ありがとう熊さん

食品スーパーのおやじが、生き方について辛いことも楽しいことも含めて、心を込めて書かせてもらいました。

人はやらされて動く仕事を損な役回りだと感じる

食品スーパーの社員である私は、アルバイト、パートに指示を出す立場だ。ある日の事、パートさんのレジの金額が合わないことを指摘した。するとパートさんは「え?なんで?あんなに注意してレジをしたのにミスをするなんて、原因は分からない」と言ってきた。少額のレジ違算は原因が特定しにくいものだ。しかしこのパートさんは最近レジ違算が多くなってきていた、それは本人も気にしているようだった。だから「私をレジから外すことは出来ないんですか?」と言ってきた。「どうしてですか?」と聞くと、「レジに入るとミスをしてしまうから」と返ってきた。
アルバイト、パートの仕事はレジ以外にも品出し(商品を売り場に出す仕事)がある。
パートさんはレジでなく品出しの仕事に変えてほしいと言っている。しかし、限られた人員で、みんなの、あれがしたい、これがしたいと言う要望を全て聞き入れる訳にはいかなかった。パートさんもそこは分かっているようで「レジが嫌なんじゃなく、レジばかりさせられているのが嫌なんです」と言ってきた。
同じことばかりさせられると、都合のいいように使われているのかも?自分は活かされていないんじゃないか?と不満に思う心理が働くのだろう。気持ちは分かる。
なぜなら私も工事現場で職人をしていた時、ずっと同じことばかりさせられて腕が上達しなかったのに対して、周りはどんどん違う役割を与えられて腕がどんどん上達しているのを見て、自分が活かされていないと感じて辞めたことがあるからだ。
だからパートさんには「検討します」と言うことで話は終わった。その後、このことについて考えた。アルバイト、パートの愚痴で「レジばかりさせられている」と言うのは良く聞くのだが「品出しばかりさせられている」と言うのはめったに聞かなかった。これはどういうことか?なんとなく品出しよりもレジの方が損な役回りだと思われているようだ。 
原因は、レジはその場所から動くことは出来ない。次から次に来られるお客さんの商品をレジに通し、お金を受け取る。その繰り返しだ。それに対して品出しはまだ自由に動くことが出来る。自分で考えて動くことが出来る。自分の都合で一息つくことも出来る。そう考えると、どちらかと言えば品出しよりもレジの方がやらされて動いていると感じる心理が働くからだろう。
人はやらされて動く仕事よりも自分が考えて動く仕事の方にやりがいを感じるものだ。
なぜそう思うのか?それは私もそういうタイプだからだ。7回以上転職を繰り返してきたが、その転職の大きな理由は自分が損な役回りをさせられていると感じたからだった。
仕事をする大きな意味は生きるため。しかしそれ以外に自分を成長させるためという考えがある。同じことばかりを指示されて自分の成長を感じる事が出来ないストレス。それを散々味わってきた。しかし、いざ他人からそういった不満をぶつけられた時に「みんなの要望を聞くわけにはいかない」と突き放したくなる。
みんなの要望は聞けないのは事実としてあるが、損な役回りと従業員が感じることも事実としてあることを知らなければいけない。そこを上手くバランスを取らないと組織のモチベーションは保たれないと思った。