ありがとう熊さん

食品スーパーのおやじが、生き方について辛いことも楽しいことも含めて、心を込めて書かせてもらいました。

レジばかりする店長は頑張っている店長だとアルバイトに勘違いされる

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あの店長、全然動きませんね

食品スーパーのおやじです。この仕事をしていてつくづく思うことは、アルバイトさん、パートさんが見ている景色と社員が見ている景色に若干のちがいがあることです。

違いがあって当たり前。その中でどう自分は動いてお互いに理解を深め合うことが出来るのか?

そこを考えなければ風通しの良い職場とは言えないでしょうね。今回お話することは、どこの会社にも似たような上司がいるのではないでしょうか?

部下が中心となりやる仕事を自分のメインの仕事にしてしまう上司です。うちで言えばレジばかりをする店長です。

やっかいなことにこのレジ打ち要員店長はアルバイト・パートさんに人気が出ることがあります。

逆にレジをしない店長を「全く動かない店長ですね」と言われることもあります。見えている景色の違いです。

直接目に見える業務であるレジ打ちをする方が良く動く上司だと思われるのです。しかし、見る人は見ているのです。その店にじわりじわりと迫る危機を。

「今の店長はどうですか?」

本部の上司から、「今の店長はどうですか?」と聞かれることが多くあります、実を言うとこの質問は上司に多少不満があってもなかなか答えにくいものです。

よほどのことでないかぎり、「問題ございません」と答えるようにしています。 なぜなら店長が交代するとどうしても前任の店長と今の店長を見比べて多少の不満は出るからです。

つまり多少の不満というものは店長の個性の違いだけで、私たち部下やアルバイト、パートが店長の個性に合わせられていないだけであることがあるのです。

店長の個性の違いは得意な仕事の違い

店長は店の責任者であり、従業員に指示を出す立場です。指示を出される立場でないから自分の仕事は自分で決められます。

なので店長が得意な仕事ばかりするのは当然のことであり、それが店長の個性になっているのですが、それに合わせることが出来なかった時に従業員から不満が出るのです。

店長が交代して、ある店がガタガタになった理由

上司が、ある店を見に行った時、その店の状況に愕然としたそうです。売り場作りがなっていませんでした。

お客様が買い回りしやすいように、季節感を考えた上での売り場が出来ていなかったのです。

原因を店長に聞くと、「〇〇君に任せてたから」という言い訳をしたようです。その後、上司はさっそく〇〇君に聞くと、違う答えが返ってきたそうです。

今の店長はレジや、荷捌きばかりで、何も言ってこないんです」と。

これに上司は店長に注意しました。

上司「何で、レジばかりしているの?」

店長「誰も入りたがらないから・・・」

上司「それはあなたが指示しないからでしょ?」

腑に落ちないような表情をした店長に上司はこのように言いました。

「どうしてレジを他の子に任せて売り場で指示を出さないの?」

「売り場を見たくないの?」

「もしかしてレジに入って現実逃避しているの?」

店長はひたすら謝るしかなかったそうです。 この話を聞いた私は、「なるほどーそう言えば私も昔、現実逃避して怒られたことがあったなー」と昔を思い出しました。

居酒屋での修業時代

たったの半年で店を持たせてもらえるという小さな居酒屋のフランチャイズに入った時のことです。

修業先の店長(私にとっては師匠)はとても厳しくて怖い人でした。 とても忙しい店で、洗い物がどんどんたまっていきました。

必死で皿洗いをしました。最初はそれで良かったのですが、修業期間は半年です。 いろいろと学ばなければいけないことが多かったです。

それでも皿洗いをしていたのは、皿洗いは大事な仕事だという意識が私にあったからです。 綺麗な皿がなければ料理が提供出来ません。 だから必死で頑張ったのです。

しかし、その様子を見た師匠がある日近づき、「もっと前に出ろよ」と言ってきたのです。 元気よく「ハイ」と返事をしました。

尊敬できる師匠の言葉には「ハイ」か「すみません」しか返す言葉はありませんでした。 しかし、「ハイ」と返事をしたのに、なかなか前に出れませんでした。

調理場は戦場のように、みんなピリピリしていて、なんか遠慮をしてしまうのです。 「私が前に出ていいのかな?」という遠慮する気持ちになっていました。 そして、師匠に大きく叱られました。

「店長が皿洗いばかりしてたら店がつぶれるんだよ」

「お前は何しに来てるんだ?店長になるために修業しに来ているんだろ?お前がアルバイトだったら、怒らないけれど、お前は半年たったら店長なんだよ」

「店長が皿洗いばかりしてたら店がつぶれるんだよ。皿洗いは他のバイトに任せてもっと前に出ろ、何を怖がっているんだ」

この店長の言葉に、他のバイト君だちが「皿洗いは僕たちがします」と言ってくれて、私は調理のほうをすることになりました。

今思い起こすと、私は現実逃避をしていました。

毎日毎日ボロクソに怒られて、前にでるのが怖かったのです。皿洗いは単純でモクモクと出来ます。 それなのに皿洗いはとても重要な仕事です。

これをしていたらとりあえずは頑張ってることになると思ったのです。しかも無心になれるのです。私は、わずか半年しかない修業の目的を忘れ現実逃避をしていたのでした。

上司は全体を見渡すことが大事

今回の、レジばかりをしてた店長は私が皿洗いばかりしていたことに似ていると思います。

レジはとっても大事な仕事です。逆に忙しい時にパートさんに任せっきりで混んでいてもレジに入らないとこれはこれでみんなの不満が爆発します。

実は皿洗いもレジ業務も、たいていの場合、パートさんやアルバイトさんが中心になってやっていることで、そこにまったく手を出さない上司もいるのです。

そんな上司に対して、パートさんたちが「あの店長は全然レジに入ってくれないね」と不満をいうことがあります。

そこで、レジに良く入る店長が異動してくると、「あっ、今回の店長は率先してレジに入ってくれている」と人気が出ることがあります。

ここに大きな問題が隠れているのです。店長がレジ打ちも率先してやっている。なかなか良い店長だとみんなから喜ばれる。

実はこの辺のさじ加減と言うのは難しいです。店長だからと言って、下の者の仕事はしないとふんぞり返るのではなく、いざと言う時はアルバイト・パートの仕事もサポートするぐらいでなければ風通しの良い職場は作れないものです。

店長だからアルバイトだからと関係なく忙しい山場では手助けをする姿勢を悪く思う人はいないでしょう。

店長だけど、下の者の仕事もきちんと手伝ってくれていると人気が取れるでしょう。ここを勘違いして、これは良い行動なのだと思ってしまうことに問題があります。

なぜなら、店長には店長にしかできない仕事があるんです。それはアルバイト・パートさんには直接見えないこともあります。

なので、下手をすると、直接見えずらい店長業務よりもレジという誰がどう見ても頑張っている業務の方が頑張っている店長に見えるのでしょう。

忙しい時だけは、さっとサポートし、そして本来やるべき指揮官としての業務に集中する。

ここを理解しているのは、店長のすぐ下の部下の社員です。アルバイト・パートさんには見えずらい店長の現実逃避の姿勢を敏感に感じ取れます。

なので、本部の上司に指摘が出来たのです。アルバイトさん。パートさんの仕事をサポートする。それで「がんばっている店長」と思われるでしょうが、すぐ下の部下は気づいています。

簡単な仕事ばかりで、指揮官としての仕事を何もしてくれない人だとね。