、我慢の限界で上司に相談をすることがあります。そんな時には上司はなんとかその仕事に対して納得をしてもらいたくなります。

なので、「同じ仕事をしてもらっているのは、あなたが出来る人だからですよ」と褒めることで納得してもらえるのではないかと考えがちです。

しかし、そのように褒められても、評価されても、「いや、私が求めているのはそうじゃない」と思われるのです。

つまり、従業員から不満をぶつけられた時は、気持ちをくんであげられるかどうかで上司としての価値がきまるのではないかと気づかされた出来事でした。

簡単に出戻りを考えるのは巣立ちを温かく見守った親鳥の気持ちを無視する行為である

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戻ってきてくれたことは正直嬉しいと思うけれど・・・

食品スーパーのおやじです。さて、皆様は一旦辞めた会社にもう一度戻ってくる出戻りについてどう思われるでしょうか?

私は恥かしくないのかな?と個人的に思っています。 私たちの会社にも出戻りの社員やアルバイトがおります。

その中には、かつての部下だった男の下で働くことになった元店長もいます。その様なケースを見ると、出戻りはかなりの覚悟が必要だと思います。

なので「私には出戻りは無理だな」と思っているのですが、他人の出戻りに関しては否定するつもりはありません。出戻りの方には「懐かしい」と喜んであげるようにしています。

懐かしい人との再会は正直嬉しい気持ちがあるからです。しかし、出戻りしたくても周囲がそれを許さないケースもあることを知った出来事があります。

5年前、ある一人のアルバイトの送別会でのこと

5年ほど勤めてくれたアルバイトにみんなで送別会を開きました。その時の彼の挨拶です。

「前の会社を辞めて、ここでアルバイトをしたきっかけは次の就職が決まるまでのつなぎのつもりでした。しかし、店の人がとてもいい人ばかりで、居心地が良過ぎていつの間にか何年も経ってしまいました」

「気づいたら20代後半になっていて、このままではいつまでもアルバイトのままで、自分は変わらないと思いました。なので、いつからでも次の職場で働き始められる状態で正社員の職を探したいと思いました。皆様には大変お世話になりました」

つまり、アルバイトを辞めることで「いつでも動ける状態」になることで、有利に就職活動をしたいということです。 彼の決意を聞いて、みんなで「がんばれ」と拍手して送り出しました。

彼は初対面の人にもしっかりとした印象を与える雰囲気があったので、本格的に就職活動をしたらすぐに正社員の仕事は見つかると誰もが思っていました。

しかし、その2ヶ月後..・・・店長に彼から一本の電話が・・・

その当時の店長に彼から連絡があったそうです。「戻りたいんですけど・・・」と。そのことで店長に「熊さん、どう思いますか?」と聞かれて私は正直な気持ちを言いました。

「この前、送別会を開いたばかりですよ。戻ってくるの早すぎないですか?」私の言葉に店長は「僕もそう思って、『お前はそれでいいのか?』と聞いたんですけど彼は『色々考えた結果です』と言ったんですよ」と電話でのやり取りを教えてくれました。

ちなみに彼はとても頼りになるアルバイトでした。慢性的な人手不足である私達の職場で彼が戻ってくるのはとても助かることです。しかし、店長の心にも私の心にも何かが引っ掛かりました。

「俺達はそれでいいけれど、あいつはそれでいいのか?」と。「そしてみんなはどう思うのか?」と私たちは彼と仲が良かったパートさんに聞きました。すると・・・・

驚きの表情で言われました。

「え⁉あれだけみんなで応援したのに・・・」パートさんにとって彼に対する思いは、巣立ちを見守った親鳥のようなものだったのでしょう。

パートさんは彼の出戻りに反対の意見を言いました。彼の出戻りは彼の就職活動を応援したみんなの気持ちを考えると受け入れるべきではないという考えです。

さらにパートさんは「そんなに簡単に戻れるものなの?」と言いました。みんなの意見はほぼ一致しました。彼の出戻りは断るべきだと。

そして店長は彼に断りの電話をこのように入れました。

「今、お前を受け入れる訳にはいかない。そもそもちゃんと就職活動したのか?諦めるのはいくらなんでも早すぎるだろ?みんなの応援している気持ちを大事にしないといけないだろ?本気でやって、どうしても無理だったらもう一度相談しに来い」と。

しばらくして、彼が職人の会社に勤めだしたことを知りました。そして相変わらず人手不足で苦しんでいる私たちは「あいつ戻ってきたら助かるのにな」と勝手なことを言い合うオチがついたのでした。

それから5年ほどが経ちました。現在彼は・・・・

髭の似合う立派な職人になっています。先日、店に久しぶりに顔を出してきました。

今は正社員の職人として頑張っているそうです。かなり久しぶりに会ったので「今の会社で勤めてどれぐらいになるの?」と聞くと「4年か5年ぐらいだと思います」と言っていました。

月日の経つのは早いものだなと思いました。その4年か5年の間に随分と彼の風貌が男らしくなったように感じました。髭を生やし、いかにも職人らしい顔つきになっていました。 やっぱり男は就く仕事によって顔つきが変わってくるものだなと感じました。

彼が職人として立派に働いていることを知り、あの時、みんなで出戻りを断って良かったと思っています。みんなの期待通りに彼が就職出来て、今も活躍していることは嬉しいものです。

彼の出戻りを断ったのは・・・

彼のことがみんな好きで、頑張ってほしかったから。
彼は真面目で働きものなので必ず正社員の仕事が見つかるとみんなが信じたから。

この気持ちが大きかったからだと思います。

お客様都合による返品を受け付けない会社でしつこく返品を迫るお客様に思うこと

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理不尽な要求に安易な対応は悪しき前例を作る

食品スーパーのおやじです。この仕事につきものなのが、お客様からの理不尽な要求です。特に勝手な理由による返品を要求してくるお客様が多いです。

「唐揚げを買ったけれど家族が食べなかったから」「おにぎりを買ったけれど美味しくなかったから」「プレゼントで買ったお酒を相手の人がいらないと言ったから」

これらは商品に問題があるわけではないので、お断りをすることが会社のルールになっています。しかし、しつこく「融通をきかせろ」「こっちは客だぞ」と言われる方もいます。

そんな時は「何事も穏便にすませたい」「早く話を終らせたい」と思いお客様の要求をのんであげたくなります。しかし、安易な対応は「この前やってくれたのに」と悪しき前例を作ってしまいます。

先日、30分前に購入された牛乳を返品したいというお客様がいました。

理由は「いらなくなったから」です。しかも店の外に出られていました。

店の外に出られた段階で私たちがその商品がどのような保管状況にあるのか確認することが出来ません。食の安全を守る立場としてこのように対応をしました。

 

私 「申し訳ございませんけれど冷蔵商品で店の外に出られているので返品には応じられません」

 

お客様 「なんで?普通どこでも当日だったら返品してくれるわよ」

 

私 「うちも、常温で保存できるものでしたらレシートを確認して当日に限りさせて頂いておりますが、冷蔵、冷凍、パンなどは傷むのが早い商品でして、店の外に出られた時点で、私共がその商品がどのような保存状況に置かれているかを確認することができませんので、申し訳ないのですがお断りさせて頂いています」

 

お客様 「そんな訳ないでしょ?さっき買ったばっかりなのに、そんなにすぐに牛乳が腐ると思ってるの?」

 

私 「申し訳ございませんが、一旦店の外に出られた後での冷蔵商品を他のお客様に販売するのは食の安全を守る立場としては出来ないんです」

 

お客様 「もうあなたうるさいわね。ちょっと待っててくれる?」

 

お客様は私を待たせて店内の奥の方に行きました

「待っててくれる」と言われ困惑する私

私はサービスカウンターで待ちながら、とても緊張をしました。誰かを呼んでくるのでしょうか?怖そうな旦那さんかな?と想像すると心臓がドキドキしました。

少しの時間で、お客様は私のところに戻ってきました。その手にはオレンジジュースがありました。その後、私の想像通り「これと交換するからいいでしょ?」と聞いてきましたた。

当然、そのような対応は出来ないので「申し訳ございませんが交換であっても、一旦外に持ち出された牛乳を返品することは出来ないんです」と答えました。しかしお客様は引きさがりませんでした。

返品出来ないと知ると交換してもらおうとするお客様

お客様 「だから、別のものを買うと言ってるでしょ?」

 

私 「申し訳ございませんが交換であっても牛乳をこちらが受け取ることになりますんで、対応出来ないんです」

 

お客様 「あなた、良く考えなさいよ。交換なんだから、あなたは何も損をしていないでしょ?」

 

私 「申し訳ございませんが、損か得かでの対応は出来ないんです」

 

お客様 「あなたしつこいわね。何度同じ事言ったら分かるの?私は返品するって言ってないでしょ?交換なのよ。それをあーだ、こーだと、もう嫌だわ。あなた良くそんなんで商売が出来るわよね」

話はまだ続きます。

独自の理論を言うお客様

お客様 「あなた、もっと頭を柔らかくして考えなさいよ。これを戻してこれを買う。それでお終いじゃないの?それをあーだ、こーだと無駄な時間を使うことないでしょ?」

 

私 「お時間を頂いて申し訳ございませんが、会社のルールとして受け付けられないんです」

 

お客様 「何をそんな小難しいことを言ってるの?もっと簡単に考えたらすむんじゃないの?あなた達だって暇じゃないでしょ?」

 

私 「簡単に交換ですむのなら話は早いのですが、ルールがあるので申し訳ないのですが勝手な真似が出来ないんです」

 

お客様 「私はたかが100円ぽっちが欲しくて言ってるんじゃないのよ」

 

私 「本当に申し訳ないのですが・・・」

 

お客様 「もういいからこれ打ってくれる」

 

お客様から言われ、レジでオレンジジュースを打ちました。

 

その会計の後、「もっとお客さんを大事にしなきゃいけないわよ」と言われ、私はただ「申し訳ございません」と謝るだけが精一杯でした。

思いだすたびにイライラした気持ちが大きくなりました。

「私は100円ぱっちが欲しくて言ってるんじゃないのよ」と、 お客様が言えば言うほどその逆に聞こえてくるのです。「もっとお客さんを大事にしなさいよ」の言葉も深く心に突き刺さりました。

私もそうしたいのです。何事も穏便に済ませたいのです。購入してから30分しか経っていない牛乳。大丈夫だと思うのですが、明確なルールがあるからこそ食の安全は守られるのです。

それが来店して頂くすべてのお客さんを大事に扱うことにつながると思うのです。こういったお客様都合の返品を上司から「絶対に受け入れないでくれ」と言われています。一人を許すと違う人も許さなければいけなくなるからです。

「以前にやってくれたじゃないの?」と再び同じことをされることがあるのです。正直言ってこの手のやり取りはとても骨が折れます。「何事も穏便に済ませたい」と言う気持ちが湧きおこります。

私達の仕事はお客様あっての商売です。

今回のようなお客様都合による返品は会社の方針によって変わります。会社によっては、穏便に済ますということで、生鮮食品であっても返品を受け付けることもあります。

そして、返品された牛乳などは破棄をするのです。それはそれで私は良いと思います。私たち従業員は会社の方針にそって行動しなくてはいけないからです。

正直言って、そういった返品も認められている会社がうらやましいと思います。お客様の気持ちも考えると、後で破棄する商品でも返品を受け付けたいと思います。

出来ることなら穏便にすませたいのです。なので「もっとお客さんを大事にしなさいよ」と言う言葉が心に突き刺さりました。

その突き刺さった言葉を心から抜こうと苦しむ中で見えてきたものがありました。それは「もっとお客様を大事にしなさい」と言われた言葉はあくまでも、そのお客様個人を大事にしろと言われていることです。

そこで、そのお客様の気持ちを大事にする形で、何事も穏便にすませようとする考えでは食の安全も守れなければ、他のお客様を大事に扱うことにもつながらないと言うことです。

明確なルールがあるからこそ、全てのお客様を大事に扱うことにつながるのです。