ありがとう熊さん

食品スーパーのおやじが、生き方について辛いことも楽しいことも含めて、心を込めて書かせてもらいました。

「なんか知らんけど上手く行くのは分かっている」と詐欺師が言う理由

「何か分からないけれど」

「なぜか分からないけれど」

「何でか分からんけれど」

の「なんか知らんけど詐欺」をご紹介する。

 

詐欺の世界では有名な教えで「理屈で説明すると理屈で返ってくる」というものがある。

客にぼったくり商品を勧めるときは出来るだけ理屈でせめるなと言う事だ。
理屈でせめると、説得に時間がかかる。

客があれこれと突っ込んで質問をしてくるからだ。

説明放棄の不親切。まともな会社が考えることではない。でも僕がかつて勤めていた悪徳商法で有名な催眠商法の会社では出来る限り理屈でなく勢いだとかムードでせめるようにしていた。

ちなみに男性客は理屈でせめたほうがいいとか、そのターゲットとする人の個性の見極め方もあるのだけれど、これを説明すると話が長くなるのでまたの機会にしたい。

理屈で説明しないというのは、例えば商品のよさを説明するとき明らかに他の商品よりも優位な特徴がある場合はきちんと説明をするがそうでなければ、その商品を使った後に訪れるであろう喜びに焦点をあて、その原因については「良く分からないんだけど」とはぐらかすことだ。

僕たちは主に健康食品を売っていたのだが、ターゲットとするお年寄りはみんな他の会社で健康食品を買っている。

そこに割って入らなければいけない。

例えば高麗人参という有名な健康食品がある。
いろんな催眠商法のライバル社はみんな似たようなものを扱っている。そんな中でも「うちのものは違うんです」と勧めなければいけない。

そこで、他社の商品との違いを一から百まで全て説明するのではなく80ほどにとどめておき、残り20は「不思議なことに、なぜ他の高麗人参とまったく違う効果が出るのかは良く分からないんですよ」などと説明する。

例えば、「低血圧の人に効果的だといわれている高麗人参ですが、高血圧の方の場合、交感神経を活発にすることから、血圧の上昇が見られることがあります。ところがうちの高麗人参にはそういった副作用がありません。真空マイルド粉砕製法といって、この技術は世界でも3社しか出来ない技術なんだけれど、この製法を施すことで、高血圧の人が飲まれても、血圧を安定化させてくれるのです。しかも従来のものよりも免疫力を3倍高めてくれる働きがあることが分かったのです。

この不思議な現象は医者も首を傾げるほどで、科学的には説明がつかないほどのパワーがこの商品にはあるんです。

と言う具合に、他社では真似できないほどの効き目を実感できるのは特殊な製法や、特殊な配合があるからで、ではそういった製法や配合の違いがどうして想像を超えた結果を引き出せるのか?は分からないと言う事にしてしまうのだ。

「原因は分からないけれど結果は分かっている」
「理由は分からないけれど分かっているのは事実だけ」
「科学的には説明がつかないけれど事実として存在する」

どうして?と聞かれても「いや~、なんか知らんけれど、そうなるんです」と答えるのだ。

「想像をはるかに超えた結果が全てであり、なんか知らんけれど他に類を見ない結果だけは確かなものです」と理由でなく結果で勧めてくる。

買わない理由をあれこれ考えたくなるタイプの客は、販売員から理屈を引き出してその矛盾点をつきたいという心理があるのだが、矛盾点をつきたくても理屈を相手が出してこないと矛盾点はつけない。

なぜこのように他の商品には真似できないほどの結果がでるかというと今の科学ではきちんと説明は出来ないのです。しかし、逆に説明が出来ないからこそこうして健康食品として販売ができるのです。

これが、科学的にこの物質とこの物質の反応がこういった結果をもたらすと証明されてしまうと医薬品になってしまいます。そうなると病院でしか手に入らなくなります。
そういった説明の後に勢いよく

「とにかくいいものだから」
「いままでのものととにかく違うのは結果で分かっているんだから」と原因よりも結果重視で説得がされるのだ。

そうして、客も「なんか知らんけど買ってしまった」という状態になってしまう。

話をまとめると、「なんか知らんけれどそうなるのです」は悪徳商法では有名な都合の良いセールストークだと言うこと。

「なんか知らんけど」と布石を打つことで理屈を説明しなくていいからだ。
理屈で勝負をすると、どこかで客に矛盾点をつかれる。

詐欺師は理屈を求められても答えたく無いものだ。

なので「なんか知らんけど結果は分かっている」

「なんか知らんけど、事実としてそれは間違いない事なのです」と思考停止というか理屈停止状態にして、結果にコミットさせるのだ。

お気をつけくださいませ。