「最後まで気を抜くな」と言うのは辞めた後もこの仕事に誇りを持ってほしいからです
「おい、どうせ辞めるからという気持ちになってないか?」
以前の職場を辞める前に先輩にドキッとすることを言われました。
「おい、どうせ辞めるからという気持ちになってないか?」と。
確かにそういう気持ちになっていました。あと少しで辞めるんだから、がむしゃらに頑張っても仕方がないという気持ちでした。
なので、動きが以前よりもゆったりとした感じになっていたでしょう。そこを先輩は指摘してきました。そして・・・
「立つ鳥跡を濁さずだぞ」
「立つ鳥跡を濁さずだぞ」と職場を離れるときは旅立つ鳥のように跡を濁すべきではないことを言ってきました。そして・・・
「辞めていく君にとやかく言うのもなんだけど、本当に君はそれでいいのか考えた方がいいよ」
と考えさせられることを言われました。先輩は私を心配して言ってくれました。仕事を辞めた後、「あいつがいなくなって寂しいな」と思われるのとそうでないのと、どっちがいいのか考えろということです。
先輩は、私を気持ちよく送り出したかったのです。私はそれを知り、辞めた後も以前の職場に誇りを持ちたいという気持ちが芽生え、最後まで一生懸命頑張る決意をしました。
今思えば、いい経験になり先輩には感謝をしています。そんな私は現在食品スーパーに勤めています。
アルバイト、パートさんを指導する立場になり、人の入れ替わりが多い職場で、今度は辞めていく従業員を送りだす立場になり、考えさせられた出来事があります。
それは・・・
お調子者のアルバイト君の話です
アルバイト君「熊さんに言われてた仕事、終わりました」
彼はどちらかというと適当な性格が仕事に出ています。
「あれっ!これって商品を出さずに棚上に段ボールのまま置いただけ?」
それを私は頻繁に指摘しました。
「やけに早いと思ったら棚上にのせただけやんか?」
急ぐあまり、頻繁になにかをやらかします。
彼が終わらせた仕事を見に行くとビールケールがばらばらに積まれていたこともありました。
今日からあだ名はやらかしや
しかし、彼は急いでくれる
いつになったら終わるのか分からない仕事を嘘でも
終わらせてくれるある意味可愛いやつだ
そんな彼がアルバイト最後の日を迎えた。
彼は大学生で卒業だ。
最後はきっちりきめてくれよな」
「終わりました」
「よし、本当か?」
あれっ本当にちゃんとできている
「なんだかがっかりだや~」
「やっぱり自分おもろないわ
関西人が嫌がる言葉「自分おもろないわ」に彼は
「えっ?」
「最後になにかをやらかすと思ったんだけどね」
「その期待を裏切るのが僕のやらかしです」
「マジか?最後にとんでもないことをやらかしたんだな」
「ははっはは」
いかがでしたでしょうか?彼は最後の最後まで一生懸命でした。しかし、アルバイト最後の日は、自分のおっちょこちょいな性格を気にしながら、細心の注意を払い、失敗してなるものかと頑張りました。
なので、「どうせ最後も、なにかをやらかすだろう」という私の期待を裏切りました。そして、「お前、おもろないねん」という関西人が嫌がりがちな言葉も笑いに変えました。
「おもろない」は使い方次第で人を批判する言葉ではないことを知りました。
大した奴でした。
さわやかに送りだしたい気持ちあの時、「最後まで気を抜くなよ」と言った理由は、気持ちよく彼を送り出したかったからです。そして、辞めた後もこの仕事に誇りをもってほしかったからです。
期待を裏切り何かをやらかさなかった代わりに、期待通り彼の誇らしげな笑顔で締めくくることが出来ました。
両者満足です。仕事を辞める時は、「どうせ辞めるから・・・・」という気持ちが出てきがちです。
本人だけでなく周囲にも、「どうせあいつは辞めていく人間だから、とやかく言っても仕方がないよな」と言う気持ちが生まれます。
しかし、本当にそれでいいのか?と私は思います。最後まできっちりやり抜くこと。それを先輩がサポートする。
それが、立つ鳥跡を濁さず。巣から飛び立つ小鳥を親鳥が見つめる気持ち。爽やかに見送ることになるのではないかと思います。