ありがとう熊さん

食品スーパーのおやじが、生き方について辛いことも楽しいことも含めて、心を込めて書かせてもらいました。

若かりし頃、おじさん、おばさんから受けたご恩は次の世代にGO。

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食費を切り詰める大学生アルバイト君

食品スーパーのおやじです。食品スーパーには多くの大学生アルバイトがおります。その内の一人の話です。彼は親元を離れて大学に通いながら一人暮らしをしています。

アルバイトに入っていない日でも買い物にくることがあり、たまたま私がレジをしていた時の事です。買い物カゴには焼きそばの麺が10玉とキャベツと卵が入っていました。「なるほど、安い焼きそばの麺で節約をしているんだな。偉いなぁ」と思い声をかけました。

私  「おっ!今日は焼きそばか?」
彼  「えっ?何で分かったんですか?」
私  「いやいや、見たら分かるだろ?」
私と彼 「ハハハハ(笑)」

彼の「何で分かったんですか?」という返しが面白く笑ってしまいました。
その後、彼の事でパートさんと話をしました。

パートさんは彼のことをとても心配していました。

彼は家庭の事情からそれまであった仕送りがストップされてしまったらしく、一応奨学金は貰っているそうですが、うちでのアルバイト代と合わせても、やりくりが大変らしく、しばらく肉を食べていないそうです。肉は値段が高いから買えないそうです。

「そう言えば、この前の焼きそばの買い物でも肉は入ってなかったな」と私が言うと、パートさんは「あーーん、可哀想。肉ぐらい買ってあげるのに・・・」と言っていました。

さらに、パートさんの上の息子さんが彼と同じ年らしく、どうしても比べてしまうそうです。

パートさんは彼のことを褒めていました。

親元で離れて一人暮らしをする彼をみていると、自分の息子さんよりも、しっかりしているように見えるそうです。なんでも自分でしないといけない状態での学生生活を送っている彼にハングリー精神のようなものを感じるんだそうです。

「彼に比べてうちの息子は家に帰ったら、ご飯もあるし、風呂も沸かしているし、洗濯もしてあげてるし、至れり尽くせりでもっと感謝してほしいなー」とパートさんが言うので「その分、勉強を頑張ってくれたらいいんじゃないですか?」と言うと「いやいや、頑張らないのよ。環境が良過ぎて頑張らない子になってるの」そんな会話をしました。

今度はカレーのルーを買いに来た彼

数日後、また店内で買い物をする彼に会いました。買い物カゴを見るとカレーのルーにジャガイモが入っていました。一箱で10皿分が作れるルー。恐らくそれをもっとしゃばしゃばにしてご飯にかけて食べてるのかな?そんなことを想像しました。

私も学生時代、新聞奨学生として配達所に住み込みで働き、専門学校に通っていた時期があります。若い頃はとにかく食べても食べてもお腹が空きました。

あの時期はお金もあまりなかったので、とにかくおかずは安いもので済ましていました。しかしお腹が空くのは我慢が出来ないので、おかずは何でもいいから、安くすませてご飯はいっぱい食べていたと思い出に残っています。

だから彼の気持ちが分かるのです。学生時代の私は月に一回、牛丼屋さんで肉を食べるのがこの上ない幸せでした。そんな過去のことを思い出しながら店頭で仕事をしていると、買い物が終わった彼は私に「お疲れ様です」と言って帰ろうとしました。その時です。

カレーには肉を入れなさい。

仕事が終わったパートさんが彼に近づき、自分が購入した肉を彼のレジ袋に突っ込みました。彼は{え?」そしてパートさんは「カレーには肉を入れなさい」彼は「え?でもお金は?」それに対してパートさんは

「もーーう、黙って持って帰り」

彼は「有難うございます」と言いました。なんとなく申し訳なさそうな表情でした。その時、ちょうど前半のパートさんと後半のパートさんが入れ替わる時間だったため3人のパートさんが店から出てきました。彼に近づきこう言いました。

「ここにはお母さんがいっぱいいるからな」

家族的な愛を感じる職場

真面目で一生懸命。人当たりも良くて、そんな彼をパートさんはみんな応援していました。彼はとても照れたような表情をみせました。そばで見ている私もなんか熱いものがこみ上げてきました。その時です。私の手を取り一人のパートさんが・・・

「ここにはお父さんもいまーーす」

え?40代だけど、見た目年齢は25歳だと思ってるんですが(汗)。しかし、これには「はははは」と笑うしかなかったです。彼も照れていましたけど、私も照れて顔が赤くなりました。

彼にとっての学生生活は金銭的には苦しいかもしれないけれど、その分、人の温かさに包まれた職場でアルバイトが出来ています。

お金のない学生時代、大人の人に、食べ物を頂いた経験がある人は多くいることでしょう。

若かりし頃、おじさん、おばさんに助けられて今があります。今度は私の番。受けたご恩は次の世代にGOです。