ありがとう熊さん

食品スーパーのおやじが、生き方について辛いことも楽しいことも含めて、心を込めて書かせてもらいました。

守られている・・・そうかもしれないですね。

どうして自分だけこんなに苦労をさせられるのだろう?

この苦労になんの意味があるのだろう?

答えを見つけようと、もがきながらも答えにたどり着けないもどかしさがあります。そんな日常の中、昔うちでパートをしていた方の家に遊びに行くことになりました。

すごいごちそうを用意してくれました。

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「残しても仕方がないから全部、食べてや」と言われました。

元パートさんは息子さんも娘さんも独立して今は一人暮らしです。老後は息子さん夫婦と一緒に暮らしたいと言うことで、数年前に買った家はとにかく立派です。

かつて母子家庭で息子さんと娘さんを、苦労しながら育てたということを聞いていた私は・・・

こんな立派な家を女性一人の力でなんで?と思いました。

家の内装や置いているものを見ると、「あれっ!この人なんでこんなにお金を持っているのだろう?」と思うほど立派なのです。

しかし、若い頃はずっとお金がないことで苦労をしたそうです。若いころ旦那さんと別れ、女手一つで息子さんと娘さんを育ててきました。そんな彼女にはたった一人の姉妹である姉がいました。

姉は生涯独身で、とにかくお金に執着心のある方だったそうです。そんな姉妹は母親を早くから亡くし、父親だけに育てられてきました。父親は働き者でたくさんの貯金をしてたそうです。

姉妹が40代後半の頃、父親が病に倒れ、あとわずかの命と宣告されたころ、姉は父親の家から全てのお金を妹に何も言わずに持って帰ったそうです。

残された家は売却して姉妹で分けることになりました。

妹は大変腹が立ったそうです。裁判して姉と戦うことも考えたのですがそうすることはしませんでした。理由はその年、結婚する予定の娘さんがいて、姉にも娘の結婚式に気持ち良く出席してもらいたかったからです。

血のつながった姉妹は姉しかいない。裁判をおこしたら、たった一人の姉との仲は一生決裂する。そう思い我慢したそうです。そして父親の残した財産は古い家一軒だけになりました。

父親の家だけはお金と違って、姉が独り占めできません。売却して姉と分けることになりました。その手続きの時、姉は妹にこう言ったそうです。

 

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「あんたさえいなければ」と。

この言葉を聞いて妹はとてもショックを感じたそうです。父親のお金を全てもって帰り、さらに家まで自分一人のものにしたい。その気持ちがとても悲しかったそうです。
しかし、遊んで暮らせるお金が手に入り10年後、姉は変わりました。

父親の残したお金はかなりの額だったそうです。姉は仕事を辞め、マンションを買い、毎日飲み歩く生活を始めたそうです。そんな生活が10年ほど続いたころから姉の状態は変わってきたそうです。

認知症の発症です。妹と会う約束をしても、約束を忘れ、電車でどこかに行くと、なかなか帰り方が分からない。

そんな状態になったそうです。さらに1日に何件も飲み屋をはしごをし、酔いつぶれて病院に搬送されることがたびたび出てきたそうです。

妹は姉に「お酒は控えた方がいい」と言うと「あんたにそんなことを言われる筋合いはない」と返されたそうです。

年を重ねても綺麗な姉は60代の男性と内縁関係になりました。

そんな姉は独身でしたが飲み屋で知り合った男性と一緒に住むようになったそうです。その男性と飲み歩いたり、旅行に行ったりするお金は全て姉が支払ったそうです。

男性は孫を連れて姉の所に遊びにくることもあり、毎回その孫たちにおこずかいを渡してたそうですが、ある日、姉にその孫たちの会話が聞こえてきたそうです。「まだかな?まだでないのかな?」と。

そして、おこずかいをあげたとたん「ありがとう」と言って、そそくさと帰るのです。姉は「しょせん他人の子供だから仕方ない」と妹に愚痴をこぼしたそうです。

姉が体を壊し入院中、姉がマンションのどこかに隠していたお金が欲しいのか、男性は姉のマンションをあちこち探し回る行動をしたそうです、しかし見つからずにあきらめて姿を消しました。

しかし、姉が退院し、まだお金を持っていることを知ると男性は姉のところに帰ってきたそうです。姉は自分のところに男が戻ってきたと喜んだそうです。

その頃になると姉の認知症はずいぶん進行していました。近所の人が亡くなったと聞かされた時にその家族に向かってニコニコと「じゃあまた遊びにおいでね」と、とんちんかんな事を言ったり、妹の名前がなかなか口から出てこなかったりしたそうです。
姉の姿が情けなくなりました。

妹は父親のお金をすべて持ち去った姉が許せませんでしたが、同時にそんな姉の姿が情けなくなり、どうしてもその男と別れさせたくなりました。そしてまだ父親の財産が残ってるうちに、姉が老後を安らかに暮らせる施設に入ってもらいたくなりました。

しかし、妹でも姉を無理やり施設に入れることはできません。姉の内縁の夫が「自分が面倒をみる」と言って聞かなかったそうです。そして、とうとうそのつけが姉にまわってきました。姉は病に倒れ病院で寝たきりの生活をするようになりました。

父親の家から持ち去ったお金は全てなくなっていました。

意識不明の重体で、救急車は男性が呼んだそうです。何日か昏睡状態で、妹も何日も病院にお見舞いに行き、話かけたけれど、目をつぶったままで何の反応もありませんでした。

それでも何日か通い話しかけてると、ある日いきなり姉は目をパッと開いてじろっと妹を見たそうです。この時は大変ビックリしたそうです。

その後、姉は食事を鼻からチューブでとるようになり、簡単な言葉を話すようになったそうですが、それ以上容体は良くなることなく息をひきとりました。

その後、姉の残した財産は妹が相続するのですが、あれほど多くあったであろう父親からのお金は全て無くなっていたそうです。それでもマンションが残っていたため、そのマンションを売ることは出来たそうです。

姉のお金は男性が持ち逃げしたのであろう。しかし、その男性は姉のすぐ後に病に倒れそのまま息を引き取ったそうです。

元パートさんは姉が亡くなった後、姉のマンションにあった大きな先祖代々の仏壇は持ち帰り、毎日手を合わせているそうです。そして問題の、どうしてこの元パートさんはこんなにも金をもっているのか?それは・・・

苦労をさせられた分守られる。

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「その代わり守られていると思うけどね」

元パートさんには姉のほかに、親の兄弟の子供である従姉妹が3人いるのですが3人とも独身で、しかも3人ともかつて大手企業に何十年も勤めあげたそうで、退職金やらなにやらでかなりお金を持っています。

しかし、この3人の従姉妹は高齢で次々に病気になり、病院に行く時に元パートさんに頼ってきています。

若くてお金を稼いだころと違って高齢になり寂しくなってきたのでしょう

毎日のように色々と電話をしてくる従姉妹。そのたびに病院に付いて行ってあげたりと世話を焼いてあげています。

このように話しをすると、もしかしてお金は従姉妹から?と思いがちですが、お金は一切受け取っていません。

お金は老後に買った不動産が次々に値上がりしていき、売っては買い、そして売っては買いで全てが順調に行っているからです。そのことについて元パートさんは・・・

「姉や従姉妹に振り回されてきたけれど、なにか大きなものに守られている様な気がする」と私に言いました。その視線の先には大きな仏壇がありました。

守られている・・・そうかも知れないですね。