ありがとう熊さん

食品スーパーのおやじが、生き方について辛いことも楽しいことも含めて、心を込めて書かせてもらいました。

「タイムカードを押す時は空気を読め」と上司に言われたが空気は読みませんでした。

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「勤務時間を守っていたら店が回らないよな?」

食品スーパーの社員として薄利多売の世界で生きる私達は、「安さこそが絶対の正義」のような空気の中で出来る限りギリギリの人員で頑張っています。

薄利多売の世界で利益を確保するには多少の無理は覚悟をしているのですが、時代の流れというものでしょうか?ここ最近は、会社から、決められた勤務時間を大幅に超えないように強く言われるようになりました。

ブラック企業と言う言葉が世間に浸透し、過重労働を課す会社に大きな制裁を与えるように時代が変わり、会社の意識も変わってきたのでしょう。

働く人にとっては喜ばしいことだと思いますが、ここに現実的な問題が発生し、小売業・飲食業・サービス業などの薄利多売の世界では「そんなことを言っていたら店が回らない」と嘆く上司がまだいるようです。

以前のように部下に大幅な時間外労働を要求できなくなった社会の風潮の中、それでも会社から実績を求められる責任者はとても大変だと思います。

スタッフが足りない・細かい事務作業が多い・時間内に到底終わりそうにない仕事量なのに会社からは勤務時間を大幅に超えないように言われる。一体どうしたらいいんだろう?

そんな辛い上司の気持ちをぶつけられて考えさせられた出来事があります。

社員にタイムカードがなかった会社がいきなりタイムカードを押すよう義務付けた理由は?

信じられないことに、うちの会社では昔、社員のタイムカードがありませんでした。アルバイトには時給が発生するのであるのですが、社員にはなく、残業代込みの月給が支払われていました。

ところが、いきなり「社員もきちんとタイムカードを押してください」ということになりました。この辺の詳しい経緯は我々一般社員には分かりませんが・・・

誰かが労働基準監督署に密告したのではないか?

という噂はたっていました。社員にタイムカードを押すように義務付けられた当初は、ついつい押し忘れることがたびたびあり、本部からお叱りを受けたものです。さらにその当時の店長からこのように言われました。

「タイムカードを押す時は空気を読んでくれよ」

「タイムカードは本部に提出するもので、きちんと労働時間を守っているか見られるものだから、その辺の空気を読んでくれよ」

つまり、タイムカードがない時代のように大幅に勤務時間を超えて働いたからと言って、その事実がタイムカード上に残ると・・・

労働基準監督署に見られた時に言い訳が出来ないと言うことでしょう。

店長は具体的にそう説明はしませんでしたが、空気を読めという言葉のニュアンスで分かりました。

気持ちは分かります。労働時間をまともに守っていて与えられた仕事が終わるのか?という気持ちです。しかし、それならきちんと労働時間を守れるような仕事量に見直すべきだというのが正直な私の気持ちです。この事を同僚女性に相談すると・・・

「私には何も言ってこないよ」

「私には何も言ってこないよ」と言われました。

私 「え?何で僕だけに??」

同僚 「だって私にそんな事言ったらキレるから店長も言えないんでしょ?」

どうやら店長は言いやすい私にだけ言っているようでした。さらに店長は・・・

タイムカード上では空気を読んで長時間勤務で打刻するなと言っていたそばから・・・

「別に強制しているわけじゃないけど、もう1時間早く来る気はないのかな?」
「朝は忙しいんだよ」

と言ってきました。ちなみにうちは朝から出勤する早番と、昼前から出勤する遅番があるのですが、私は規定の時間よりも30分から1時間早く来ていました。

それは強制されてではないのですが、そうしないと与えられた仕事が終わらないからです。その私の遅番の時にもう1時間早く来る気はないのか?と聞いてきました。

つまり規定の時間よりも2時間早く来いということです。さらに店長の・・・

「別に強制しているわけじゃないけど」

の言葉は自らの意思でそれはすべきだという意味だと思いました。さらに・・・

「他の店の社員は早く来てるよ」と私の苦手な同調圧力をかけてきました。他店の社員もみんな2時間早く来ているというプレッシャーです。ちなみにそういう店もあるのですが、全店の社員が2時間早く来ている訳ではありません。

私はその当時、深夜遅くまで残って仕事をしていました。それは店長が仕事を丸投げするタイプだったからです。そんな私に2時間早く来いというのは単純に店長が楽をしたいからでした。

しかし店長の「強制ではないよ」と言う言葉が若干の救いになり、私は夜遅くまで残らざるおえない閉店後に回している仕事の件を引き合いに出し・・・

「2時間早く来ても良いのですが、その分早く帰れる訳ではないと思うのですが・・・」

と言いました。すると「俺もこのことは強制出来ないけれど、普通はそういう意識をもってするのが仕事だと思うけどな。少なくても俺は今までそうしてきたけど。時代が時代で勤務時間がどうのこうの言ってる奴がいるけど、俺からしてみたらそう言うやつは考えが甘いと思う」

と言われました。私はこのことに同意も反論もせずにやり過ごしました。その後、また同僚女性に話を聞いてもらいました。すると・・・

「私には何も言ってこないよ」

同僚女性は・・・

「それって完全に脅迫だな」
「店長の権限で出来ることと出来ないことがあるのを分からないんかな?」
「もし、熊さんがその気があるんだったら常務(話を聞いてくれる仲の良い上司)に一緒に相談するか?」と言ってきました。

私は戸惑いました。時代がブラックな働き方を否定するようになったからといって、なかなか「私は勤務時間内は一生懸命頑張っています。でも決められた時間を超えて働く気はありません」的な発言をすると・・・

「こいつ駄目だ」と思われるんじゃないか?変な目で見られるんじゃないか?」

という保身の気持ちの方が強くなり海の底の貝のように固く口を閉ざしてしまいます。

しかし、「この人と一緒に上司に相談するのもありかな?どう考えても店長は自分が楽したいがために私に長時間勤務を要求しているように見えるから」と相談すべきかしないべきかという心の葛藤の中、店長は他店に異動になり、そのことは実現しないまま終わりました。

ちなみに、店長の同調圧力は強かったものの「別に強制している訳じゃないよ」と言う言葉から上司の心の葛藤が見えた私は2時間早く来るということはしませんでした。

サボリーダー(サボるリーダー)に助けられてる

実は、同僚女性は仕事ではあまり動き回るタイプではないので、私の仕事の負担が大きくなっているのですが、私には真似出来ない強さを持っているようです。

だから「この人のせいで私の仕事が増えてる」と言う気持ちよりも・・・

「この人のおかげで上司の無茶な要求が通らなくて済んでいる」と感謝の気持ちが大きくあります。

上司のブラックな要求には一人では戦えない

私の場合、同僚女性という心強い味方がいたので、無茶な時間外労働に従わなくてすんだのですが、もしこの同僚女性が居なかったらと考えると・・・

ゾっとします。

少ない人件費でのオペレーションを求められる薄利多売の世界。従業員に多少の無理をさせなければ経営は難しい。他社との競争に勝ちにくくなる。

従業員もそれが分かっているので、過重労働も仕方なく受け入れることがあると思います。いくら社会がブラック企業に冷たくなったからと言っても・・・

上司は部下に「強制だ」と言わずに、自らの意思での行動を求めることがあります。

同調圧力をかけられると部下は大変苦しい選択をしなければいけないことがあります。なので常日頃から仲間を大切にし、一人で戦わないということが大事だと思いました。

与えられた勤務時間は一生懸命頑張っている。少しでも仕事の効率が上がるように工夫をしている。そんな会社のために頑張っている人達が力を合わせれば・・・

無茶なブラック労働をしなくてすむ。それがみんなが気持ち良く働ける環境作りになるということです。

そして最後に上司から「別に強制しているわけじゃないよ」と言う言葉に対して私が出した答えは、そうは言っても強制じゃないか?と思いがちですが言葉通り強制ではありません。正当な理由がない限り従う必要はないということです。