ありがとう熊さん

食品スーパーのおやじが、生き方について辛いことも楽しいことも含めて、心を込めて書かせてもらいました。

難しい判断はお客様に選んでもらうべきだという姿勢がクレームを未然に防ぐというお話

選ぶのはお客様であり、従業員ではない。

お客様にとって何がベストな選択なのか?そう思い行動に移す。しかし、その判断が間違った悲劇を生むことがあります。

つまり、お客様にとって満足のいく選択ではなくて、不満足な選択を従業員がしてしまうことです。

営業・販売・サービス業とすべてのお客様に接する仕事において、とても大事なことを今から書きたいと思います。

順番をぬかされたお客様の大きな怒り

「オイ、順番が違うんじゃねぇか?」と

お客様の怒鳴り声が店内に響きました。ご年配の男性のお客様です。レジ担当の女性のパートさんに突っかかるように怒鳴るおじさんでした。

「お前じゃ話にならん、店長を出せ」

その日、店長はお休みでした。代わりに対応したのが私。どういうことかお客様に話を聞きました。

理由はお客様の方が先にレジに並んでいたのに、違うお客様に順番を抜かされたということでした。レジでのクレームでたまにあることですが、この順番を抜かされたというケースはいろいろなパターンがあります。

お客様の勘違いもあるし、従業員の誘導ミスもあります。で、今回のパターンは従業員の誘導ミスでした。

事のいきさつはこういうことです。

まずレジが大きく混みあいました。

そして空いているレジを開けることになりました。

その開けるレジを担当するパートさんは、目の前のレジの2番目に待っているお客様を誘導するのではなく、3番目に待っているお客様を誘導しました。

なぜこのようなことをしたのでしょうか?パートさんの話によると、その2番目のお客様のお会計はすぐに始まると思ったそうです。

なぜなら1番目に並んでいるお客様の会計は終わりかけていたからです。しかし、これはパートさんの勝手な思い込みによるものでした。

しかし、実際は1番目のお客様は、723円のお会計に千円札を出していたのですが、やっぱり細かいものも出すということになり、そうこうしているうちに時間がかかってしまったのです。

そして、パートさんが誘導した3番目のお客様はジュースを3本だけのお会計だったため、すぐにお会計が終わってしまいました。しかし、横のレジのお客様は細かいお金も出すことに手間取っていました。

そうこうしているうちに別のお客様が問題のパートさんのレジに並び、その人の方が先にレジが終わるという形になってしまいました。

結局、問題のお客様は2番目に並んでいたにも関わらず、後から来たお客様2組に先を越された形になりました。

そして、順番を抜かされたことに腹を立てたお客様は、「こるぁ、お前、頭がおかしいのか?」とパートさんにクレームを入れてきました。

「あんな奴にレジをさせるな」のお客様

そして、私が対応して、「大変申し訳ございません」と謝りましたが・・・

「あんな奴にレジをさせるな」

「今度、あのおばはんがレジしていたら本社に言うからな」

など、到底受け入れられないことを言ってきました。限られた人員で運営している店でパートさんをレジから外すのはとても難しい問題です。

なので、とにかく「今後は気を付けます」「申し訳ございません」の平謝りで、なんとか、お客様もしぶしぶ、納得されたのかどうか分からない表情で帰っていきました。

良かれと思っての行動である

パートさんはとても、大きく反省をしていました。「完全に私の勝手な判断ミスです」と言ってきました。

これらの状況を休みの店長に報告しました。すると店長は・・・

「こんなこと言ったらなんだけど、運が悪かったかもしれないね」

「それほど悪いことをしているわけではないのに」

とパートさんを気の毒に思うようなことを言ってきました。

なぜ、店長は、このようなことを言ったのか?それは、パートさんの行動は良かれと思っての行動だったからです。

パートさんを、あまり責められない

2番目に並んでいたその問題のお客様のお会計はすぐに始まるだろう。そこでわざわざ別のレジに誘導し、来てもらうと逆に3番目のお客様のお会計が先になってしまうのではないかと思ったのです。

と言うことは、もし、今回のケースが2番目のお客様を誘導していて、3番目のお客差の方が先にお会計が始まったとしたら、また違ったクレームになるのではないか?と言うことです。

なので、店長は「難しい問題ですね」と言いました。こういった問題には、パートさんを、あまり責められないということです。

さらに、パートさんは、お客様に怒られているときも、一切反論せずに「申し訳ございません」の姿勢を貫いていました。

ここも大事です。下手に「順番がすぐに来ると思ったからです」などと説明したらより一層お客様を怒らせることにつながります。

私の見解は若干、店長と違いました。

だから、今回に関して、店長は電話口で、「いや~~こういった、こっちが先、あっちが後のクレームがあるたびに思うけど、難しいですよね」と言ってきました。

私も同感です。しかし、私の見解は若干違いました。店長は当時あまりレジに入らなかったので、そういうケースについては若干私の方が経験値があったのかもしれません。

なので店長に・・・

「確かに難しい問題ですね。僕だったらどうするか考えたんですけど、2番目のお客様を誘導すると思います」

「でも、誘導する前に、『横のレジを開けますけど、どうしましょ?』とお伺いを立てます」

「すると、たいていのお客様は、『いや、もうすぐ会計が始まるからこのままのレジでいいよ』と言ってくれるか、それとも、『じゃあ、そっちに回ります』と言ってくれるかになると思います」

と答えました。つまり、どっちに行った方が早く自分の番がくるかという難しい判断はお客様に委ねるということです。

急がねばと焦る気持ちから判断ミスをする。

このことはパートさんにもアドバイスしました。しかし、「それほどパートさんの行動を責められない」という店長の考えには私も同感でした。

レジが大きく混みあい、待っているお客様もイライラしているし、従業員も忙しくてソワソワしている中で、どうしても、急いで次の方を誘導しなきゃと思ってしまいます。

そんな時に瞬時に、順番を考え、スムーズに別のレジにお回りいただくにはどうしたらいいのか?と判断する中で起きた判断ミスです。

悪気はなかったことです。さらに、パートさんはお客様に、こっぴどく怒られて大きく反省していました。

焦っていても大事なことを見失ってはいけない。

パートさんの行動は、どうすれば一番、お客様の順番通りに事が進むか?を考えた上での行動でした。

そう思うと、パートさんをあまり責められないと言う気持ちが生まれましたが、パートさんは大事なことを見落としていました。

レジが混んでいる。早くしなきゃの焦りから並んでいる人の気持ちを見失っていました。確かに、誘導したら逆に遅くなる可能性もある状況ではあるものの、それは絶対ではありません。

勝手に判断すると痛い目に遭います。難しい判断は自分ではなくお客様に決めてもらうほうが後でやっかいな問題にならずに済みます。

そして、そのお客様の判断で、たとえ後から来たお客様の方がお会計が早く済んだとしても、ここまで怒られることはなかったでしょう。まぁ、少しぐらいは嫌味を言われるかもしれませんが(汗)。

忙しい時には、どうしても焦ってしまうので難しい問題ですけどね。それでも、今回私が一番言いたかったことは、「難しい判断は出来るだけお客様にしてもらった方がいい」と言うことです。

これは、クレームを未然に防ぐ意味で、とても大事なことだと思うのです。