みんなが違う方向を向いている時は、自分の大変さを理解してもらえなくて当たり前
部下の仕事をほとんど手伝ってくれなかった上司の下で働いたことがある。しかも自分のことを棚に上げ、私の後輩社員に、「俺一人が頑張っても仕事は回らないんだよ」「もっと協力すべきところはしてくれよ。みんなの会社だろ?」と説教していた。
そばで聞いている私は、「それはこっちのセリフだ」と思った。
上司が現場にほとんど出ないから仕事が前に進まなくて大変なのだ。手が回っていないのに上司は手伝ってくれずに、自分の仕事だけをのんびりしていたのだ。なので、腹が立った。
そんな気持ちでいる時に同僚に、「熊さん!何をそんなに難しい顔をしているの?」と聞かれた。私は「上司が抱え込んでいる仕事よりも僕の方が多いのに上司は何も分かってないんだよ」と不満を漏らした。
すると同僚は、「みんながみんな頑張っているんだよ」「でも、みんな違う方向で頑張っているから不満が出るんだよ」「みんな、あっち向いてホイをしているんだよ」と、なんとなく分かるような分からないようなことを言ってきた。
私は、「こっちは現場で、『ヒーヒー』言っているのに、あの人は何も分かっていないんですよ」と言った。
すると同僚は、「分かるわけないでしょ。そんなの。熊さんの大変さなんて分かってもらえなくて当たり前だよ」と言った。
この言葉に、諦めのような、悟ったような、気持ちにさせられた。結局何の解決にもなっていないけれど、愚痴を聞いてもらっただけで、どことなく心が軽くなったような感じがした。
その数日後、上司が休日出勤をしてきた。あまりにも倉庫が散らかっているから整理をしに来たのだ。日中の倉庫内は高温になる。上司は、全身汗だくになりながら、ほとんど片付けてくれた。
しかし、若干残っている分は夕方から用事があるということで、「後は引き継いでくれ」と言われた。
心の中で、「そんな暇はない」と思ったが、上司が休み返上で頑張ってくれたということもあり、心良く引き継ぐことになった。
上司が、「それじゃ宜しく」と言って帰ろうとした時、ふと、「あっ俺やっぱり、あっち向いてホイをしている」と思った。
「上司は日中暑かっただろう。きっとそうだ」と思った私は帰ろうとしている上司に、「日中、倉庫は暑かったんじゃないですか?」と聞いてみた。
すると、「いやー泣きそうでした」と返された。その時の表情を私は見逃さなかった。
あきらかに、自分の大変さを部下が分かってくれた事に対する、安堵の表情を見せてくれたのだ。これは最近の中では珍しいことだった。自分だけが大変な思いをしているとみんなが思い、職場の雰囲気が悪かったのだ。なので、みんなの表情が暗かったのだ。
みんなそれぞれ頑張っているけれど、違う方向を向いているから相手のことが見えなくなり不満につながったのだ。自分の大変さを人に分かってもらえなかったのは当然のことだった。なぜなら私自身も他人の大変さを分かろうとしなかったからだ。
あやしい催眠商法 だましの全手口 身近な人を守るために知っておくべきこと
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「あやしい催眠商法だましの全手口身近な人を守るために知っておくべきこと」
単行本: 230ページ
出版社: 自由国民社 (2018/11/2)
筆者 ロバート・熊
イラストレーター にゃんとまた旅/ねこまき
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