ありがとう熊さん

食品スーパーのおやじが、生き方について辛いことも楽しいことも含めて、心を込めて書かせてもらいました。

「今のままでいい」の言葉は本音ではなく気を楽にするためだけに使われることがある

工場のアルバイトの求人広告に「正社員登用制度あり」と書いてあった。いきなり正社員になるよりもアルバイトとして様子を見てからということに魅力を感じた。その待遇を見ると日給も悪くなかった。食堂もある。学歴も経験も問わない。やる気があればいいということで条件として申し分がないように思った。なので、さっそく応募をしてアルバイトをすることになった。
頑張っていたらそのうち「正社員にならないか?」と声がかかってくるものだと思っていた。しかし、現実は厳しいものだと知った。工場では100人ほどのアルバイトがいてた。しかし社員になれるのは、年間たったの2人ほどであった。「正社員にならないか?」と声をかけてもらうためには目立たないといけないのだ。人よりも多くの仕事をこなし、人よりも早く出勤し、後輩の面倒も見る。そして急な残業も快く引き受ける。そして上から厚い信頼を得る。それが高いレベルで出来る人にだけ声がかかっているようだった。狭き門であるために何年も正社員になれないアルバイトが多くいてたのだ。そんないつまでも正社員になれないアルバイト達と一緒に働き、とても仲の良いグループに入った。
昼休憩の時グループのみんなと、なかなか社員になれない愚痴を言い合った。同じ境遇の仲間と愚痴を言うだけで、なぜだか気が晴れた。みんな最初は社員を目指す仲間だったのだが、いつしかみんな社員を目指さなくなった。それどころか、社員になりたくないとみんな口に出すようになった。
みんなの口から出来てくる言葉はマイナス思考な言葉ばかりだった。
「こんな会社では社員にならない方が気が楽だよな」
「社員になったら作業のノルマに追われるし、常にプレッシャーがかかって嫌だよな」
「急な仕事が入ることもあるし、自由がなくなるよな」
「今のアルバイトのままで充分生きていけるよな」
このような会話をしているうちにアルバイトを始めたころの、社員になりたいと言う気持ちをいつしか忘れてしまった。仲間はみんな同じ境遇の人ばかりだと思うと、このままでいいと思うようになった。
しかし、その同じ気持ちでいてると思っていたグループの中の一人が急に社員に登用された。私は驚きをもち、「え?あれほど『社員にはなりたくない』と言っていたじゃないか?」と彼に聞いた。すると彼は、「確かにこのままでいいという気持ちもあったよ。でも、心のどこかで自分を変えないといけない気持ちもあったんだよ」と答えた。
彼からその言葉を聞いて焦った。仲良しクラブの中でお互いに、「今のままでいい」と言う気持ちを口に出すことで今の現状に対する不満を和らげていた。それはそれで気持ちが楽になれたのだが、初心をすっかり忘れて向上心がなくなってしまったのだ。しかし、彼が社員になったことで、本音と建前は上手く使い分けた方が良いということに気付いた。
それから仕事に対する姿勢を変えた。そんな私に、しばらくすると「社員にならないか?」と声がかかったのだ。

 

 

あやしい催眠商法 だましの全手口  身近な人を守るために知っておくべきこと

あやしい催眠商法 だましの全手口 身近な人を守るために知っておくべきこと

 

 

 

「あやしい催眠商法だましの全手口身近な人を守るために知っておくべきこと」
単行本: 230ページ
出版社: 自由国民社 (2018/11/2) 
筆者 ロバート・熊
イラストレーター にゃんとまた旅/ねこまき
身近な人を守るために知っておきたい催眠商法の現場を元社員が詳細に明かした本です。
★本書の特徴
1.いかにしてお年寄りのこころを奪うか、元社員が明かします。   
2.ネット上にある催眠商法の説明はごく簡素なものですが、事実はかなり込み入った内容です。本書では複雑で巧妙な手口をあますことなく紹介いたします。
3.まず近づかないことが一番ですが、もし被害にあってしまった場合の有効な対策も分かります。

大型書店の法律書の棚に並べられていることが多いです。
お近くの書店に置いてない時は、本のタイトルをお控えになり、お取り寄せでお願いします。