ありがとう熊さん

食品スーパーのおやじが、生き方について辛いことも楽しいことも含めて、心を込めて書かせてもらいました。

上司のやる気のない言葉に同調すると後に上司の責任感が芽生えた時に叩かれる

とても愚痴の多い上司の下で働いたことがある。
「今日はのんびりしたいのに何でこんなに忙しいんだよ」
「俺は仕事で忙しくしてるのに客が楽しそうにしてるのを見ると腹が立つよな」
「俺はやるべき仕事が多いのに、ここに来る客は暇な奴ばかりなのかな?」
このように忙しいことに対する不満を口にするのだ。お客様がいっぱい来られるとその分業績は上がるはずなのだが、あまりにも忙しいことでお客様が敵に見えるだ。自分は仕事でストレスを抱え込んでいるのに対してお客様が楽しそうにしているのを見ると嫉妬するのだ。
過去に、あまりの忙しいさでポロリと本音をつぶやく上司は何人か見てきたが、このようにあからさまで乱暴な言葉を口に出す上司は初めてだった。しかも彼は、「なあ、そうだろ?」「お前もそう思うだろ?」「たまにはのんびりしたいよな?」と私に同調を求めるのだ。
私は、自分たちが生活できるお金は誰から出ているのかを考えると同調は出来ないと思った。お客様に来て頂くことで忙しくなり業績が上がるのだ。「忙しいのは客のせい」ではなく「忙しいのはお客様のおかげ」なのだ。しかし一応の社交辞令として「それは違うでしょ?」とは言わなかった。「まぁ仕方がないですね」と否定も肯定もしないような中途半端な愛想笑い的な返事をした。上司に嫌われても良い事はないと思ったからだ。
しかし、もう一人の後輩社員は違った。彼は普段から上司のやる気のない言葉に同調をしていたのだ。私は、「危ないな」と思いつつも余計なお世話だと思い黙って見て見ぬふりをした。
上司のやる気のない言葉というものは全体の士気を下げるものだ。私の予想通り、業績がどんどん下がってきた。そして、あまりにも大きく下がってきたことで上司はその上の上司に叱られた。これ以上業績が下がったら降格という状況に上司は追い込まれた。
すると上司は、今まで口に出していたやる気のない言葉を口に出さなくなってきた。降格したくないという保身の気持ちから業績を上げなくてはいけないと言う上司の責任感が芽生えやる気を出してきたのだ。
そんな時に標的にされたのが今までやる気のない言葉に同調してきた後輩社員だった。上司と後輩社員は趣味が同じ海釣りということで意気投合していたが、今まで目立たなかった後輩社員の積極的に動かない姿を上司は指摘をしてきたのだ。「お前には必死さが見えない」と今までの自分のことを棚に上げ、かなり責めたてていた。やる気のない言葉に同調してきた付けが回ってきたのだ。急に手のひらを返したような上司の言葉に後輩社員は相当戸惑っていた。
彼らは私に大きな教訓を与えてくれた。上司も人間であるからやる気のないような言葉を部下に対して口に出すことがあるのだ。しかし、どんなにやる気のない上司でも責任感や保身の気持ちが残されていることがある。ポロリとでる上司の本音にうっかり同調してしまうと、いざ上司の責任感や保身の気持ちが芽生えた時に大きなしっぺ返しを食らうことがあるのだ。