「早くお客様が納得出来る回答を出したい」と安易な対応をして後悔した私が学んだこと
「こんなものを堂々と売っていていいのか?」
食品スーパーに勤めています。以前にお客様から「こんなものを堂々と売っていていいのか?」とクレームの電話がありました。
お客様が、安いと思って1ケース(6本入り)購入したパックの日本酒の製造月日が半年以上前だったからです。
ちなみにほとんどの日本酒には賞味期限は記載されていません。代わりに記載されているのは製造月日です。
なぜなら、日本酒は保管状況によっておいしく飲める期間が大きく変わるからです。
そして、当店では製造月日から1年間を目安に売り切るように割り引いています。(ちなみに加熱処理をしていない生酒は半年を目安にしています)。
そのような事情をよく知っているお客様からのクレームでした。「どうなっているんだ?説明しろ?」と言われ、私は「確認して折り返しご連絡を差し上げます」と伝えました。
実はそのパックの日本酒は入荷したばかりの商品でした。それなのに製造月日が半年前というのはおかしいということで本部の仕入れ担当に問い合わせましたが・・・・
「調べて後で折り返します」と言われ、私たちは回答を待つことにしました。しかし、10分後にまた、お客様から電話があり・・・
「半額にしてくれたらそれでいいよ」と言われました。
これは私個人では判断できない問題なので、店長に相談すると、あっさり「そうしましょ」ということになり、半額分の返金を次回来店時にするということでお客様は納得されました。
しかし、この対応が問題になりました。その後、本部の仕入れ担当から電話が入り、そのパックの日本酒は製造月日が半年前だから安く仕入れて通常よりも安い値段にしているものと言うことが分かりました。
そして、私たちがそこから半額にしたことを知った上司からお叱りを受けました。
「どうして勝手な判断をくだすんだ?」と。
通常よりもかなり安い価格に設定されているのに、それ以上に割り引く必要はありませんでした。しかし、店長はできるだけ早くお客様に納得のいく回答をしたいという気持ちから安易な判断をしてしまいました。
入荷したばかりの日本酒が半年前の製造月日であったことだけに気を取られ、仕入れに問題があるのだろうと思い込んでしまったのです。
お客様と接する仕事をしていると、様々なクレームがあり、その解決を急ぐあまり間違った判断を下すことがあります。
この時の店長の失敗を目の前にしてた私ですが、私もクレームに対して安易な解決をして後悔したことがあります。それは・・・
夕方のピークが過ぎ、店内が落ち着いた頃
男性客からクレームがありました。
「お前のところで売ってる茄子はこんなにふにゃふにゃなんか?」と。
奥さんから聞いた話によるクレームです。
「嫁さんの話によると、昼に子供と買い物に来ていて、うちの子供が間違って茄子を落としたからと言うことで、お前のところの野菜のおばはんが「買え」と言うから買ったらしいけど」
「こんなにボコボコになっとるやないか?」
お客様が持ってきた茄子を見ると、ありえないほどふにゃふにゃになっていました。
「ちょっと落としただけでこんなにふにゃふにゃのボコボコになるんか?」とお客様。
確かにそうだなと思った私。
「その時に対応した従業員に確認してから対応をします」と伝えると
「確認もくそもあるか」
「常識で考えろ」
「子供が落としただけでこんなにふにゃふにゃになるんか?」
「普通に考えたら分かることだろ」
「ええ加減なことを言ったら承知せんぞ、こら!」
と、お客様の迫力に押される私、
確かに落としただけでこんなにふにゃふにゃになるのはおかしいよな
最初から痛んでいた可能性が高いよな
お客様が怒るのの無理ないよな
と思った私は「お客様がおっしゃるように最初から痛んでいたと思いますのでご返金させていただきます」と言い返金しました。
お客様が納得して帰られた後、最初に対応していた従業員の手が空き、事情を聴きました。
すると事実は違いました。
「それは違うよ。子供が茄子をモミモミしていたから、注意したら驚いて、床に落としたのよ」
「どうせその男の人は奥さんから聞いて、子供に問いただしたんでしょうね」
「でも、子供が正直にモミモミしていたとは言わないでしょうね。お父さんに怒られるのが嫌だから」
どうやら返金する必要のないことだった。確認してのちほど、お伺いします」という対応をするべきでした。そのことを店長に報告すると。。。
「仕方がないですね。本来は確認してからお伺いするのが筋だけど、ややこしそうな
人だから、長引かせるとやっかいそうですし、まぁ、分かりました」
と店長は私の気持ちを理解して、フォローしてくれました。
お客様に「常識で考えろ」と言われ、確かにそうだなと思い、迫力に屈してしまいました。
安易な対応をした私には大きな後悔が生まれた。
今思い出すと、とても大きな後悔があります。今さらお客様に「あの時の茄子がボコボコのふにゃふにゃになったのはお子さんがモミモミしていたからですよ」とは言えません。
お客様は、子供が落としただけで茄子を買わされたと思い込んでいます。それにつられるように私もそうだと思い込みました。
しかし、子供の立場で考えると、家に帰ってきた怖いお父さんに、「スーパーで茄子をモミモミして遊んでいた」とは言いにくかったと思います。
そこで、私がきちんと事実を確認して伝えることが出来たなら、子供に対しても、やっていいことと悪いことの区別をつけてもらう意味で良かっただろうと後悔しています。
後悔から学んだもの
クレームの場では思い込みでの判断は禁物です。「これって言いがかりかな?」と思ってもその気持ちを表に出し、疑いの目を向けるとお客様はそれを敏感に察知して・・・
「何を疑っているんだ?」と従業員の態度に対するクレームに発展することがあります。
なので、クレームが大きくなることを恐れ、頭からお客様を信用してしまうことがあります。実際に目の前に問題のある商品を見せられると、解決を急ぎたくなる気持ちが生まれます。
「早くお客様が納得出来る回答を出したい」
と安易な対応をすることによって、大きな後悔が生まれることがあります。人と接する仕事で、このようなことは多いと思います。
確認をするということは、お客様を疑うことではありません。きちんとした返事をするためですね。