催眠商法の会社に入社したきっかけ
人気はてなブロガーのハルオさん
転職サイトに催眠商法に騙されて入社させられそうになった経験談を語ってくれました。
ハルオさんが騙されそうになったのは20代後半
当時私は転職歴も多く。
特別な資格や経験も無い。
学歴も地元の最底辺の高卒。
年齢も中途半端な20代後半。
どこのどんな会社からも「君はウチに必要無い」と言われてしまう。
僕が催眠商法に入社したときと同じような立場
違うのは、僕は高卒ではなく、専門学校卒で・・・あまり変わらないか(汗)。
元同僚から、正社員の仕事を紹介すると言われ、食いついたハルオサン。
毎月の給料30万!?
でも、話を聞くとお年寄りを集めて高いものを買わせる催眠商法の会社だった。
ハルオサンは飛び込み営業で好成績をたたき出したほど営業力がある
30万出すよ
魅力的な待遇をハルオサンは断ったそうです。
こういう商売には絶対に手を出さない方が良いという思いで。
では、僕の場合はどうだったか?
20代後半で何の取柄もないし、いろんな会社で仕事の出来ない奴と思われ、自分に出来るいい仕事はないかと悩んでいたところまではハルオさんに似ている。
健康食品の開発販売、飛び込みなし、ノルマなしで初任給23万円。
上記の求人を見てどう思うだろう?
僕は、飛び込みなしとノルマ無しの営業に魅力を感じた。
初任給23万円も高くはないけれど普通ぽくていい。
これから高齢者社会になって健康食品は需要があるだろう。
なんとなく、おいしい仕事のように思えた。
で、面接は、なぜかファミレスだった。
部長とコーヒーを飲みながら、面接と言うよりも、どうでもいいような雑談。
「そろそろ営業所に行こうか?」
とついていった先はコンビニの跡地だった。
健康食品、自然食品ののぼりがずらりと店頭に並び、店内の窓ガラスの中からチラシが貼られて中の様子は見れない。
部長と一緒に入ると面食らった。
パイプイスがずらりと並び、お年寄りが弁当を食べている。
どうやらお昼休みのようだ。
その後ろを部長と通ると、お年寄りが
「ねえ、あの人、新人さんかな?」というひそひそ話をしていた。
僕は「どうも、どうも」とペコペコ頭を下げて通り過ぎた。
店内奥の裏場に到着すると、そこには若い社員が4人いた。
「本日からお世話になります熊と申します。よろしくお願いします」
4人の若い従業員はとても礼儀正しく、明るい笑顔で僕を迎えてくれた。
新人である僕は裏場に待機させられた。
店内にパイプイスがずらりと並び、そこにお年寄りが集まってくる。
そして、何やら講演が始まった。
裏場で待機する僕に、お年寄りの笑い声がやたらに聞こえてきて、なんだこの異様な熱気に包まれた講演会は?と思った。
その日は、たまたま売り出し日で僕にはある時間が来ると、裏場にずらりと並んだ、紙袋に入った商品を若い社員に渡す仕事が与えられないていた。
僕と一緒に裏場にいてた部長が、「おい、そろそろだぞ、忙しくなるぞ」と言った。
中では講師と呼ばれる話をする人がどんどんテンションが高い声になっていった。
「今回は特別です」
「数は限定です」
講師とともにその他の若い社員たちも「凄いよ」「特別だよ」と一緒に叫んでいる。
何やら値段を発表しだした。
「50万円も切って~」
「うわ~~」パチパチパチ(拍手)
「まだまだ喜ぶのは早い~」
45万円も切って~43万円も切って~42万もきって~
40万円~~~~~
割れんばかりの拍手と歓声に包まれた様子がここまでビンビンに伝わった。
「いくぞ~熊君」
部長がそういった瞬間
激しい音楽が会場内で鳴らされ
「こちらもご注文で~~す」と店内で叫ぶ若い社員たちが
ダダダダ~~~と裏場にやってくる
その都度、僕は彼らに商品が入った紙袋を渡していった。
「またまたご注文~、いや~~すごいよ。みんなご注文ですよ~」
と従業員全員で大絶叫。
僕はひたすら彼らに紙袋を渡すだけ。
彼らの勢いにとにかく圧倒されながら、紙袋を渡していった。
そんな営業が終わり、お年寄りが帰った後
会場の片付けと明日の準備は僕も一緒にやった。
そんな中、初老の男性が近づいてきた。
中で講演をしていた男性で、この会社の社長だった。
「裏場で様子を聞いてどうだった?」
「すごい熱気ですね。それにしてもあれだけの量の紙袋に入った商品が一気に売れてしまうのは見事ですね」
はははは・・・と社長は笑って
「あれは1箱4万円の健康食費品が10箱入っているんだよ」
「すごいですね」
「しかもね、2日前には1箱の4万円しか申し込んでいなかった人たちが、今日の講演で10箱の40万円の注文をしたんだよ」
「えっ、どういうことですか?」
「不思議だろ?はははは」
社長は嬉しそうに笑った。
それから数日は裏場で待機が続いた。
お年寄りを集めて高額な健康食品を売るという仕事内容に理解を示した奴だけ正式に採用される。
「どう、この会社で頑張ってみるか?」
「ハイ、頑張ります」
元気に答えた。
ハルオさんと僕の違うところ
僕は、「この仕事はおいしい」と思った。
訪問販売のように一軒一軒家を訪問しなくても、お年寄りがいっぱい集まってくる。
一網打尽。
40万円の健康食品が30袋以上は売れていただろうか?
1200万円・・・実際はその次の日も買ってない人を追い込んでいたから、もっと数字は伸ばしている。
卵やパンなどの無料試供品で客寄せをしている経費はかかっているものの、その赤字は一気に解消され大きな利益を出している。
なんという、儲かる商売だ。
ひとりひとりの対面販売でちまちま売るのと訳が違う。
100人集めて、一気にセールスをかける。
身震いした。
僕はついている。
商品説明は講師がすべてしてくれる。
僕たちは、お年寄りと雑談をして、お年寄りに「ここに来たら若い社員たちが相手にしてくれる」と思わせることだけ。
お年寄りは寂しいから通い、そのお礼に買ってくれる。
商品もいいものを紹介している。
怪しいけれど、悪いことをしているという意識はなかった。
1万円で仕入れた健康食品を30万で売ろうが50万円で売ろうが違法ではない。
闇のビジネス
罪悪感はなかったの?抵抗はなかったの?
全くないということはないけれど、ほとんどなかった。
罪悪感よりも、儲かる裏仕事にありつけた喜びで胸がいっぱいだった。
今、僕は最低なことを書いている。
ハルオサンの正義は、入社することを拒否したが
僕の正義は、「そうはいっても金が欲しいだろ?」の誘惑に負けてしまった。
事実、あの会社ではめちゃくちゃ稼いだ。
普通の営業よりもずっと楽に稼ぐことが出来る。
だって、会場の独特の雰囲気に酔わされた客が相手だから。
でもね、世間に胸をはって言える仕事ではない。
それは、辞めた僕だから言えること。
やっている時は「こんなにすばらしい仕事はない。僕たちはお年寄りに喜んでもらうために営業をしている」と思い込まされていた。
というよりも自分で自ら信じていた。
「いいことをしている」と。
簡単に儲かるかもしれないけれど、本当にそれでいいのか?
結婚して子供が出来て
「お父さんは何の仕事をしているの?」と子供に聞かれ
まともに答えられなくていいのか?
お年寄りの大切な老後の備えをむしり取る。
しかも合法的に感謝をされながら。
僕がさまざまなメディアの取材を受けているのは、催眠商法の危険性を訴えるため。
安易に儲かるからとその仕事に入る若者に注意を促したい気持ちもある。
この前の朝日新聞やニュース番組での僕のインタビューも、そういう意味があって受けている。
騙されるお年寄りを少なくしたいという気持ちとともに、やってみたいという若者に注意を促したい気持ち。
この仕事は、合法的ではあるものの、世間から嫌悪感をもたれ、胸をはって言えない仕事なのです。
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